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森友疑惑で当時の近畿財務局長を刑事告発 「値引き自体が問題」

告発への思いを語る(左から)佐々木さん、醍醐さん、根本さん。(撮影/片岡伸行)

そもそも値引きしたこと自体が問題だ──「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」有志は11月22日、学校法人森友学園(大阪市)に8億円超値引きして国有地を売却した当時の美並義人・財務省近畿財務局長を背任罪に当たるとして東京地検に刑事告発した。同日は会計検査院が「(値引きの)根拠が不十分」などとする報告書を国会に提出したが、告発内容はより根本的な問題を提起する形だ。

この国有地は、「教育勅語」を園児に暗唱させる幼稚園として安倍晋三首相の妻・昭恵氏が共感し名誉校長を務めていた小学校の建設用地とされた。告発状によると、美並近畿財務局長は2016年6月20日、「森友学園の経済的利益または自己の身分上の利益を図る目的のもと、時価評価額9億5600万円から、不要な地下埋設物撤去費用8億1900万円」を値引きし1億3400万円で大阪府豊中市内の国有地を売却する売買契約を締結。「国に金8億1900万円相当の損害を与えた」としている。また、2件の判例(神戸地裁1984年9月20日、東京地裁92年10月28日)を示し、「本件国有地の埋設物が土地の『瑕疵』に当たらないことが明瞭」とした。

告発後に会見した代理人の澤藤統一郎弁護士は「そもそもこの国有地には建設に支障をきたすような地下埋設物はなかった。かりにあったとしても、値引きするような瑕疵には当たらない。これが告発の要点」と説明。「市民の会」の醍醐聰・東京大学名誉教授は「会計検査院は本質からずれた検査をしている」と批判。元NHKディレクターの根本仁さんは「事実を平然と否定する安倍政治が未来の子どもたちに与える影響」を懸念し、児童文学作家の佐々木江利子さんは「安くしてもらった方(籠池夫妻)が捕まり、安くした方はいいの? それは私たちの財産。問わなくなったら許したことになる」と告発した思いを述べた。

(片岡伸行・編集部、12月1日号)

「残留孤児」が墓地求め記念碑建設で募金キャンペーン あの世での居場所が欲しい

駅頭から自治体キャラバンへ。11月23日、神戸市のJR元町駅前。(撮影/たどころあきはる)

「中国残留孤児」となっていた日本人らで組織する兵庫県中国帰国者の会(植田恒陽代表)は11月23日、兵庫県神戸市のJR元町駅前で、「あの世での居場所が欲しい」と、「共同墓地と記念碑」建設・活動支援への募金活動を行ない、キャンペーンを本格化した。

同駅頭では、植田代表をはじめ、帰国者や弁護士などの支援者らが、「仲間と一緒に入れる共同墓地をつくり、残留孤児の苦難の歴史を碑文(銘文)に刻んだ記念碑を」と訴え、物心両面での協力を呼びかけた。

「日本人として、日本の地で、人間らしく生きる権利」を掲げて、全国15地裁・約2200人の原告で闘われた国家賠償請求訴訟のうち、兵庫訴訟が神戸地裁で2006年12月に勝訴。これを契機に、帰国「日本人孤児」への新支援策が2007年から実施された。

だが、その適用は帰国1世のみで、呼び寄せ家族(私費帰国者)らは対象外とされ、高齢化が進む中で、介護、医療・福祉をはじめ、種々の問題点が表面化してきた。

「あの世での居場所」もその一つ。

日本政府は、日中国交正常化後も、早期帰国政策をとらず、身元保証人を義務づけるなど、事実上、帰国を妨害したため、残留孤児たちは、高年齢での帰国を余儀なくされた。加えて、帰国後の日本語習得支援もきわめて不十分だったため、まともな就労ができず、低所得者が圧倒的で、生活保護世帯も珍しくなかった。帰国2世らも含めて、ほぼ同様の状況で、そのため自力での墓地建設が困難な状況が続いている。

