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戦争加害展示の撤去理由文書を非公開にした大阪市、高裁で逆転敗訴

勝訴の旗を掲げる竹本昇さん(右から3番目)ら。(提供/「ピースおおさか」の危機を考える連絡会)

大阪国際平和センター「ピースおおさか」(大阪市中央区)が戦争の加害展示を撤去した改装をめぐり、大阪市が展示内容の変更を示す文書を非公開にしたことで精神的苦痛を受けたとして、市民団体「『ピースおおさか』の危機を考える連絡会」の竹本昇さん(67歳)が160万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が9月1日、大阪高裁であった。佐村浩之裁判長は請求棄却の一審・大阪地裁判決を覆し、「非公開決定は違法」として市に5万円の賠償を命じた。

判決などによると、ピースおおさかは大阪府・市が財団法人を設立して1991年に開館。戦争を被害と加害の両面から捉える必要性から「南京大虐殺」「朝鮮人強制連行」など加害の歴史にも力を入れた。ところが2011年の統一地方選挙で「大阪維新の会」が躍進すると「自虐的だ」との非難を強め、橋下徹知事(当時)が府議会で廃館を示唆。13年4月に加害展示を見直すリニューアル構想が発表され、市民団体などが抗議行動を展開。竹本さんは15年1月、展示変更を示す文書の公開を市に求めたが非公開決定が出された。ピースおおさかは同年4月、リニューアルオープンした。

判決は、非公開文書は「それ自体秘密性を有するものとはいえない」とし、市の情報公開条例が規定する非公開情報には該当しないと判断。「公開すれば市民団体の批判などへの対応に追われ、改装に向けた準備業務に支障が生じる」との市の主張には、「強い公共的性格を有し、意見や批判などを受けないように取り計らうのは正当ではない」として退けた。

判決について、竹本さんは「加害展示撤去の手続きの違法性が認定され、市民の知る権利を奪おうとした不当なものであることが明らかになった」と評価。大阪市は上告を検討している。

竹本さんは市のほかに府、運営財団とも同様の訴訟を起こしているが、いずれも一審は敗訴して大阪高裁で審理中。府相手の控訴審判決は11月30日。

(平野次郎・フリーライター、9月15日号)

政府の漁業「規制改革」に沿岸漁業者らが危機感

漁業の「規制緩和」へ疑問を呈する鈴木教授。(撮影/まさのあつこ)

9月1日にフォーラム「規制改革会議と漁業権を考える」(JCFU全国沿岸漁民連絡協議会とNPO法人21世紀の水産を考える会の共催)が開催された。

参議院の講堂は大漁旗とともに全国各地の沿岸漁業者を中心にほぼ満席となった。日本の漁業は漁民全体の96%を占める小規模沿岸漁業就業者が支えている。にもかかわらず、内閣府の規制改革推進会議(議長=大田弘子・政策研究大学院大学教授)は5月に開催した農業ワーキング・グループ(WG)で、日本の漁業就業者1人当たりの生産量や漁船1隻当たりの漁業生産量は諸外国と比べて低いという認識に立ち、漁業の効率化や規制緩和に向けた議論を始めている。

「漁業の専門家が1人もいない会議だ」「今、沿岸漁業者の声を集めて国に届けなければ」との危機感を背景にした集会となった。

前半は、「半農半漁の家の息子です」と自己紹介した東京大学大学院の鈴木宣弘教授(国際環境経済学)が、「亡国の漁業権開放論」と題して講演を行なった。

鈴木教授は「漁業権の開放には強い違和感を抱く」「(WGは)日本漁業が衰退したのは非効率な家族経営体が公共物の浜を勝手に占有している、既得権益化した漁業権を規制緩和し、資金力のある企業経営体に参入させろという。だが、今までの『規制緩和』や『国家戦略特区』の実態は『特定の企業への便益供与』であり『国家私物化』だ」と猛批判。規制改革会議メンバーが自身の関係企業に利益誘導して利益相反を引き起こしているとして、誰でも分かるイニシャルトークでM(宮内義彦オリックス元会長)、T(竹中平蔵・パソナ取締役会長)、N(新浪剛史ローソン元会長)の例を挙げた。

