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菅義偉内閣官房長官は“はなたれ小僧”か(西川伸一)

第3次安倍晋三内閣の第3次改造内閣が8月3日に発足した。首相の大叔父にあたる佐藤栄作元首相は「内閣改造をするほど総理の権力は下がり、解散をするほど上がる」と言ったとされる。首相の求心力の低下は否めない。「各派が希望した初入閣待機組のほとんどが登用されず、党内には不満が充満している」という(8月4日付『朝日新聞』)。

今回の内閣改造で私が最も注目したのは、内閣人事局長の人事である。中央省庁の幹部職員の一元管理などを目指して、2014年5月、内閣官房に内閣人事局が設置された。初代局長には当初、事務担当の内閣官房副長官である元警察官僚の杉田和博氏を充てる予定であった。これにも政治家を据えては、政治主導がいきすぎると懸念されたためである。

そのはずが、発足直前になって政務担当副長官の加藤勝信衆院議員にすげ替えられた。トップが事務副長官では、政治主導の威令が行き届かないと菅義偉内閣官房長官が考え直した(14年5月21日付『日本経済新聞』)。

政務副長官には衆参両院議員から各1名が起用される。加藤官房副長官は、15年10月の第3次安倍内閣の第1次内閣改造に伴い、萩生田光一衆院議員に交代した。内閣人事局長も萩生田副長官が兼務した。首相の最側近である萩生田氏が内閣人事局長に座る。この含意は官僚たちに「忖度」を働かせる十分な動機づけとなったことだろう。たとえば、「森友」問題に関する国会質疑で、「記録に残っていない」と答弁して「殊勲(しゅくん)甲(こう)」の佐川宣寿・財務省理財局長は、17年7月5日付で国税庁長官に栄進した。

さて、このたびの人事で萩生田氏は自民党幹事長代行に転じた。そして、後任の内閣人事局長には事務副長官に留任した杉田氏が就いたのである。野党が「加計」問題と絡めて、「人事権を政治家が握ることで官僚が首相官邸の意向を過剰に忖度している」などと政務副長官との兼務を問題視していた(8月4日付『読売新聞』大阪版)。菅官房長官は萩生田氏のことを「局長として適切に業務を行った」とかばった(8月5日付『岩手日報』)。ならばなぜ局長を事務副長官兼務に代えたのか。

内閣改造の前日、福田康夫元首相が「共同通信」のインタビューで吠えた。内閣人事局については「政治家が人事をやってはいけない。安倍内閣最大の失敗だ」と強く批判する。その結果、「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている。官邸の言うことを聞こうと、忖度以上のことをしようとして、すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ」とたたみかける。

首相の政権運営にも「(自民党内に)競争相手がいなかっただけだ。(脅かすような)野党もいないし、非常に恵まれている状況だ。そういう時に役人まで動員して、政権維持に当たらせてはいけない」と容赦ない(8月2日付「共同通信」配信記事より)。

福田氏の官房長官在任日数は1289日に及ぶ。菅・現長官に抜かれるまで最も長かった。政官関係を知りぬいたゆえの直言だろう。御年81歳の福田氏からみれば、68歳の菅官房長官など「洟垂(はなた)れ」なのかもしれない。大先輩の忠告に耳を傾けよ。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。8月18日号)

上関原発計画の漁業補償金受取めぐり、祝島漁民が地裁に仮処分の申し立て

6月20日、山口県漁協本店前。左から、祝島支店の清水敏保さん、本店職員、祝島支店の橋本久男さん、同竹谷芳勝さん。(提供/山秋真)

上関原発計画に35年間抗い続けている山口県祝島の漁民たち。その山口県漁協祝島支店の正組合員2人が7月4日、山口地方裁判所岩国支部へ仮処分の申し立てを行なった。同支店の5月10日の組合員集会で提出された「修正案」について、6月14日に組合員へ配られた書面議決書による採決の禁止を求めるもの。「修正案」は、同支店の昨年度の赤字補填に、上関原発のための漁業補償金を充てたい、その手続きとして総会の部会の開催を本店へ請求してほしい、という内容だ。

この漁業補償金は上関原発の建設と運転への同意を謳う契約に基づくため、同支店(旧祝島漁協)は受けとりを17年間拒んでいる。13年2月に受けとり賛成を議決と報じられるも、過半数である31人の正組合員が翌3月、受けとらない旨、1人1枚の書面に署名捺印して本店へ提出。だが本店主導で補償金の配分案が作られ、採決を迫られた。島ぐるみで原発計画に抗う祝島は混乱したが、15年4月の配分案否決で収まった。

ところが、先述した今年5月の集会で本店の幹部が、「修正案」を出すよう一組合員を促しつつ「定款規約の定めでその場で採決が必要」と介入。6月14日には「修正案」への賛否を問う文書と書面議決書が組合員へ配られた。差出人は山口県漁協祝島支店「運営委員長兼組合員集会議長 恵比須利宏」、提出期限は6月21日、返送先は同支店か光熊毛統括支店。

だが恵比須さんは「この文書を作っていない」と明言したと、本人に尋ねた組合員が話す。彼は祝島支店の運営委員長を5月の集会終了時に辞めたうえ、議長の任は集会終了までだ。この文書は内容に虚偽があり、それに基づく書面議決書は無効だと、同支店の運営委員・岡本正昭さんと橋本久男さんは回収しようとした。その際、提出された書面議決書がすべて光熊毛統括支店にあると判明。「祝島の組合員集会のことだから、祝島支店で保管する」と6月19日、ふたりは同支店の竹谷芳勝支店長とともに光熊毛統括支店へ行き、書面議決書の回収を求めた。

だが「本店の許可なく返せない」と拒まれ、翌20日は本店(下関市)へ行き、仁保宣誠専務理事らと祝島支店側が面談。本店は書面議決書を有効と主張したが、「作成したのは本店」と認めた。祝島支店の運営委員会に知らせずに配布せよと、本店が指示したことも分かったという。

【今なお蠢く新規の原発計画】

なぜ運営委員会に知らせなかったか。5月の集会の最後に「修正案」は継続審議にすると議長が宣言し、出席者から異論もなかった、それは、「会は、その議決により続行することができる」と定める定款に則ったに等しく、「修正案」は継続審議になった、議事録にもそう記載されたからと本店は説明したという。

だが、「出席者からの異論は出ていた。目下、集会を録音した音源と照合して議事録案を確認中で、議事録も未承認だ」と橋本さん。一行は山口県農林水産部団体指導室へも走り、県漁協への指導を要請した。事前に通知された事項につき、集会開始前に提出する旨を定款規約に定める書面議決の濫用等を訴えたが回答は「権限外」。

6月21日の提出期限直前、「開票は強行せず、協議して実施」と関係者が祝島で合意した。

しかし中国電力は6月30日、この状況のもと上関原発の予定地で追加ボーリング調査を開始。7月4日の仮処分の申し立ては、こうした経緯で行なわれた。

翌5日、「司法の判断が出るまで開票しない」ことを関係者が合意。8月24日に審尋の予定となり緊張感が漂う7月18日、祝島支店運営委員の補欠選挙があった。旧祝島漁協の元組合長ら4人が棄権、白票1人という異例の状況で、先の「修正案」を出した組合員が当選。幼い子をおいて原発問題で駆け回った女性は「私らからすれば3日前のような最近に加入した人」の当選を嘆いた。3・11の東京電力・福島原発大事故から7年目。新規の原発計画が今なお蠢いている。

(山秋真・ライター、8月18日号)