事態の改善を求め、今夏までに用地は神戸市からの無償貸与で、垂水区の舞子墓園の一角に確保できたものの、建設・運営資金のめどは立っておらず、今後は街頭のほか、各自治体などへの要請キャラバンにも取り組む考えだ。「歴史」を語り継ぐためにも。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、12月1日号)

立憲民主党の“実験”は続く(西谷玲)

2017年10月8日、東京・新橋駅前で話す枝野幸男氏。あのときの熱気は続いている。(撮影/伊田浩之)

特別国会が始まり、予算委員会も行なわれている(編注:特別国会は12月9日に閉会)。会期は短く、野党の質問時間が短縮されるという言語道断の動きもあるが、一応の論戦もある。野党では、希望の党の代表が玉木雄一郎氏となった。嵐のような野党再編が行なわれて、まだまだ続編はあるようではあるが、一応の陣容がそろった。

なかでも注目されるのが立憲民主党である。枝野幸男氏のもと、旧民進党の「リベラル」系、よりはっきり言えば左派系が集まった。彼らのことを、「信念で集まったのではない。希望の党に受け入れられなかったからやむなく集まったのだ」と評する人たちがいる。確かにそうである。それに、「え、この人が立民?」というような、主義主張が枝野氏や辻元清美氏とは違うのではないか? という人々もどさくさに紛れて、だかなんだかメンバーにいる。だが、それだけではない一面も持つ。

立民躍進の原点を、2015年の安保法案の審議の際に、国会を取り巻いたSEALDsおよびデモをした人々との指摘は多い。

しかし、立民が今回の総選挙で予想を超えて勝ったのは、あのとき国会を取り巻いた人々だけではない支持の広がりを得たからである。安保法案は何かおかしいよね、あるいはそういう問題意識は持たなくても、今の安倍(晋三)さんのやり方はおかしいよね、という人たちが立民に入れた。立民の街頭演説も見に行ったが、そこにはふくらんだ共感が感じられた。

枝野氏は総選挙の街頭演説で、そして今回の国会の代表演説でも「私には、あなたの力が必要です」と語りかけた。政治はプロフェッショナルな政治家だけに任せておくものではない、国民の皆さんと共につくりあげていくものだと。だから、選挙中、そして選挙の後も立民を取り巻く動きには、今までの政党にはないものが見られた。街頭演説にも学生など素人がたくさん詰めかけていた。業界団体などではない、普通の人代表、のような人たちである。

これをたかが素人、と切り捨てるのは簡単である。だが、プロに任せていたから、政治はこんなていたらくとなった。立民の演説を見聞した人たちはみな、政治へのハードルが下がり、自分たちでも参加できるのだ、という未来への希望と可能性を感じて投票したのではないか。

「素人と政治の出会い」は、選挙後も続いている。立民の事務局には、「政治家と対話がしたい」「人を集めるから政治家を呼んでほしい」というような電話が引きもきらないという。こんなことは民主党、民進党時代を通じてもほとんどなかったことである。

「枝野立て!」という言葉を受けて党は立ち上がったものの、どういうふうに有権者を巻き込んでいくか、共に政治を行なっていくかは、暗中模索、試行錯誤のなか、選挙戦の実践を通じて方向性を見いだしていったのだ。

「素人の反乱」はグローバルな現象である。トランプしかり、欧州での極右の躍進しかり。ただ彼らと立民が違うところは、排他的ではない点だ。そこはポピュリズムといっしょくたにしないほうがいい。

立民は「政治の実験」の最中なのだ。これが成功するかしないか、日本政治の大きな試金石である。

(にしたに れい・ジャーナリスト、12月1日号)

“農業の一等地”をつぶす石垣島への自衛隊配備 防衛省計画に住民らは猛抗議

石垣島への自衛隊配備候補地付近で10月30日に開かれた住民らの抗議集会。(撮影/本誌取材班)