「規制撤廃して個々が自己利益を追求すれば、社会全体の利益が最大化されるという論理の適用は論外だ」(鈴木教授)。

【各地の沿岸漁民の現状】

後半は全国から「各地の沿岸漁民の生活と権利をめぐる諸問題」が報告された。

福島大学の林薫平准教授(経済経営学)は、原発事故以来、福島の沿岸漁業はいまだに全面自粛が続いていると報告。事故直後は大気中から海洋への降下、河川を通じた海洋への流出、原発から直接の漏洩による汚染経路が、そして、現在は処理済みの低濃度の汚染水の放出問題が収束していないとする一方、漁業再開を目指して注意深く進めている試験操業への理解を訴えた。

宮城県からは「東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターの綱島不二雄代表世話人が、2011年5月に村井嘉浩知事が「水産業復興特区」の導入を提案し、漁民からの1万4000の反対署名にもかかわらず、12年に合同会社が設立されたが、検証作業が必要だと訴えた。岩手県からは、100人の零細漁民が、サケの定置網漁を漁協に独占させ、零細漁民には禁じている岩手県を相手取って行政訴訟を提起していると澤藤大河弁護士が報告。「漁獲高は無制限である必要はなく各漁民につき年間10トンを上限として固定式刺し網によるサケ漁を認めよ」という裁判だという。

和歌山県からは、東漁協が、カツオの来遊量が極端に減った原因は、熱帯域での大規模まき網による乱獲である可能性が高いと報告。長崎県対馬市の曳縄漁業連絡協議会の宇津井千可志会長は、クロマグロの保護政策で漁獲が制限され、漁家経営が困難である一方、逆にその数が増えたことで、イカ、タイ、ブリ漁など島内水産業の存続が危ぶまれると報告した。

その他、北海道留萌海区漁業調整委員会、千葉県沿岸小型漁船漁業組合などからも報告が行なわれた。また、諫早湾干拓事業の潮受堤防の開門調査がいまだに実施されていない現状を「よみがえれ!有明訴訟弁護団」の堀良一弁護士が報告した。

JCFU全国沿岸漁民連絡協議会では、前日に政府に対してこうした実態を要望書にまとめて提出、「施策に反映」してほしいと訴えた。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、9月15日号)

“カメレオン百合子”とコウモリ党(佐高信)

前略 小池百合子殿

関東大震災の際の朝鮮人虐殺を追悼する式典に、都知事のあなたが追悼文を送ることをやめたと知って、いよいよメスのタカの本領発揮だなと思いました。何せ、「日本会議」ですものね。同じく防衛大臣を経験したあなたと稲田朋美に考え方の違いはないのでしょう。

特に女性たちにあなたに期待する人が多いようですが、私の分類では、あなたは女性知事ではなく女装知事です。その第1号は元大阪府知事の太田房江でした。太田が府知事になった時、『毎日新聞』の大阪本社版で日本婦人有権者同盟の紀平悌子が「男性支配の官僚組織にまみれず、女性特有の潔癖さを持ち続けてほしい」と期待の弁を寄せ、法政大学教授(当時)の田嶋陽子も「横山(ノック)前知事の強制わいせつ事件の後だけに『女性に知事をやらせよう』と選択した大阪人の心意気を感じる」と語っていることに私は強い違和感を覚え、「太田さんは、特定の宗教団体の支援や“強姦発言”をした衆議院議員(西村眞悟)が所属する政党の推薦を受けて当選した。そういう意味ではカムフラージュとしての女性でしかない。女装した知事だ」とコメントしました。

西村に応援されて平気な太田に、どうして「女性特有の潔癖さ」が求められるのか、また、強制わいせつ事件を払拭するような「心意気」が感じられるのか、私にはまったくわからなかったからです。

