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執行部の独走に不満爆発で連合「残業代ゼロ法案」容認を撤回

高収入の専門職の人を労働時間規制の対象から外す、「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を盛り込んだ労働基準法改正案。労組の中央組織「連合」は、同法案の修正を巡る政府、経団連との合意方針を撤回し、反対の立場に回帰した。「残業代ゼロ法案」と批判してきた姿勢を一転、政府と手を握ろうとした執行部に内部から激しい不満が噴き出し、組織がもたないと判断したためだ。

「皆さんにご迷惑をおかけし、混乱を招いて申し訳なかった」

7月27日午前、札幌市であった連合の臨時中央執行委員会で、神津里季生会長と逢見直人事務局長は深々と頭を下げた。そして神津氏は政府や経団連との修正合意を見送る方針を示し、了承を得た。

神津氏は7月13日に安倍晋三首相と会い、法案への賛成を前提に「年間104日以上の休日確保の義務づけ」といった修正を求めた。だが「労働者保護につながる」との釈明は、傘下の労組や、反対で足並みをそろえてきた民進党に受け入れられず、「微修正で方針を変えるのか」と突き上げられた。高プロ容認の方針はわずか2週間で撤回に追い込まれた。

混乱の要因は、首相とのパイプを持つ連合のナンバー2、逢見氏が春から始めた秘密裏の対政府交渉を、組織にも黙したまま一手に握ってきたことだった。神津氏でさえ詳細を知ったのは5月という。「安倍一強」の下、連合の政策実現に向けて政権との協調路線に舵を切ろうとしたようだ。

しかし、執行部の「独走」が明るみに出た7月は、学校法人「加計学園」の問題などで内閣支持率が急落した時期と重なった。「高めの球でなく、ある程度合意を読んだ」。修正案に関するそんな逢見氏の説明も火に油を注ぎ、「下り坂の政権にすり寄る必要はない」との批判を招いた。内紛は10月の人事にも波及し、逢見氏が神津氏の後任に就く当初の構想は霧消した。神津氏の続投案にも「執行部総入れ替えが必要」(傘下労組幹部)との異論が出ている。

連合は、修正要請自体は取り下げないという。菅義偉官房長官は27日の記者会見で「要請は重く受け止める」と述べ、柔軟に対応する考えをにじませた。それでも政権に陰りが見えるなか、成立への道筋は不透明さを増している。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、8月4日号)