防衛省が強行的に進めている南西諸島への陸上自衛隊配備計画。与那国島、奄美大島、宮古島とともに渦中の石垣島では10月30日、陸自駐屯地の候補地(平得大俣地区)に近接する4つの集落が現場付近の農地で抗議の声を上げた。

於茂登・嵩田・開南・川原の各集落で主に農業を営む住民ら約100人は、計画の白紙撤回を求めて同日に抗議集会を開催。これは、同月22日の衆院選・沖縄4区で自民党公認・公明党推薦の西銘恒三郎氏が当選したことに対して、中山義隆市長が「(陸自配備に賛成という)民意が出たと思う」などと発言したことを受けてのものだ。

対する無所属の仲里利信氏は選挙期間中、陸自配備反対を明確に訴えたが、西銘氏は〈今選挙では「自公政権を維持することが優先」として自衛隊問題を封印させ、地域事情を抜きにした運動を展開〉(地元紙『八重山毎日新聞』)した。同紙は、西銘氏の得票には〈陸自配備に否定的な公明支持者の票も含まれているとみられる〉などとも報じている。西銘氏の選対本部石垣市支部長を務めた中山市長も選挙期間中は陸自配備について沈黙を保っていた。

抗議集会で4集落は声明を発表し、衆院選で〈(西銘陣営は)「争点は経済対策だ」とも言っていた〉と指摘。〈中山市長は配備候補地で生活をする我々との話し合いの約束を反故にしました(中略)石垣島への自衛隊配備は『国の専権事項』などではありません。石垣のことは石垣市民に決める権利があります〉などとも訴えた。

平得大俣地区に近接する4集落は、いずれも戦前・戦後を通じて沖縄本島や台湾、四国などから移住した人びとが開拓した経緯がある。沖縄でのパイナップル生産の発祥地であり、現在ではマンゴーやゴーヤーなどの栽培も盛んな“農業の一等地”だ。

防衛省は2015年11月26日に石垣市へ配備計画を正式に打診。このとき同地区を候補地としたが、住民への事前説明などはなかった。各集落は当初から一貫して同地区への「配備反対」を求めており、石垣市や防衛省の対応に注目が高まっていた。

ところが今年5月17日防衛省が突然公開した駐屯地の「範囲・配置案」には、所有者の承諾なく無断で農地が施設内にくみ込まれていたり、弾薬庫4棟や覆道射場(射撃場)といった危険性の高い施設が描かれたりするなど、これまでの住民意思を踏まえない国側の強硬姿勢が露呈した。

【市が前例ない“介入”】

集会で嵩田地区の花谷史郎さん(農業)は、「4集落の願いは静かな環境で農業を営み、豊かな自然に囲まれて暮らしたいというもの。しかしそうした願いが、あやふやな“民意”によって奪われようとしている。私たちは声をあげなければならない」と強調した。

一方、計画撤回を求める市民運動に市側が前例のない“介入”をし、問題になっている。「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」が18歳以上の市民を対象に、7月から2カ月ほどで集めた約1万4000筆の署名を市側が「精査」すると言い出したのだ。本誌が取材した11月17日、同市の担当は「精査はおそらく初めて」としつつ、「市民連絡会から中止するよう申し入れが14日にあったので作業できない」と答えた。だが20日に一転。なんと選挙人名簿と署名の照合を開始したという。

呼応して市側の対応を報じたのは、『産経新聞』と提携する『八重山日報』だ。同紙は11月22日、署名には「最大6重ダブリ」があるとし、「私は配備推進派」という匿名の発言を紹介。「主旨を説明されずに署名させられた」などと報じたが、実数などは明らかにしておらず、中途半端な記述が目立った。

沖縄の基地問題に詳しい宮平真弥・流通経済大学法学部教授は、「自治体が選挙人名簿と署名を照合するなんて聞いたことがありません。断片的な情報をメディアに“広報”させるのも、市民運動の萎縮やイメージ・ダウンを狙っている疑いがある」と指摘している。

(本誌取材班、12月1日号)

