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小池知事特別秘書、年収1400万円だけでなく「運転手つき専用車」通勤まで明らかに

情報公開の推進を看板にしている小池百合子東京都知事だが、その看板も色あせはじめた。去る8月25日のこと、筆者は小池知事を質すべく定例記者会見に臨んだ。

「知事特別秘書(特別職の常勤職員)に年間1400万円もの給与・手当を支給することは妥当か。また運転手つきの専用車で通勤させていることに都民の理解が得られると考えるか」

そう質問しようと手を上げたが知事は一顧だにせず、ついに一方的に会見を打ち切った。「知事お願いします」と声をかけると小池知事はうなずいただけで立ち去った。ほかにもいくつか手が上がっていたが無視した。

記者クラブに加盟しているメディアなど気心の知れた記者だけの質問に答え、都合が悪そうな記者には質問自体をさせない。「情報公開」を装った情報操作ではないか。そんな印象を抱いた一幕だった。

月額70万6000円、地域手当と期末手当を入れて年間1400万円という特別秘書の支給額を都が公表したのは、この会見の2日前の23日のことだ。その公開に至る経緯も「情報公開」に積極的とはとてもいいがたい。

知事特別秘書として小池知事は昨年8月、都民ファーストの会代表(当時は幹事長)の野田数氏と元『読売新聞』記者の宮地美陽子氏を採用した。政党代表者を職員に雇うことに疑問を感じた筆者は、今年6月、給料や手当の額はいくらか、秘書課や人事課に問いあわせた。返ってきたのは次の言葉だ。

「個人情報だから明らかにできません」

都の条例では、特別秘書の給与額は「任命権者が知事と協議」して決めるとある。つまり給料額は知事に一任されている。その額がなぜ個人情報なのか。納得できない筆者は情報公開請求を行なった。出てきたのは真っ黒に塗られた「給与簿」だった。理由はやはり「個人情報」。

もはや裁判で争うしかないと、8月17日、給与簿情報の開示を求めて裁判を起こした。これがニュースになり、ようやく「1400万円」の開示に至ったのである。「秘書本人の同意を得て開示した」と小池知事はもったいぶった釈明を行なったが、世論の批判を恐れて出したというところだろう。

その証拠に、舛添要一前知事時代の特別秘書2人の給与額を教えてほしいと都に問い合わせたところ、「個人情報だから答えられない」と回答を拒否した。マスコミが取り上げるかどうかによって情報を出したり出さなかったりするのが小池流らしい。

【都議選中通勤は4日だけ?】

さて、特別秘書給与額の公開とともに、新たな疑問が浮上した。一つは、勤怠管理をいっさい行なっていないという事実。そしてもう一つが、秘書1人につき1台の運転手つき専用車をあてがい、通勤に使っているという事実だ。

参考までに、都議選のさなかの今年6月の野田氏専用車の運行日誌を情報公開請求で開示させてみると、わずか4日しか動いていないことがわかった。一方、専用車があるので通勤手当は払われていない。都庁への出勤をほとんどせず、税金から給料をもらいながら、都民ファースト幹事長として、都議選の選挙活動に没頭していた疑いが濃厚だ。

東京都特別秘書の異常さは、他府県と比べてもきわだっている。知事特別秘書をおいているのは、(1)岩手(小原和也氏)、(2)福島(小林大也氏)、(3)埼玉(伊地知伸久氏)、(4)千葉(中村充宏氏)、(5)神奈川(千田勝一郎氏)、(6)長野(園部文彦氏)、(7)沖縄(岸本義一郎氏)――の7県。特別秘書を2人も置いているところは東京だけだ。また政党の代表者を特別秘書にした例も東京以外にない。まして、専用車をつけているところもない。

なお条例上知事が事実上自由に給与額を決められる仕組みになっているのは、東京のほか、福島、千葉、埼玉の各県。

知事特別秘書の異常な好待遇について小池知事は都民にどう説明するのか。筆者としては引き続き記者会見で手を上げるしかない。

(三宅勝久・ジャーナリスト、9月8日号)

英国の野党が示す大人っぽさ(浜矩子)

日本の半歩先を行く英国。折りに触れてこのイメージが頭に浮かぶ。日本からほんの少し先行して、やってはいけないことをやらかしてくれる。だから、日本が賢ければ、英国の振りをみて我が振りを直せる。その意味で、英国は日本にとって格好の反面教師だ。ところが、せっかく目の前で英国がダメな例を示してくれているのに、日本はまっしぐらに進んで、同じ落とし穴に落ちる。こういうことが、どうも、よくある。

1990年代後半、労働党トニー・ブレア政権の下で、英国は規制緩和と民営化の道をひた走った。その結果が格差拡大と貧困の深化だった。何もかもが民営化されていく中で、労働環境の劣悪化と賃金への下押し圧力が人々を襲った。

ブレア政権に遅れること、まさに半歩という感じのタイミングで、日本では自民党小泉政権が誕生した。構造改革の看板を振りかざす彼らの下で、「民に出来ることは民へ」の方針が打ち出された。その実情は、官がやるべきことさえ民に丸投げするというやり方だった。まさしく、ブレア政権の民営化路線を半歩遅れて踏襲した観が濃厚だった。その結果、日本でもまた「下流社会」や「ブラック企業」や「失われた中間層」が問題になる展開となった。

半歩先の反面教師が犯してくれていた失敗を、もう少し真剣に注意深く見つめていればよかったものを。当時、つくづく、そう思ったものである。

ところが、このところ、少し肌合いの違うイメージが出現してきている。今この時、珍しく、英国が日本にとって反面ならぬ「正面」教師になってくれているかもしれない。そう思える動きが出ている。

目下、英国の保守党メイ政権が、EU離脱問題を巡ってなかなかの醜態をさらけ出している。現実的な離脱シナリオをなかなか提示できない。「潔い離脱」を振りかざすばかりで、離脱に向けての移行をどう切り盛りするつもりなのかが一向に見えてこない。離脱後の対EU関係についても、「特別で深い関係」を構築すると言いながら、そのために英国側がどのような対応をするつもりがあるのかを明示しない。EU側も、英国のこの煮え切らないというか、内容空疎で突っ張りばかりの態度に苛立ちを隠さない。

ここまでだけなら、英国の姿勢は、やっぱり反面教師的だ。だが、話はこれからである。

ここにきて、野党労働党から、独自のEU離脱シナリオが出た。彼らいわく、移行期間をゆっくりとらせてもらったらいい。その間は、従来通りEUとの単一市場関係を維持したらいい。今まで通りの日常を、とりあえず続けさせてもらう。そのために必要なコストは受け入れる。この状態で、時間をかけながら、双方納得できる離脱の形に辿り着けばいい。

これは、大人の提案だといえる。頭に血が上った感じがない。肩肘を張っていない。英国らしさがある。この提案で党内世論を結集させることができた点も、重要だ。 この良識ある雰囲気を保ち続けることができれば、労働党は次の総選挙に勝てる可能性が大きい。半歩先で英国の野党が示した大人っぽさ。これを日本の誰に学んでほしいか。それは言わずもがなだ。

(はま のりこ・エコノミスト。9月1日号)