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“公害の原点”水俣病の裁判で「画期的」な判決

2017年6月23日11:27AM

「判決は画期的」と喜ぶ大川一夫弁護士。大阪市北区。(撮影/粟野仁雄)

公害被害者が行政裁判で賠償金を得たことを理由に加害企業が補償協定を結ばないのは不当だ、として水俣病患者の2人の遺族が原因企業チッソに対して補償を受ける地位の確認を求めていた裁判。

大阪地裁の北川清裁判長は5月18日、「確定判決を得たことを患者に不利に解釈するのは相当とは言えない。賠償後に対象外とするのは協定の趣旨に反する」として原告の訴えを認めた。患者が国や自治体相手の裁判で勝訴していることを逆手に取って救済を拒否する企業を指弾した注目すべき判決である。患者の男性は2007年に、女性は13年に死去している。

補償協定は1973年に認定患者と、当時の三木武夫環境庁長官などの仲介によりチッソとの間で結ばれた。最低でも1600万円の一時金や医療費、年金などが支給され、締結後に患者認定された人にも適用するとされた。しかし2人は患者認定されず、水俣市などから関西に移住した患者たちが国と熊本県を訴えた「水俣病関西訴訟」に参加。04年に最高裁で勝訴が確定し1人650万円の補償を受けた。死後に熊本県から患者認定されたが、チッソ側は「関西訴訟で全損害が補償されており、解決済み」として2人が協定に参加することを拒否してきた。

今回の判決で北川裁判長は補償協定について「チッソが甚大な被害をもたらした反省から損害賠償として認められる程度を超えた救済を行なうと定めたと解すべき」とした。原告代理人の大川一夫弁護士は「同様の訴訟で敗訴した件もあったが、補償協定の趣旨をしっかり捉えた画期的な判決」と評価する。

水俣湾に有機水銀を垂れ流した化学会社のチッソは事業部門を子会社へ移し、チッソ(株)は補償業務を専門にする。チッソは5月31日、判決を不服として控訴した。水俣病の公式命名から今年で60年。「公害の原点」は終わらない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、6月9日号)

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