衆院選公約の教育無償化方針で迷走の自民 振り付けは増税悲願の財務省

2020年度までに幼稚園・保育所を無償化する──。自民党が10月の衆院選で掲げた目玉公約は、大揺れの末、一部約束を違えた形で政府方針に「昇格」しそうだ。2兆円という選挙を睨んだ規模ありきの打ち上げ花火だったとあって、選挙後に内容を詰めていなかったツケが噴き出した。

「支援が真に必要な世帯に重点的に向けられる必要があるとの意見にも留意すべきだ」。22日、自民党の「人生100年時代戦略本部」がまとめた幼児教育・保育の無償化に関する提言には、幼稚園や保育所の費用補助に制限を設けるよう求める一文が入った。公定価格より高い施設などを想定しており、「3~5歳児のすべての子で無償化する」としていた公約の完全実施は見送られた。

衆院選直前、安倍晋三首相は与党に諮らず、幼児教育・保育の無償化を柱とする2兆円規模の政策パッケージを打ち出した。19年10月に予定する、消費税率10%への引き上げで得る財源の使途を見直し、約1・7兆円をつぎ込むと表明した。そして衆院選に大勝し、残り3000億円は企業の拠出とすることで経済界と話をつけた。

それでも、選挙は野党の敵失に救われたのが実情だ。首相への強い支持ではない。首相と与党との力関係は変わり、自民党側の巻き返しが始まった。2兆円の政策パッケージが個別の政策に要するカネを積み上げたものではなく、規模先行で内容はあやふやだったことが、その後の迷走を招いた。

【社会保障の関心薄い首相】

まずやり玉に挙がったのは、認可外施設の扱いだった。官邸から内容を丸投げされた財務、厚生労働両省は認可外施設を補助の対象外とすべく動き出していた。

「認可外施設を政府が勧めているように誤解される」との懸念からだ。しかし、子育て世代を中心に「認可施設に入れず、やむなく認可外を選んでいるのに補助がないのはおかしい」との批判がわき起こるや、自民党は「認可、認可外を区別しないことが大切」(木原誠二政調副会長)と、すぐさま認可外施設を補助の対象に加えた。

「能力のある人には、負担を求めてきたのが自民党」「党内の反対意見を無視した公約化だ」

8日の自民党戦略本部の会合では、一律無償化への反発が相次いだ。低所得者に無償化をしている自治体は多く、国が一律無償にすれば高所得層のみ優遇することになる、との理由からだ。これを受け、同党はいったん、補助に所得制限をかける考えを示していた。

ところが、「それでは一律無償化の公約とかけ離れる」との懸念から、今度は揺り戻しが起きた。揺れに揺れた揚げ句、落着したのが、公定価格の認可施設は無償にし、認可外も補助の対象としつつ上限を設ける折衷案だった。議論の最中、小泉進次郎・筆頭副幹事長は「どうやったら公約通りと理解していただく形ができるのか、だ」と苦心のほどを口にした。

このほかにも、「保育所の待機児童解消が先決」との批判を受け、自民党の提言には、首相が触れていなかった「保育士の賃金アップ」を実現させる案も盛り込まれた。厚生族幹部は「結果的にまともな方向に落ち着いた」と苦笑いした後、首相に批判の矢を向けた。「中身のない『2兆円』ありきが問題だった。首相の頭には、認可、認可外のことなどまるでなかっただろう」。

そもそも首相が無償化を言い出した背景には、消費増税への嫌悪がある。先進国最悪の財政赤字を抱える中、経済成長重視の首相が見いだしたのが、増税は受け入れながらも、国の借金返済に充てる分の一部を無償化に振り替える案だった。

振り付け役は消費増税を悲願とする財務省。首相の意図する無償化とは、それで浮くカネを子育て世代に消費に回してもらう財政政策というのが本質だ。

「マクロ経済対策だから、子育て支援の内容にこだわりなどないのだろう。首相の社会保障への関心の薄さを改めて思い知ったよ」

厚労省幹部は、寂しそうにつぶやいた。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、12月1日号)

