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東京都議会を仕切るのは公明か(西川伸一)

2017年7月25日4:28PM

7月2日投開票の東京都議会議員選挙は、自民党の歴史的惨敗と小池百合子東京都知事率いる都民ファーストの会の圧勝で幕を閉じた。自民党は過去最低の23議席を獲得したにとどまった。一方、都民ファーストの会は擁立した50人の候補者のうち49人が当選するという快挙であった。

7月3日付『読売新聞』「社説」は、「安倍首相は、今回の敗北を重く受け止め、政治姿勢を真剣に反省しなければなるまい」と書いた。そのとおりで、上記の結果はこの選挙が安倍晋三政権への「懲罰投票」だったことをよく示している。

久しぶりに胸がすく思いがしたが、溜飲を下げてばかりもいられない。有権者が政権への不満を都議選ではらした「ねじれ」を冷静に考えるべきだろう。「自民対小池」の劇場型選挙の中で、都議選として本来問われなければならない都政の問題が、無残なまでに埋没してしまったからだ。

立候補した自民党現職議員49人のうち28人が落選した。彼らの中には、地域が抱える問題に熱心に取り組んできた議員も少なからずいたはずである。その業績評価ではなく、しかも彼らのあずかり知らない「安倍政権の驕りと緩み」(前述の『読売』「社説」)のために落選の憂き目にあった。地域での地道な議員活動が報われず、「東京大改革」との空疎なスローガンが巻き起こした「風」になぎ倒されてしまった。こんな議員には心から同情する。政権が掘った墓穴に地方議員がはまったようで釈然としない。

言い換えれば、今回の都議選は(「も」か?)「記号」をめぐる争いだったのだ。多くの有権者は個々の候補者を吟味して投票したわけではなく、「都民ファ」「自民」「小池」「安倍」といった「記号」を意識して投票したのではないか。都議選が終わるとすぐに小池知事が都民ファ代表を辞任してしまったことは、この点を象徴している。

ここで、都民ファーストの会公認で立候補して当選した議員たちの属性をみてみよう。49人中実に38人(77・6%)が新人議員である。当選2回が8人、当選3回が3人となる(選挙後に、都民ファは推薦して当選した無所属議員6人を追加公認したので、都民ファ所属都議は55人になった)。

このようないびつな議員構成を抱えて、都民ファは党内をガバナンスできるのか。また、圧倒的第1党として都議会を円滑に運営できるのか。かつて大阪維新の会が大阪市議会に大量進出したとき、多くが新人の彼らに代わって公明党議員が市議会の「仕切り」を担ったそうだ。大阪選出のある公明党国会議員から聞いた話である。都議会でもその再現になりかねない。

さらに、都民ファ新人議員38人の経歴に着目すると、彼らのうち25人には区議や市議の経験がない。地域の事情にほとんど通じていない彼らが、都議としての職責を果たしていけるのか。「風」が凪いで化けの皮を現すことを強く懸念する。7月6日付『朝日新聞』によれば、都民ファは議員に対する研修会を週2回程度開いていく予定というが。

とまれ、安倍政権や自民党への支持は決して強固なものではないことがわかった。「魅力」ある受け皿さえ用意されれば民意は簡単に離れてしまうのだ。ただしその「魅力」が見かけ倒しならば、落選議員は浮かばれまい。

(にしかわ しんいち・明治大学教授。7月14日号)

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