「日本会議」的要素をこれから強めていく

女装知事第2号のあなたを見ていて私はカメレオンを連想します。『広辞苑』によればカメレオンは「体色を変えることで著名。眼は大きく、左右独立に動き、別々のものを見る」とか。「長い舌を持ち、これを伸ばして昆虫などを捕食」ともありますが、あなたにそっくりで、“カメレオン百合子”というニックネームを進呈したくなりました。

細川護煕、小沢一郎、小泉純一郎と、その時々の権力者を捕食して、あなたは生き延びてきたわけですが、策士といわれた松野頼三が、首相になる前の竹下登をこう評しています。

「あの人は、いわば水みたいな人だろうね。だから、佐藤栄作という器のときには佐藤の色になり切り、田中角栄のときは田中になり切り、田中角栄の性格、趣味、カネを敏感に映す鏡のような人だ。むろん、中曽根康弘のときは中曽根の器になり切る」

いわば無原則に見えるあなたがとても大事にしているのが公明党ならぬコウモリ党との連携です。拙著『自民党と創価学会』(集英社新書)にも引きましたが、ほぼ50年前に藤原弘達は『創価学会を斬る』(日新報道)で次のように危惧しました。

「(公明党が)自民党と連立政権を組んだとき、ちょうどナチス・ヒトラーが出た時の形と非常によく似て、自民党という政党の中にある右翼ファシズム的要素、公明党の中における宗教的ファナティックな要素、この両者の間に奇妙な癒着関係ができ、保守独裁体制を安定化する機能を果たしながら、同時にこれを強力にファッショ的傾向にもっていく起爆剤的役割として働く可能性も非常に多くもっている。そうなったときには日本の議会政治、民主政治もまさにアウトになる。そうなってからでは遅い、ということを私は現在の段階において敢えていう。それがこれだけ厳しく創価学会・公明党を斬らざるをえない問題意識なのである」

あなたの中にある「日本会議」的要素が「自民党という政党の中にある右翼ファシズム的要素」でしょう。カメレオンのあなたは、これから、その色を強めていくわけですね。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、9月8日号、一部敬称略)

Jリーグ京都サンガの新スタジアム建設に巨額の税金支出 住民が府を提訴

サッカーJリーグの京都サンガの本拠地として、京都府が亀岡市に建設を予定している球技専用スタジアム「京都スタジアム(仮称)」について8月31日、亀岡市民(高向吉郎氏ら14人)が、「費用対効果の算出方法に誤りがある。公金の違法支出」などとして、京都府(山田啓二知事)を京都地裁に提訴した。

スタジアム計画はJR亀岡駅の北側の遊休地に建設されるもので、観客席が2万1610席の大型施設。総事業費は167億円。府の負担分は147億円で予算化された。立候補していた5市町から府が亀岡市を選んでいた。建設に対して住民らが6月に監査請求したが8月に入って府の監査委が請求を棄却していた。

訴状によれば(1)京都サンガの1試合当たりの入場者を1万人と見積もっているがJ2に降格した2011年からの平均動員数は5000人から7000人しかない。見積もりは根拠がなく過大(2)スタジアムは大規模公園ではないのに、国交省の「大規模公園費用対効果分析手法マニュアル」をスタジアム建設に適用するのは地方自治法に違反する(3)世界でも岡山県の旭川水系、吉井川水系と京都府の桂川水系にしかいない天然記念物で絶滅危惧種の淡水魚アユモドキの生息に工事が悪影響を与え文化財保護法などに違反する、などとしている。府は「スタジアムが新しくなれば集客効果が出る。アユモドキを保護する対策は専門家の会議で了承された」と反論している。

原告代表の高向氏は「市民憩いの場である大規模公園に適用する分析マニュアルを、ほとんどプロが使うだけのスタジアムに適用し、巨額の税金を支出するのは不当」と話す。原告らは亀岡市に用地取得費の支出差し止めを求めた住民監査請求も棄却され、新たに同市を提訴する予定。亀岡市の人口は9万人に満たない。東京五輪に便乗し、「そこのけスポーツ様が通る」のスポーツ公共事業に歯止めをかけたい。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、9月15日号)