「人づくり革命」は妖魔の森の家(浜矩子)

人づくり革命について議論した経済財政諮問会議。(首相官邸公式サイトより。撮影/『週刊金曜日』編集部)

『妖魔の森の家』という小説がある。ミステリーの妙手、ジョン・ディクスン・カーの短編だ。密室トリック物に関して、超絶技巧を誇る先生である。だが、それと同時に、先生の作品には、どこかに必ずオカルト的怪しさが盛り込まれる。それがことのほか怖い。

『妖魔の森の家』の中にも、そんなディクソン・カーの世界が凝縮されている。むろん、ここでその筋書きを紹介するわけにはいかない。ネタバレになる。そもそも、好きな小説を語るのが本欄の役目ではない。ここで言いたいのは、今、われわれは妖魔の森の前に立っているということだ。政治と政策の妖魔の森だ。

「人づくり革命」などという言葉が打ち出されてきた。それは、「生産性革命」と二人三脚の関係にあるのだという。この二人三脚を首尾よくゴールインさせるために、「人生100年時代構想会議」なるものが立ち上げられた。「人生100年時代構想推進室」というのも、設置されている。この体制が、「一億総活躍社会」化に向けての「本丸」だ。安倍首相がこのように言っている。

ヒト・モノ・カネ。これらが、経済社会を動かす三大要素だ。この中で、一番大事なのは、むろん、ヒトである。あくまでも、ヒトが主役だ。モノとカネは、主役を支える脇役だ。あるいは、小道具である。舞台中央に立つのは、常にヒトでなければならない。

このヒトという名のスターに向かって、妖魔たちの手がいよいよ本格的に伸びてきている。「人づくり革命」・「生産性革命」・「人生100年時代構想」・「一億総活躍社会の本丸」。これら一連の言葉のブロックによって築き上げられる構造物。それが今の日本における妖魔の森の家だ。筆者にはそう思える。

2017年3月末に、政府は「働き方改革実行計画」という文書を発表した。2016年9月に始まった「働き方改革実現会議」の議論を通じて取りまとめられたものである。「働き方改革実現会議」を立ち上げるに当たって、安倍首相が、これからは生産性大革命を目指す必要があると言っていた。それがあったから、「働き方改革」の次の目玉商品として「人づくり革命」が打ち出された時、筆者は、必ずや、そこに「生産性革命」というテーマが絡むに違いないと考えた。果たしてその通りであった。

労働生産性を革命的に引き上げる。そのことによって日本経済の成長力を高める。そして、その対外競争力を強化する。強い「お国」のための強い経済基盤を確立する。そのための人づくり革命だ。そのための人生100年時代構想だ。そのための一億総活躍なのである。お国のための人づくり。かくして、主役であるはずのヒトはクニに隷属することとなる。

妖魔の森の家は恐ろしい家だ。聞こえないはずの声が聞こえる。そこにいるはずの人がいなくなる。その中に入っていったはずの人が、出てこない。妖魔たちに拉致されてしまうのだ。妖魔の森の家は、人を騙す家だ。見かけとは違うだまし絵の家だ。この家に足を踏み込んではいけない。この家に誘い込まれてはいけない。妖魔の森に近づいてはいけない。

(はま のりこ・エコノミスト。11月24日号)

プロテストソングの力(小室等)

 谷川俊太郎さんの全詞(詩)で、一九七八年に『プロテストソング』、三九年を経て二〇一七年の今年『プロテストソング2』というアルバムを出したら、旬報社がその二つを合わせた谷川・小室楽譜集を、対談ページを付けて出版してくれるという。『プロテストソング』と題したその楽譜集の僕の前書きから抜き出しつつ。

一九六〇年代、アメリカではフォークソング・ムーブメントの風が吹き荒れていた。ベトナム戦争に対しての反戦歌が、ボブ・ディラン、ジョーン・バエズ、バフィー・セントメリー、フィル・オクス、トム・パクストンたち、若いフォークシンガーによって次々に作られた。ディランの「風に吹かれて」はその代表曲。

