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安倍政権は「株式市場の良識」を崩壊させた(鷲尾香一)

加計学園問題とは何か。

文部科学省が、獣医師が過剰になることを理由に半世紀以上も既存の大学以外に獣医学部を新設することを認めずに定員を規制していた中で、通常の行政ルートではなく国家戦略特区の仕組みを使って獣医学部の新設を認めようとしたものだという解説がある。

また一方では、政治家なのだから政策実現のために政治力を行使することは何らおかしいことではなく、当然のことであると安倍晋三首相を擁護する向きもある。

しかし少なくとも、加計学園問題は株式市場に計り知れない悪影響を与えてしまったようだ。

これまで株式市場関係者からは「株式市場は安倍政権に全幅の信頼を置いているので、株価が大きく下落することはない」という声が多く聞かれていた。

ある株式投資専門紙の社説は「株価は政権交代を明確に対比できる数字の一つ。民主党政権の厳しい時代から日経平均株価を倍以上に伸ばし現在進行形で結果を残している点を評価する投資家は多く、(安倍政権を)支持しない理由はない」と主張していた。

筆者が驚かされるのは、この社説が「加計学園問題やPKO(国連平和維持活動)日報問題などは何が違法なのかはっきりしない」とし、加計学園問題やPKO日報問題で無駄な時間を使うなら経済政策を進めるべきと主張していることだ。

株式投資専門紙であるのだから「国を監視する機能」が求められるジャーナリズムとは存在理由が違うという理屈はわかる。しかしその主張は、あまりにも身勝手で稚拙だと言わなければならない。

ところが、株式市場そのものが、この専門紙の主張を裏付けるような動きを見せる。加計学園問題や日報問題の不透明さには無反応なのに、7月27日に民進党の蓮舫代表が辞任表明をすると、日経平均株価は上昇したのだ。ある株式市場関係者は「蓮舫代表の辞任を好感した」と説明する。

市場取引は、それが公正で透明であって初めて参加者が安心して参加する。公正性や透明性を担保しているのはルールがきちんと説明されているかどうかだ。

政治も同じだろう。政治家、政党、役所それぞれに権力があるからこそルール厳守が求められるのであり、もしどこかに不公平や不透明さがあれば、国民に対する説明義務が発生する。

だから安倍首相や「腹心の友」である加計孝太郎理事長には、国民に対して丁寧に説明する義務がある。それが国民の信託(忖度ではない)を得ることにつながる。

株式市場がもっとも忌み嫌うべき「不透明さ」を、政治の世界では良しとしてしまう姿勢は、株式市場を不健全なものにしかねない。

株式市場は、アベノミクスによって日本銀行が実施してきた金融緩和の恩恵を得ている。特に、日銀のETF(上場投資信託)買い入れによる株式購入は、株式相場を下支えしてきている。

市場関係者の多くは、相場が下落すると日銀のETF買いに期待する。それによって株式市場が持つ本来の経済的機能などが壊されているにもかかわらず。

どうやら、安倍政権=アベノミクスは、「株式市場の良識」までをも崩壊させてしまったようだ。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト。8月18日号)

裁判を受ける権利を侵す 再審請求中の死刑執行に非難の声

金田勝年法相(当時)が命令した7月13日の死刑執行に抗議する集会(主催=死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90など5団体)が同27日、東京都内で開かれた。執行された2人のうち1人は再審請求中、もう1人は自ら控訴を取り下げて裁判員裁判による判決が確定していた。ともに憲法32条の裁判を受ける権利を侵すとして、執行を強く批判した。

死刑を執行された西川正勝さん(執行時61歳)は、5月にした再審請求について裁判所から意見を求められ、回答の準備中だったという。金田法相は記者会見で「再審請求を繰り返す限り、永久に死刑執行をなしえない」から「棄却されることを予想せざるをえないような場合は、死刑執行を命ずることもやむを得ない」と説明した。

しかし、二審の弁護人だった小田幸児弁護士によると、西川さんは再審の請求理由としてMCT118型と呼ばれるDNA鑑定のおかしさを挙げていたようだった。この手法は精度が低く、足利事件(再審無罪)では冤罪の原因になっており、「この部分の再審の可能性はあった」と指摘した。

安田好弘弁護士は、(1)再審請求中の死刑執行は控えるのが刑事訴訟法の趣旨、(2)同一理由での再審請求は禁止されており永久に執行できないわけではない――と金田法相に反論した上で、「再審の可否は裁判所が判断するのに、政策論で執行したのは三権分立に反する越権行為だ」と非難した。

もう1人の住田紘一さん(執行時34歳)の事件は被害者が1人で、本人に前科がなく、上級審で減軽される可能性があった。弁護人が控訴したが、翌月、本人が取り下げて死刑が確定した。

一審の主任弁護人だった杉山雄一弁護士は「過去の最高裁判例に照らしても上級審で改めて厳密に審査されるべきだった」との声明を寄せ、死刑事案では必ず高裁や最高裁の審理を受ける「必要的(自動)上訴制度」の導入を訴えた。

(小石勝朗・ジャーナリスト、8月18日号)