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厚生年金は抜本的な検討が必要(鷲尾香一)

10月から会社員の給与が下がるのをご存知だろうか。9月から厚生年金の保険料率が18.3%に引き上げられたため。支払いは労使の折半のためだ。そして、保険料率は18.3%を最後に今後、引き上げは行なわないことになっている。

実は、厚生年金の財源(残高)は近年、順調に増加している。それは、二つの理由による。

第一は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2014年10月に株式の運用比率を高めるなどの運用改革以降、運用が順調なこと。

それよりも大きな要因は、保険料収入が増加していることにある。保険料収入の伸び率は、12年度2.9%、13年度3.7%、14年度5.1%、15年度5.8%と増加傾向を辿っている。

毎年、保険料率が引き上げられてきたのだから、保険料収入が増加しているのは当たり前のように思えるが、実は賃金の上昇と雇用の増加によるところが大きい。その点では、アベノミクスの効果と評価することもできよう。

毎月勤労統計の1人当たりの現金給与総額は、12年は前年比0.9%減、13年同0.4%減だったが、14年には同0.4%増、15年同0.1%増、16年同0.5%増と給与が増加した。

さらに、人手不足が追い風となって、正規雇用が増加し、厚生年金加入者が増加してきたこと、16年10月から実施された厚生年金の適用拡大に伴い、加入者数が増加したことが大きい。

好調に見える厚生年金の運用だが、将来に対する懸念は大きい。保険料率を18.3%以上に引き上げないというのは、04年の年金改革によって決定している。

厚生年金の保険料率は、5年に一度行なわれる財政検証を経て、決定されるのだが、04年時点で現在のように、運用が順調で、賃金が上昇し、加入者の増加による保険料収入が増加するなどということが見通せていたわけではない。つまり、現状は“出来過ぎ”なのだ。

04年当時は、こうした好環境となっていなかった場合でも、18.3%まで保険料率を引き上げれば、以降、料率を引き上げなくとも大丈夫だと予測したわけだ。

だが、運用は“水物”だ。常に、運用成績が好調ということはあり得ない。事実、運用改革を行なう前のGPIFでは、08?11年度は赤字幅が10?20%を続けていた。

さらに、いつまでも保険料収入が増加するかは疑問だ。少子高齢化により、すでに労働力人口は減少段階に入っている。労働者そのものが減少しているのだから、将来の厚生年金加入者増は見込めない。むしろ、受給者が年々増加していくのだから、厚生年金の収支は徐々に苦しくなっていく。

そして、再び不況が来れば、賃金の上昇は止まる。むしろ、賃金が低下する可能性こそある。

こうした点を考えれば、保険料率が18.3%で打ち止めにできるというのは、甚だ疑問だ。

7月末、19年に公表予定の新しい公的年金財政の見通し(財政検証)に向けた作業が始まった。厚生年金財源に余裕のある今こそ、将来に向けた抜本的な検討が必要だろう。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。9月15日号)