キング牧師の率いるワシントン大行進の参加者たちは「ウィ・シャル・オーヴァーカム」を歌いながら行進を続けた。

六三年五月に「風に吹かれて」をリリースしたディランは、その八月にジョーン・バエズに(多分)誘われてワシントン大行進に参加し、特設ステージで「しがない歩兵」を歌った。黒人の公民権運動活動家メドガー・エヴァーズが家族の見ている自宅前で射殺され、犯人の白人が陪審員全員が白人の法廷で“無罪”になるという実際の事件をもとにディランは「しがない歩兵」を作り、その中で、犯人もチェスゲームのポーン、歩兵にすぎないと歌った。それらの歌はプロテストソングと呼ばれた。

プロテストソングの旗手に祀り上げられたディランだったが、プロテストソングは通用しないといち早く見抜き、プロテストソングを歌わなくなって久しい。

メディアが注視する公的なシーンで、一国の首相に向かって悪びれることなく人殺しの道具を売りつけようとするセールスマン大統領。日本のメディアは怒りもせずスルーし、和気藹々の出来レースのお手伝い。白人至上主義者に肩入れしていると批判されるトランプ米大統領。公民権もへったくれもない。「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」発言者が元総理で今副総理、同じ穴の貉。

このような光景を前に、しかしディランはもうあの日のように歌うことはないだろう。

そういうおまえは?

六〇年代、「風に吹かれて」や「ウィ・シャル・オーヴァーカム」に刺激され、僕もプロテストソングを歌った。得意げに上から目線で。それじゃだめだよね。

さて今日、成立しそうもないプロテストソング。谷川さんの言葉の力を借り、僕たち流プロテストソングにあらためて挑戦してみた。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、11月24日号)

情報公開指針案機能するか 原発輸出支援でパブコメ

日本政府が100%出資する国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)は、日本企業が海外で行なう原発事業に公的金融支援を行なう前に、事業者に対して情報公開を求める内容の指針案を策定した。12月4日まで一般からの意見公募にかけている。

立地・建設計画などの開示を求める指針案は、JBICおよびNEXIが原子力事業への融資や付保等の意思決定を行なう前に、事業実施者等が「立地及び建設計画」「使用済み燃料および放射性廃棄物管理計画」「環境影響評価」などを公開していることとした。指針にそった情報公開がなされていない場合は、融資等を実施しないこともありえる。指針の不遵守に関する異議申立も受け付ける。

JBICとNEXIは、指針策定にあたり10回もの公開の協議会合を開催。NGOや企業の意見を受け付け、透明性の高いプロセスを目指した。

しかし、指針案には未だにさまざまな問題が残る。開示要求項目が例示にとどまり、不十分な情報公開でも許してしまいかねない。

日本政府は原発輸出を推進するため、JBIC/NEXI経由で公的金融支援を行なう方針だ。原発はリスクがきわめて高く、民間銀行だけでは担いきれない。このため、たとえば、JBICや民間のメガバンクによる協調融資に加え、NEXIによる融資補償などの支援が想定されている。このような公的資金を使った支援そのものが、健全な経営判断を損なう。

さらに、事業の安全確認は、内閣府内に設けられた検討会議が行なうことになっているが、形式的なものにすぎない。相手国の条約の加入状況や体制を確認するだけだ。JBICとNEXIは原発以外では支援事業の安全を審査しているが、原発事業だけは政府任せだ。

今回の情報公開指針が機能するのか、原発輸出への公的支援の説明責任が保てるか、注目される。

(満田夏花・FoE Japan、11月24日号)

