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ヒロちゃんのほんと(小室等)

近所でヒロちゃんのライブがあるよと言うので、娘夫妻とうちのかみさんと連れ立ち、7月17日、埼玉県・フォーシーズンズ志木ふれあいプラザに行ってきた。恒例の紀伊國屋ホールとは一味違って、志木おやこ劇場主宰の女性連に囲まれ、会場もヒロちゃんのパフォーマンスも手作り感漂うライブだった。近刊絵本『憲法くん』(絵・武田美穂)を紹介しながら、いつものように政治ネタで大いに笑わせ、会場は爆笑の渦。

圧巻は、三上智恵監督作品の記録映画『標的の村 風(かじ)かたか』の語り。高江で強行されるオスプレイのヘリパッド建設に抵抗する住民。若い機動隊員とデモに加わった若い女性が、互いに目をそらさずにらみ合いを続けるが、たまらず若い機動隊員が目をそらすシーンのヒロちゃんの表現が圧巻だ。

次にヒロちゃんの話は永六輔さんの一生を駆け抜ける。ヒロちゃんの話に笑わされ、泣かされ、ほとんど知っている話なのに、永さんの身に起きたことをヒロちゃん流につなげていくから、まるではじめて永さんに出会っている気がしてくる。ヒロちゃん、芸というのはすごいね。いや芸がすごいのは言うまでもないことだが、実際のところ、ヒロちゃんと僕が同じ出来事を、同じように見ているとは限らないものね。

それで思い出したけど、中津川・全日本フォークジャンボリーのステージジャック小室等犯人説というのがある。先だって亡くなられたフォークジャンボリーの仕掛け人のひとり笠木透氏は、長い間小室犯人説を信じていたようだ。

なんの犯人かというと、ジャンボリーの運営に不満を感じた一部の観客にステージジャックされ紛糾した1971年のフォークジャンボリーで、その観客を挑発煽動した犯人は小室だというのだ。

たしかに、サブステージでいまや伝説となっている吉田拓郎の「人間なんて」絶唱を収拾させるため、観客に向かって「そろそろみんなでメインステージに行こうぜ!」と叫んだのは僕だったかもしれない。だからと言って、煽動したのは小室だなんて。あれ、この話、前にもしたかな。

ヒロちゃんの話に戻ろう。ヒロちゃんが映画を語るのは、マルセ太郎さんの「スクリーンのない映画館」のヒロ版だね。ヒロちゃんの語りを聞き、僕は映画を観たいと思った。観た結果、違う感想になることもよくある。が、かまわないのだ。マルセ太郎さんの『生きる』はマルセさんの、黒澤明監督の『生きる』は黒澤監督の、それぞれのほんとがあるのだ。ヒロちゃんのほんとは観たから、三上監督のほんとも観に行かなくちゃ。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、7月28日号)