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まともなり、亀井静香(佐高信)

拝啓 亀井静香様

ごぶさたしていますが、お元気のようですね。亀井さんの独特の声が聞こえてくるような岸川真著『亀井静香、天下御免!』(河出書房新社)を拝読しました。

社民党の福島みずほさんは、郵政民営化に反対して亀井さんが自民党を追われた時、
「亀井さんと私には共通点が三つしかない。つまり、郵政民営化反対、義理人情、死刑廃止だけですね」
と言い、亀井さんに、
「三つも一緒だったらいいじゃないか」
と返されたそうですね。

違いを挙げたがる革新と、何でも包み込む保守の特質を象徴しているような会話で、おもしろいと思いました。

学生時代に合気道に熱中する一方で椎名麟三や野間宏らの戦後派文学に傾倒していたというのはちょっと意外でしたが、警察に入った亀井さんは「あさま山荘事件」の後、いわゆる過激派のリーダーの森恒夫や永田洋子の取り調べを担当して、こう考えたとか。

「森は完全黙秘だったが物凄い迫力だった。なぜ、こういう自分を捨てることが出来る若者が極左活動に走っていくことになったのか。その疑問に沈みました。初めてそこで政治の責任を痛切に感じましたね」

自民党、社会党、新党さきがけの自社さ政権を支えた亀井さんは村山富市さんに惚れたとして、こう言っています。

「村山さんは俺が経験した首相の中で最高の人物だと思いますよ。これは閣内で支えた小里貞利や野中広務をはじめ関わった誰もが言うはずです。すまし屋の橋龍だってご多分に漏れないね」

別れた妻がホリエモンに野次

森友学園や加計学園の問題で官僚論が云々されている時、亀井さんの次の指摘にも頷かされます。

「役人の使い方は官僚本人を納得させること。官僚は威張りたくてなったのは少ない。公の仕事をしたい。だから自尊心を燃やしてやれば頑張りますよ。押し付けは逃げられる。納得させることが肝要なんです」

亀井さんは小泉(純一郎)首相がイラクへ自衛隊を派遣することに反対しました。加藤紘一、古賀誠両氏と共にです。アーミテージらネオコンにもこう言ったそうですね。

「軍事力を絶対に行使すべきではない、それはアメリカにとっても世界にとっても間違いなく不幸なことになる。私がお巡りさんをやっておったから言うわけじゃないけれど、たしかに市民は得手勝手でワガママである。しかし、その市民の支持と理解を得なければ、警察の仕事は成り立たんと思っています。アメリカが世界の警察官を自任して自らの犠牲においてそれをやろうとするのであれば、我々は感謝します。しかし、そのためには世界から支持されるということがなければ、人類にとってもプラスにもならないし、アメリカにとってもいいことにはならんと思う」

郵政選挙ではホリエモンこと堀江貴文を刺客に立てられたわけですが、別れた妻がわざわざ尾道まで来て、ホリエモンの演説に物凄い野次を飛ばしていたと聞いたそうですね。

「警察時代にあれだけ夫婦仲も悪かったのに、人生というもんは分からんもんですよ」

この述懐に私はウーンと唸りました。次の覚悟にも拍手を送りたいと思います。

「絶対、子たちには継がせない。妻も苦労して、ゼロから築き上げた支持地盤ですけど、継がせる気はさらさらねえな。どうしてもやりたいなら他所でやれ。選挙区は個人の持ち物ではありません」

山城新伍さんが『実録・自民党』で亀井さんを演じたいと言っていたというのも、なるほどと思いました。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、7月28日号)