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商工中金の巨額不正融資はなぜおきたか(鷲尾香一)

2017年11月26日12:00PM

政府系金融機関の商工組合中央金庫(商工中金)は10月25日、政府の危機対応融資を使った不正に対する調査報告書を発表した。

同報告書によると、全100店のうち97店で不正が行なわれ、危機対応融資が実施された21万9923口座のうち、不正があるとの判定は4609口座、判定不能のため、疑義が払拭できなかったのが7569口座あった。

4609口座での融資実行額は2646億4900万円にも上り、これに関与した職員数は444人で、危機対応融資に当たった営業職員延べ約2300人の19.3%に上った。

そもそも、この不正とはどのようなものだったのかと言えば、本来、災害などで一時的に業績が悪化した企業に対して適用される危機対応融資を、健全な企業の財務資料などを改竄することで、業績が悪化したように偽装して融資を実行したものだった。

不正を実行した職員は、「危機対応業務は商工中金の一丁目一番地だと本部や支店管理職から言われていた」「危機対応業務の業務計画や個々人の目標値の達成率を少しでも上げるため」と話しており、ノルマに対する強いプレッシャーがあったことは明らかだ。

この調査結果を受け、経済産業省出身の安達健祐社長が引責辞任に追い込まれた。

しかし、問題の根源は危機対応融資にあるのではない。こうした不正が行なわれる環境があり、そうした土壌が作られてきたことにこそ問題が潜んでいる。

商工中金という政府系金融機関のベースは通産省(現経済産業省)からスタートしている。中小企業および中堅企業の資金供給の円滑化のために作られた組織だ。

現在の所管も中小企業庁にあるように、経済産業省の関連機関である。つまり、不正を生み出す環境や土壌は、金融を司る財務省(旧大蔵省)や金融庁のコントロールが効かないという「縦割り行政の弊害」から来ている。

バックに経済産業省があり、金融庁行政が及びづらい政府系金融機関となれば、“腐った土壌が醸成する条件”は十分に整っていたということだろう。

1990年終りから2000年初めにかけて、金融制度改革が花盛りとなり、民間金融機関が改革の大きな波に飲み込まれた。13行あった都市銀行は、合併・経営統合を繰り返し、現在のメガバンク3行とりそなの4行に集約された。

同じ政府系金融機関の農林中央金庫も農業の衰退と農家の後継者不足も影響し、その業容を大きく変化させた。

こうした中にあって、商工中金だけが、唯一無傷で“治外法権”の中で生き延びてきている。確かに、設立当時の協同組合から株式会社化はなされたが、幾度となく完全民営化は先送りされ、未だに政府系金融機関という位置付けにある。

政府の株式の売り出しによる完全民営化への検討過程では、衆参両院で附帯決議まで行なわれ、金融行政のうえで特に配慮を行なうこと等が決められるなど、優遇されている。

商工中金の不正は、政治家と政府が一体になって同金庫に対する利権争いを行なった結果、起こるべくして起きたものと言えよう。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。11月10日号)

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