「共謀罪」廃止運動が各地で続々 各界に広がる共闘の動き

安倍晋三内閣が強行採決で成立させた、犯罪行為を伴わないのに計画段階で処罰できる「共謀罪」法の廃止を求める闘いが続いている。7月に同法が施行されたのを受け、9月6日には国会内で「共謀罪対策弁護団」が結成された。

同「弁護団」は、野党と共闘して「共謀罪」の廃止運動に弾みを付けるとともに、実際に「共謀罪」が捜査機関によって適用され、市民が不当に検挙された場合、弁護活動も含めて対応することが目的。結成式と同時に開催されたシンポジウムでは、「弁護団」事務局長の三澤麻衣子弁護士が、「市民運動を萎縮させないためにも、『共謀罪』の問題点を語れる弁護士を全国で増やす。『共謀罪』を廃止し、表現の自由を守る国民の気持ちの拠り所となりたい」と発言。今後に向けての方針を示した。

また、翌7日には、グリーンピース・ジャパンや日本消費者連盟、自由人権協会ら14団体が結集し、国会内で「共謀罪廃止のための連絡会」が結成された。記者会見では「共謀罪NO!実行委員会」の海渡雄一弁護士が、「今後、さまざまな運動を展開し、『共謀罪』を廃止する取り組みを強化していく」と、「連絡会」の目的を説明。さらに今秋の臨時国会では野党に対し、「共謀罪」廃止法案の共同提出を求めていくと述べた。

さらに15日夕には、東京・日比谷野外音楽堂で「共謀罪は廃止できる!大集会」が予定され、漫画家のちばてつや氏も登壇する。以後も全国各地で、市民や弁護士団体等によるデモや集会が多数計画されている。同「実行委員会」等の呼びかけによる「『共謀罪』の廃止を求める緊急統一署名」も、9月30日の第2次集約に向け拡大中だ。

(成澤宗男・編集部、9月15日号)

「Fight for $15」世界各地で一斉行動 日本でも最低賃金1500円求める

東京・渋谷区センター街のマクドナルド前にて。(撮影/松元千枝)

来月から最低賃金が改定されるのを前に、全国一高い東京の958円でさえ人間らしい生活を送るには到底不十分だとして、9月4日、時給を国際水準である1500円にしようと労働組合などが都内渋谷区でアピールした。

この最低賃金引き上げキャンペーンは、2014年に米国ファストフード労働者が時給増額と労働組合結成を求めて声をあげたFight for $15の一環。この日は、レイバー・デー(米国の労働者の日)にちなんでIUF国際食品労連が提起し、低賃金労働者らが呼応して世界各国で行動が組まれた。日本では東京以外にも全労連が22道府県で行動展開した。

「月給13万円で東京で暮らせますか?」「毎月映画を観にいく余裕はありますか?」「休みには旅行を楽しんでいますか?」

世界同時アクションに参加した下町ユニオンの加瀬純二事務局長は、若者や観光客でにぎわう渋谷センター街や駅前でこう呼びかけた。15年以上勤務しても時給が1020円だったローソンストア100で働く下町ユニオン組合員のエピソードを紹介。ボーナスも退職金もないのに、店の売り上げが下がったことを理由に閉店1カ月前に告知されて退職を迫られたため、団体交渉を予定しているという。加瀬さんは、時給が低すぎて長時間労働やダブルワーク、トリプルワークせざるをえない日本の労働実態について語り、こう続けた。

「『働きすぎはもうゴメンだ』とは言え、非正規労働者やアルバイトだと働かなければ生活できない。泣き寝入りをせず、だれもが安心して働き人間らしい生活ができるよう労働組合に加入して働き方を変えていこう」

