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自民党内で波紋呼ぶ小泉進次郎氏の「こども保険」

2017年4月28日4:39PM

教育無償化の財源として、自民党の小泉進次郎農林部会長らが提言した「こども保険」が政官界で波紋を呼んでいる。同党が財源を「教育国債」で賄う案を検討し始めた矢先に、小泉氏が対案をぶつけてきたとみられているためだ。小泉氏らは国債発行には否定的なうえ、思い描く無償化の対象も国債派とは食い違う。ともに教育無償化の推進を打ち出し、財源確保の必要性では一致していても、同床異夢というのが実情だ。

4月5日夕。

「自民党2020年以降の経済財政構想小委員会」の小委員長代行を務める小泉氏は、首相官邸に菅義偉官房長官を訪ね、こども保険について説明した。

「子どもは社会全体で支えていくという、政治の明確なメッセージを発信する必要があります」

こう切り出した小泉氏は、政府内の一部にある消費税増税で財源を調達する案を「税率10%になるのが2019年の予定。無償化のための増税はその先になります。時間は待ってくれません」と退け、菅氏から「しっかり受け止める」との答えを引き出した。

小泉氏らの小委員会が、こども保険構想をぶち上げたのは3月29日。小泉氏は「高齢者に偏る医療や介護は保険があって子育てにはない。世代間公平の観点から画期的だ」と訴えた。続けて「教育国債への対案」との見方は否定しつつ、国債発行を「将来世代へのつけ回しになる」と切り捨てた。

こども保険は少子化をにらみ、「子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクを社会全体で支える」仕組み。本人と事業主が給与の15%程度ずつ納めている社会保険料に、労使とも0・1%ずつ上乗せして保険料を負担する。自営業者らは国民年金保険料に月160円を加えて払う。これで年間約3400億円を確保し、小学校に上がる前のすべての幼児約600万人に月5000円を給付する。保育園の費用に充ててもらうことなどを想定している。将来、保険料は労使が0・5%ずつ負担し、給付を月2万5000円程度に増やすことで、幼児教育や保育の無償化を実現するという。

当面の0・1%アップなら、年収400万円の世帯で月240円程度の負担増。小泉氏は「0・1%を負担と思うような社会なら、とても子どもを社会で育てるなどと言えない」と語る。

【下村氏ら歩み寄りか】

こども保険は00年代初めに厚生労働省内で議論され、原案めいたものはできていた。しかし、保険なのに、子どものいない人や子育てを終えた人は保険料を取られるばかりで見返りがない点をクリアできず、日の目を見なかった。

この宿題は今も解けていない。小泉氏は「子どものいない人も将来、他の人の子どもに支えられる」と主張するものの、公的保険への考え方は自民党の専門家が集う厚生族内でも割れている。有力幹部の野田毅前税調会長は「子育て世代から保険料を集め、その人たちに配るなんておかしい」と周囲に漏らしている。また年金保険料を払い終えた高齢者からも、こども保険料を徴収するか否かなど、詰めるべき点は少なくない。

「(つけ回しの)赤字国債とどう違うのか」。麻生太郎財務相は3月31日の記者会見で、教育国債を真っ向から批判した。これに自民党の下村博文幹事長代行ら文教族は「無償化でより高度の教育を受けた子は、大人になればより多くの税金を払ってくれる」と反論している。当初、文教族は領分を荒らす小泉氏らに不快感を示していたが、ここへ来て「大学までの無償化には5兆円いる。教育国債もこども保険も両方やればいい」と歩み寄る姿勢を見せている。

とはいえ、こども保険は対象を幼児に限定しているのに対し、教育国債は大学などの高等教育の無償化を優先している。そもそも下村氏らの動きは、日本維新の会が改憲項目の一つに教育無償化を掲げ、これに安倍晋三首相が呼応したことがきっかけ。一方、小泉氏は改憲による無償化には慎重だ。こども保険、教育国債ともに実現のメドは立っていない。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、4月14日号)

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