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先祖の遺骨返還めぐり政府がアイヌの対立引き起こす

人種差別主義の解剖学者らが墓を暴くなどして集めた大量のアイヌ遺骨を、全国の大学・博物館などが長らく放置している問題をめぐって、北海道内で動きが激しい。

旭川アイヌ協議会(川村兼一会長)は7月13日、北海道大学が保管する旭川市内出土の遺骨2体の返還と損害賠償を求めて、旭川地裁に提訴した。また日高地方のアイヌたちがつくるコタンの会(清水裕二代表)は、新ひだか町内の旧墓地から持ち去られた遺骨約200人分の返還を求めて近く同大学を提訴する、と明らかにした。

これまでの同様の訴訟では、和解協議を経て道内3地域のアイヌコタン(地域グループ)に計約100体の返還が決定。昨年7月の浦河町に続き、今年は浦幌町と紋別市で再埋葬・納骨が実現する。

一方政府は、全国の大学や博物館に残る計1676体と個体分離不能な382箱分のアイヌ遺骨を、東京五輪に合わせて白老町に新設する国立施設に再集約した後、整理し直して各地域に戻す、という手順を決めた。ただし期限は示されず、一刻も早い先祖の帰還を望む各コタンにすれば、訴訟が最善手であることは間違いない。

複雑なのは、有力なアイヌ団体である公益社団法人北海道アイヌ協会(札幌)が各コタンの提訴に否定的なこと。内閣府アイヌ政策推進会議メンバーを務める阿部ユポ・同協会副理事長は6月、平取町内で開かれた講演会で政府手順を肯定したうえ、「(会議を通して国の謝罪・賠償を求めている最中なのに)裁判をやられると我々が介入できない」と原告らを批判。同調する新ひだかアイヌ協会が、コタンの会に提訴中止を求める騒ぎに発展している。

アイヌ同士をこんなふうに対立させてしまう日本の先住民政策は、「先住民族の権利を尊重し促進する緊急の必要性」をうたう国連先住民族権利宣言(2007年)とは依然、正反対の極にある。

(平田剛士・フリーランス記者、7月21日号)