週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

昭恵氏「秘書」こっそり海外異動、加計学園「特区審査しない」大学設置審 安倍政権また「疑惑隠し」

谷査恵子氏のイタリア日本大使館への異動について「適材適所」と繰り返す経産省(手前右)と外務省の職員(同左)。(写真撮影/片岡伸行)

「国家戦略特区の要件は審議しない」

加計学園(本部・岡山市、加計孝太郎理事長)の獣医学部の設置審査をめぐり、文部科学省の松永賢誕高等教育局専門教育課長らの発言が波紋を広げている。折しも、安倍晋三首相の妻・昭恵氏付き「秘書」を務めた経済産業省職員・谷査恵子氏の在イタリア日本大使館への異動が発覚。安倍政権による「疑惑隠しだ」との批判がさらに高まりそうだ。

加計学園の獣医学部新設をめぐっては、国家戦略特区諮問会議議長である安倍首相の関与が疑われる数々の文書や証言が明らかになっているだけでなく、当初から、特区認定のための4条件(既存の獣医師養成ではない、新たに対応すべきニーズに応えるなど)を満たしていないとの疑惑もあった。そうした中、加計学園の獣医学部設置申請を審査中の大学設置・学校法人審議会は、8月下旬に出す予定だった「認可」答申を「保留」としたが、特区要件を満たしているかどうかの判断が焦点とされていた。

しかし、8月16日に東京・永田町の衆院第一議員会館内で開かれた民進党
「加計学園疑惑調査チーム」のヒアリングの席で、松永専門教育課長らは「大学設置審はカリキュラム内容、教員組織、施設・設備などについて学問的、専門的な審査をする」としながら、「国家戦略特区としての要件(4条件を満たしているかどうか)については審議しない」と明言した。

これに対し、疑惑調査チーム座長の桜井充参院議員や今井雅人衆院議員は「おかしい」と反発し、「4条件を踏まえた特別な獣医学部を作るとして認可されたにもかかわらず、その特区要件について審議しないとすれば、通常の獣医学部の審査と同じではないか」「内閣府は、新たなニーズに対応する獣医学部の質が確保されているかどうかは設置審で審議すると言い続けてきた。4条件を議論しないというのは矛盾する」などと指摘。内閣府も「教育のレベル、質の議論については設置審でやる」(塩見英之参事官)と認めた。文科省と内閣府の食い違いが明らかになっただけでなく、国家戦略特区の認定と大学設置認可をめぐる制度上の欠陥が露呈した形だ。

民進党側は文科省に対して次回(23日)のヒアリングで再度の説明を求めたが、かりに、設置審では国家戦略特区の要件を審査しないということになれば、千葉県成田市に今春開学した国際医療福祉大学の医学部新設に際しても同様に特区要件の議論を除外したことになり、設置審自体のあり方が問われよう。大学設置審議会は10月下旬に再度、加計学園の獣医学部を「認可」するかどうかの審査結果を出すことになっている。

【疑惑深まる谷氏の異動】

「国民から見たらどう考えても疑惑隠し。8億円値引きの核心を知る谷査恵子さんをなぜ海外に隠すのか。疑惑はますます深まる」

そう指摘するのは民進党の国会対策委員長・山井和則衆院議員だ。

谷氏は2015年11月、森友学園への国有地有償貸付の過程で籠池泰典理事長(当時)の要望に応える形でファクス回答をした。また、谷氏らには昭恵氏とともに自民党の選挙応援をした国家公務員法違反の疑いも指摘されている。

経産省と外務省の説明では、谷氏は16年1月に官邸から経産省に戻り、今年1月6日付で「在イタリア大使館一等書記官」の異動内示を受け、8月6日付で経産省から外務省に出向、異動発令となった。森友問題発覚後は「テレワーク」(自宅勤務)となり、“口封じ”された上で海外に飛ばされた形だ。しかし、国税庁長官に栄転した佐川宣寿理財局長(当時)と同様、「論功行賞人事」と指摘される。

「国会を閉じてからこの人事。国会中にはできなかった」(山井衆院議員)上に、異動発令が8月6日の日曜日で、同月15日までその事実を伏せていた姑息さが際立つ。8億円値引きの事前交渉のテープが出てきたこともあり、谷氏隠しをきっかけに森友学園疑惑の捜査進展を求める声も強まりそうだ。

(片岡伸行・編集部、8月25日号)