世界の労働者との連帯行動には、労働契約法20条裁判で非正規労働者の差別是正を求めて会社を提訴した原告組合員の姿もあった。

【労働条件の向上を】

郵便局で働く郵政産業労働者ユニオンの浅川喜義さんは、非正規労働者が安心して働けるようになるには労働条件も向上させるべきだと指摘。地下鉄売店で働く全国一般東京東部労組メトロコマース支部の後呂良子さんは、同僚が65歳をすぎてもトリプルワークせざるをえないため、いつ倒れてもおかしくない働き方を強いられているとマイクで訴えた。

一方で、正社員であっても残業代が含まれる月給額の設定に、気づかないうちに最低賃金ラインで働かされているといった相談が増加しているという実態も報告された。都内の印刷会社で働く男性は、「印刷労働者は残業代で食っていると言われる。賃金が低すぎて、結婚できない。家族を養えない。普通のことが普通にできない。こんな社会はおかしい」と問いかけた。

アピール行動に聞き入っていた42歳のIT関係で働くフリーランスの男性は、パワハラや過酷な長時間労働で健康を害した経験を持つ。最賃の大幅引き上げは重要だとして要求に賛同する一方で、「労働組合に相談する時点で身体が限界にきているため、労組に加入しても仕事を辞めざるをえないことが多い。困っている労働者は早めに相談するべきだ」と語った。

この日は、米国をはじめ、ニュージーランドやフィリピン、韓国でも抗議や職場放棄など時給増額や労組を認めるよう雇用主に要求する行動があり、英国では2店舗のマクドナルドでファストフード店における史上初のストライキを決行した。

最低賃金ギリギリの時給で働くため、食費を削り健康を維持できない生活実態が語られ、世界中で事業展開するファストフード大手企業が、ディーセントワーク(人間らしい労働)を保障していない現状が明らかになった。

ニュージーランドや英国では、稼働率が低い時間に雇用主が労働時間を削り、賃金を支払わなくてもすむ「ゼロ時間契約」が導入されたことで、不安定な収入で生活が成り立たない労働者が続出。近年、この契約の撤廃を求める運動が続いている。

(松元千枝・ジャーナリスト、9月15日号)

米国政界と「議論のテーブルに着けた」辺野古新基地の代替案

提言内容を説明するND評議員の元沖縄タイムス論説委員・屋良朝博氏。東京・千代田区。(写真/小宮純一)

沖縄・辺野古への新基地建設を止めようと、日本の民間シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」が米ワシントンを訪れ、米連邦議会関係者らに提言した海兵隊の運用を見直す代替案の報告会が8月29日、東京・千代田区内で開かれ、市民ら約90人が参加した。ND事務局長の猿田佐世弁護士は「米国務省職員や米議会上・下院補佐官などに接触でき、初めて軍事に関する議論のテーブルに着けた感触を得たのが最大の成果」と述べた。

「辺野古が唯一の選択肢ではない」として、NDが政策提言したのは(1)在沖米海兵隊の前方展開部隊「第31海兵遠征部隊(31MEU)」の拠点を沖縄以外に移転(2)アフガン攻撃、イラク戦争で、国際問題は武力では解決できない現実を受け止めた米政府が、米軍を使って貧困や格差の解消に取り組んでいることや、自衛隊も頻繁に国内外の災害救援に出動している現実から日米合同の任務部隊「日米JOINT MEU for HA(人道支援)/DR(災害支援)」を常設(3)同部隊のアジア全域をエリアとする連絡調整機能を沖縄に置く―など。

辺野古が唯一ではないことを、「米国発」の形で日本政府に逆提言させることを目指す新たな挑戦だ。普天間基地移設問題に対する代替案として、今後はコスト面でもND案の有利性を示していくことが課題だろう。

(小宮純一・ジャーナリスト、9月8日号)

