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地方創生こそ最優先課題だ(高橋伸彰)

2017年10月28日3:07PM

地方はなぜ衰退したのか。その原因を究明せずに、国家戦略特区という名の治外法権をいくら「濫用」しても地方は創生しない。地方は戦後日本の経済成長に乗り遅れたから衰退したのではない。逆に、戦後の日本経済こそ地方の共同体を破壊し、地方から人材を奪い、地方に犠牲を強いて成長を遂げてきたのである。

本気で地方消滅という国難を突破しようとするなら、中央集権を牽引してきた霞ヶ関の大改革が必要だ。まずは、輸出大企業を優遇し国際競争力強化を錦の御旗に地方には工場だけを配置してきた経済産業省を解体し、替わりに中小企業の地方立地と創業を支援する中小企業省を創設したらどうか。

また、教科書の記述内容を細部にわたり検定し、画一的な指導要領を押しつける文部科学省も解体して、その予算と権限を地方の教育委員会に移譲し、地方で生まれ、育つ子どもたちの教育に対し地方が主体的に取り組めるようにしたらどうか。

さらには、国土交通省が牛耳る公共事業の予算配分や実施の権限も自治体に移譲し、税と予算を一手に握る財務省は廃止して予算の企画・立案機能を国会の常設委員会に移し、所得税や法人税については地方に税源移譲したらどうか。

いずれにしても東京に集中する政・官・民の巨大な機能、権限だけでなく、人的ストックも含めた有形・無形の資産を地方に分散しなければ地方創生はいつまでも夢物語だ。夢を実現するには国会をはじめとする首都機能の移転はもちろん、東京に本社(含む本社機能)を置く大企業にも本社を地方に移さなければ法人税率を罰則的に引き上げるとか、内部留保に特別資産税を課すといった「鞭」をふるう必要がある。こうした改革は戦後民主化の過程で断行された改革と比較すれば、けっして無理な注文ではないはずだ。

地方創生は限られた国土を有効に活用し、誰もが安心・安全に生活できる社会を構築するために時の政権が最優先で取り組むべきミッションである。それにもかかわらず今日に至っても達成できないのは歴代の政権が地方衰退を放置し、東京一極集中に抗する政策遂行を怠ってきたからだ。

経済の効率性よりも人間の心が大切だと主張し続けた経済学者の宇沢弘文は、GDP(国内総生産)などの経済統計で測った高度成長期の繁栄は見かけにすぎないと批判し、ゆたかな社会を築くためには市場メカニズムに依存せず地方で暮らす人々が地方の視点で、主体的に地方のコモンズ(社会的共通資本)を維持・管理することが重要だと説いた。

政策の成果を出すことよりも政策の看板を付け替えることに精を出し、数十年前から進行していた少子高齢化を今さら国難だと称し、その解決を大義にして臨時国会の冒頭で衆議院を解散するような安倍晋三首相には、戦後日本が直面してきた最大のアポリア・地方衰退を解決できる能力はない。

今回の総選挙で真正面から安倍政権に対抗するなら、党派を問わず野党は改憲や消費増税の是非だけではなく、いかに地方を創生するかを争点に掲げるべきだ。そうでなければ衰退する地方から希望は生まれないのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。10月6日号)

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