東京・葛飾区議選、ヘイトスピーチ繰り返す 差別主義者団体前代表当選

11月12日に投票が行なわれた東京都の葛飾区議選挙(定数40)で、在日朝鮮人に対するヘイトスピーチを繰り返している差別主義者団体の前代表が当選した。

この人物は、右翼団体「維新政党新風」の鈴木信行前代表。選挙期間中は「外国人に生活保護1200億円ておかしくない?」などというキャッチフレーズを掲げ、36位で当選した。鈴木前代表は2012年6月、韓国・ソウルの日本軍「慰安婦」少女像に「竹島は日本固有の領土」などと書いた杭を縛り付け、同年9月には金沢市にある戦前の著名な朝鮮民族独立運動家の尹奉吉の「殉国記念碑」前に同じような杭を打ち込むなど、極端な反韓国感情による行動で知られている。

またこれまで、東京都の大久保や川崎市など在日朝鮮人が多く生活している地域で、「朝鮮人殺せ」などと叫んでデモや宣伝活動をする「在日特権を許さない市民の会」(在特会)等の差別主義的団体の活動に加わっていた。今回の選挙では無所属で出馬したが、「在特会」のメンバーが大半の「日本第一党」の「推薦」を受けている。運動員も同「党」が中心で、選挙期間中は「在特会」を創立した桜井誠「党首」も応援に駆け付け、駅前などで「ゴミはゴミ箱へ 朝鮮人は朝鮮半島へ」などといったヘイトスピーチを繰り返していた。

「在特会」の動きに詳しいジャーナリストの安田浩一氏は、「差別主義者団体のメンバーが地方議員になった、全国で初めてのケースではないか。きわめて憂慮すべき事態だ」として、次のように語る。

「必ずしも差別的ではないが、社会で『生活保護バッシング』に共感するような層に、『1200億円』などというキャンペーンがヒットしたと考えられる。地域で税金を払って生活している外国人に対する無知につけ込んだ面もあるが、『選挙活動』という名目でヘイトをまき散らす行為が放置されている現状は問題だ」

(成澤宗男・編集部、11月24日号)

内閣官房に、捕鯨・鮭捕獲・土地の権利などを主張 アイヌの権利を“チャランケ”

チャランケに参加したアイヌの人びと。右から3番目が多原良子さん。左端が畠山敏さん。11月17日、東京都内。(撮影/編集部)

11月17日、東京・八重洲のアイヌ文化交流センターで、「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」による、内閣府内閣官房との“チャランケ”が行なわれた。チャランケとはアイヌ語で「談判」の意。互いに自分の主張を談じ合って、判断する、一種の「民衆裁判」(中山千夏氏──小誌10月20日号「はまぐりのねごと」参照)。

今回で4回目となる内閣官房とのチャランケ自体は非公開で行なわれたが、その後、参加者による記者会見が同会場で開かれた。

最初に、「先住民族アイヌの声実現!実行委員会」事務局の出原昌志(アイヌ・ラマット実行委員会共同代表)が、(1)捕鯨の権利、(2)鮭を捕獲する権利、(3)土地の権利、の3点を中心に話し合いが行なわれたことを報告。続いて、この日、チャランケを行なった多原良子さん(アイヌ女性会議代表)は、次々国会での成立をめざすとされる“アイヌ新法”における「アイヌ文化」について、歌や踊りなど「切り取られた伝統文化」ではなく、土地とも密接に結びついたアイヌの生活すべてとしてとらえるべき、と主張したことを述べた。

初めてチャランケに参加した畠山敏さん(紋別アイヌ協会会長)は、(1)かつてアイヌが生活、あるいは利用し、現在は市有地だが未利用の土地を、アイヌ民族の慰霊碑建立や儀式儀礼の場所などに利用、(2)アイヌ民族には川での鮭の特別採捕などという許可は必要ない、(3)アイヌ伝統捕鯨を復活させ、民族の生活面を支える糧としたい、の3点を主張したという。

2007年9月に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」、翌年国会で決議された「アイヌ民族を先住民族とすることを認める決議」からほぼ10年。遅々として進まない権利回復のなかで、積み重ねられてきたチャランケ。次回は、年度末となる来年3月に予定されている。

(山村清二・編集部、11月24日号)