大型風力発電による健康被害リスクを複数の団体や識者が警告

北海道石狩市では新港地区に46基もの大型風力発電所計画が集中し、低周波音によって小樽市や札幌市を含む広範囲で健康被害が発生するという予測もある。

市民団体「石狩湾岸の風力発電を考える石狩市民の会」の会員は、7月下旬、4基の着工を確認。8月20日には札幌からの参加者を含む市民約30人が参加して石狩市中心部でデモを行ない、風車による健康被害のリスクを訴えた。

北海道自然保護協会も、8月9日、札幌市長宛に要望書を提出。札幌市として独自に低周波音の調査を行なうほか、被害が出た場合の対応について事業者と事前に協議すること、協議会には市民代表を参加させることなどを求めた。

日本社会医学会は、8月19日、北海道医療大学で「北海道のエネルギー問題と健康」をテーマにシンポジウムを開催。北海道大学の研究者3名が講演を行なった。

環境創生工学部門教授の松井利仁氏は、日本では健康影響を考慮せずにエネルギー政策が決定され、公害事件後も経済的利益が判断根拠になっていると批判。有機水銀説を否定して対応が遅れた水俣病と、風力発電の低周波音問題の類似性を指摘した。

情報科学研究科教授の北裕幸氏は、家庭で利用されるエネルギーの用途は冷暖房や給湯、調理などの熱利用が過半数を占めているのに、それらを主に電力として供給している点を指摘した。

大気環境保全工学研究室助教の山形定氏は、発電時に発生する熱も無駄なく利用する小型の木質バイオマスガス化発電の例と、再生可能エネルギー固定価格買取制度によって大量の木質バイオマス発電所が稼働し、間伐材の価格が上昇している問題を報告。間伐材から作る家畜の敷料の価格高騰、過剰伐採による森林資源の枯渇も懸念されているという。

「経済ベースでエネルギー問題を考えるのではなく、地域住民が主体となって事業を行なう必要がある」と山形氏は考えている。

(加藤やすこ・ジャーナリスト、9月8日号)

“加計学園の認可は違法で無効” 法律家ネットワークが法的問題点を明示

「獣医学部新設の認定は違法」と指摘する梓澤弁護士(右)と中川弁護士=8月30日、衆院第一議員会館で。(撮影/片岡伸行)

「加計学園の獣医学部設置を国家戦略特区として認定したのは違法であり、無効である」――。

愛媛県今治市で来年4月開設に向けて建設工事が進む学校法人加計学園(本部・岡山市、加計孝太郎理事長)の獣医学部新設をめぐり、「加計学園問題追及法律家ネットワーク」の共同代表、梓澤和幸弁護士と中川重徳弁護士が法的な問題点を明らかにした。

同ネットワークは8月7日、安倍晋三内閣総理大臣と梶山弘志規制改革担当大臣宛に「質問状」を、林芳正文部科学大臣と大学設置・学校法人審議会に「要望書」をそれぞれ提出。約100人の弁護士、法律家がこれに賛同した。

梓澤、中川両弁護士は8月30日、東京・永田町の衆議院第一議員会館内で開かれた民進党「加計学園疑惑調査チーム」のヒアリングに招かれ、この「質問状」と「要望書」の内容に沿って法的な問題点を整理する形で説明した。

梓澤弁護士はまず、「獣医学部新設はあくまで例外であり、原則は設置しないということ」とし、「文科大臣の告示によって『医師養成、歯学部、船員養成学部』など国民の命に関わる大学は設置しないというのが原則」であり、そこに挙げられている職業は「いずれも国民の健康・安全に関わり、多額の公的援助(税金)が投じられ、やたら作られてしまっては質低下の弊害が大きいからだ」と指摘。「それを例外として認めるときは『石破4条件』を満たすかを審査することが閣議決定(2015年6月30日)された。ライフサイエンスなど新たに対応すべき需要があり、かつ既存の獣医学部ではできない人材養成でなければならないということである。既存の大学がライフサイエンスなど要求される質と数の人材養成ができるかできないかを判断するべきだ。そのためには、各大学にヒアリングが必要だが、一切行なわれていない。公表されている資料では4条件を満たしているかどうか検討し、審査した形跡もない」と述べ、国家戦略特区ワーキンググループでの浅野敦行文科省専門教育課長(当時)の発言(16年9月16日)などを示した。

