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塩崎厚労相の会話メモ入手! 受動喫煙防止で自民が激烈な多数派工作

2017年6月1日10:22AM

「幅は、厚労省案と分煙派の間の案です。まとまらなければ、自民党は今国会で出せなかったということになる。WHO(世界保健機関)基準はなんとか守れる法案を出したい。努力させてほしい」

5月15日の夕刻、約3カ月ぶりに開催された自民党の厚生労働部会(渡嘉敷奈緒美部会長)は、厚生労働省が示す受動喫煙防止強化案を自民党たばこ議連(会長は野田毅前税調会長)の溝が埋まらず、「原則禁煙」とする修正案は了承されぬまま終わった。上記の発言は、部会の終了間際、田村憲久政調会長代理がこぼした弁。

その田村氏は部会の冒頭、こう切り出していた。

「このまま受動喫煙防止の法律が提出できないことになれば、自民党は何もできない政党になる」

部会は最初から最後まで平行線をたどったということだ。

受動喫煙防止の対策強化案について、飲食店を全面禁煙とする案をかかげる厚労省と、それを阻止せんとする自民党たばこ議員連盟の攻防については小誌4月21日号等で詳説した。

両者一歩も譲らぬ状況が続く5月8日の昼、東京都内のホテルではインナー(重要メンバーだけの会議)が開催された。

茂木敏充政調会長、田村政調会長代理、渡嘉敷部会長に加え、厚労省案批判の急先鋒である野田たばこ議連会長、超党派の「東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟」の尾辻秀久会長らだ。

ここで確認されたのは、屋内禁煙を原則としつつも、小規模飲食店については「喫煙」「分煙」の表示があれば喫煙を認めるという妥協案。厚労省は床面積30平方メートル以下のバーやスナック以外は屋内全面禁煙を掲げてきただけに、翌日の各紙には「厚労省案を骨抜き」という見出しが躍った。

インナーの結果について、田村氏が塩崎恭久厚労相に報告した際の電話記録を小誌は入手した。

塩崎大臣が「それは党としての決定か?」と聞くと、田村氏は「党というより、政調会長と両議連の代表が合意した」と答えに窮している。これに塩崎厚労相は「まともな議論をしたことがない」「部会もやっていないではないか」「部会を開くと約束したはずだ」と憤っている。最後は田村氏が「こんなことになると思っていなかった」とボヤき、電話は終了した。

ちなみに8日の夜、番記者から「受動喫煙はまとまりましたか?」と問われた菅義偉官房長官は、無愛想に一言、「知らない」とだけ言い放っている。

それから15日の部会開催まで、双方の多数派工作は激越を極めた。その模様を物語るやりとりメモがある。ある厚労族議員と厚労官僚で交わされた会話だ。

厚労族議員 自分は厚労省の案でいいと思っているんだが、田村先生から口封じの電話があった。表立った厚労省案賛成派に電話しまくっているのではないか。その電話の趣旨というのは、自民党の考えを作って固めれば厚労省は従わざるを得ないだろう、ということ。田村先生はそれでいいと思っている。恥をかくのは自民党だよ。

厚労官僚 官邸はどうなのでしょうか。

厚労族議員 官邸だって恥をかくだろうさ。

【丸川大臣を出席させず】

15日の厚労部会を議員だけのクローズ状態にした時点で自民党はすでに恥をかいている。

渡嘉敷部会長は部会終了後、メディアに向けて「今国会への法案提出はかなり厳しい状況になってきた」と他人事のように語ったが、部会が3カ月も開催されなかった理由は、渡嘉敷部会長に部会を開くだけの度量がなかったとしか言いようがない。

渡嘉敷氏は「部会に出席したい」と考えていた丸川珠代・東京オリンピック・パラリンピック担当大臣の出席をも拒んだ。「塩崎厚相を孤立させるためだろう」というのが周囲の一致した見方だ。

「閉ざされた自民党」が復活しつつある。

(野中大樹・編集部、5月19日号)

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