その上で、梓澤弁護士は、「4条件を閣議決定した以上、総理大臣も文科大臣も規範的に拘束される。閣議決定の要件を検討せずになされた安倍首相による区域計画認定(2017年1月20日)は、閣議決定の方針に基づいて指揮監督することを定めた内閣法第6条および4条に違反するもので、最高裁判決(07年12月7日)によれば明らかに裁量権の逸脱・濫用で違法であり、無効ということになる」と述べた。

【4条件審査せずに認可したら違法】

中川弁護士は国家戦略特別区域基本方針(14年2月25日に閣議決定)に照らして「手続き上の瑕疵があり、違法だ」と指摘した。

同基本方針には「運営に係る基本的な事項」として、〈公平性・中立性を確保〉するために〈直接の利害関係を有する議員については、当該事項の審議及び議決に参加させないことができる〉とある。

それを踏まえ、中川弁護士は、「加計理事長ときわめて親しく飲食を共にする関係にありながら、安倍首相は16年10月4日(第24回)、同年11月9日(第25回)、17年1月20日(第27回)の諮問会議に参加し、『実現に向けた議論を加速』するよう指示したり(第24回)、『私と一緒にドリルの役割をお願いしたい』(第25回)などと発言し、最終的に加計学園の獣医学部新設の区域計画を認定した。これは基本方針に適合せず、違法なものだ」と述べた。

梓澤弁護士はまた、「このまま大学設置審や文科大臣が4条件を満たしているかどうかを審査せずに設置認可をしたとすれば、それも違法・無効となる」
とした。

民進党の山井和則国対委員長は「この間、安倍首相と加計理事長は14回の会食と4回のゴルフをやっているズブズブの利害関係者。首相がこの決定に参加していること自体が国家戦略特区法違反になる」と指摘。両弁護士も「公正さは担保されない」と応じた。

(片岡伸行・編集部、9月8日号)

福島原発事故刑事訴訟への「印象操作」払拭するパワポ公開

9月2日、東京・芝浦の田町交通ビルで「東電元幹部刑事裁判が始まった! 9・2東京集会」が開かれた。

福島原発刑事訴訟支援団と福島原発告訴団が共同で主催したこの日の集会の最大の目的は、報道やネットを通じて再三流される「津波は防げなかったのだから、罪には問えない」「検察が起訴できなかったのに、有罪にできるわけがない」といった類いの「印象操作」を否定・払拭することだった。

集会では、同告訴団の弁護団を務める海渡雄一弁護士がパワーポイントを使い、6月30日に開かれた初公判で明らかになった事実を解説。2006年以降、東電社内では10メートルを超える大津波への対策が検討され、09年6月までにその対策を完了させる計画があった事実や、その後、この計画が先送りされて葬られた事実。そして検察や政府事故調査委員会はこうした事実を把握していながら隠蔽し、不起訴処分としていた事実などが紹介され、海渡弁護士は「このパワポのデータは皆と共有する。これを使って誰でも説明できるようになってほしい」と訴えた(パワポのデータはURL https://shien-dan.org/20170902action-report/で公開中)。

同告訴団の刑事告訴が東京地検で不起訴処分とされた際、同告訴団側は担当検事から「防潮堤は南側だけに作る計画で、たとえ作っていたとしても事故は防げなかった」「防潮堤の完成予想図もなかった」などと説明されていた。だが初公判では、原発の敷地を取り囲む防潮堤の立体図が登場。検事の説明が虚偽だったことが判明している。ここにきて同原発事故は「捜査結果隠蔽事件」の様相を呈してきた(この隠蔽についての詳細は海渡氏らの共著『強制起訴 あばかれた東電元最高幹部の罪』〈Kindle版・金曜日〉参照のこと)。

(明石昇二郎・ルポライター、9月8日号)