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今村復興相を激怒させた記者が寄稿 原発事故「自主避難」者に対する国の責任とは

2017年4月24日12:03PM

4月6日、今村復興相辞任を求める署名を復興庁職員(左)に提出する避難者たち。(撮影/西中誠一郎)

「本日は歴史に残る日だと思います。福島第一原発事故で全国各地に避難した人々の生活再建を切り捨てようとする国や福島県。避難指示区域外からの避難者への住宅無償提供が、本日で打ち切られようとしています。住まいこそが生活再建のため、避難生活を続ける拠点です。こんな人道にもとる行為は他にない、断じて許すことはできません」――3月31日午後、東京・永田町の国会議員会館前に、福島県から各地に避難した人々やいわき市議、支援者らが緊急に集まり、抗議の声を上げた。

2015年5月「自主避難者の住宅提供を2017年3月末で終了する」ことが閣議決定され、翌月には福島県が「2017年3月末に、自主避難者への借り上げ住宅の無償提供を打ち切り、2020年までに県内外の避難者をゼロにする」ことを公表した。以来約2年間、「自主避難者」への「住宅無償提供打ち切りの撤回」を求める行動が日本各地で続いた。しかし「復興の加速化」「帰還の推進」を掲げる政府と福島県の対応に変化はなく、生活に困窮する避難者の当面の居住先を継続、確保するために、受け入れ先自治体に対して、避難者自身と支援者が協働で個別交渉を新たに開始、切迫した緊急事態が続いていた。

「連絡がとれなくなった世帯もある。これでは路頭に迷う避難者や自殺者が必ず出る」(「避難の協同センター」瀬戸大作氏)という状況に追い込まれる中、3月17日に全国約30カ所で起きている原発事故被害者の集団住民訴訟に先駆けて、国と東電の事故責任や住民避難の責任を認定する判決が群馬県前橋地裁で出た(国と東電、原告一部がそれぞれ控訴)。「路頭に迷う避難者をひとりも出さない」ためにも、国の責任は免れない。住宅無償提供の継続と、自然災害対策の「災害救助法」適用の抜本的な見直しが必要だ。

【筆者の質問に激怒】

そのような状況下、筆者は「今村雅弘復興大臣は『自主避難者』が置かれた現状を直視すべきだ」という思いで、4月4日の定例記者会見に臨んだ。久々に参加した復興相の記者会見だったが、復興庁には記者クラブも幹事社もない。大臣の冒頭発言が終っても1社からも質問が出ず、会見が終りそうになったため慌てて挙手した。その後のやり取りはメディアで数多く報道されてきた通りだ。

大臣自身の言葉で「自主避難」に対する国の責任を認めさせたい一念で食い下がったが、大臣が激怒するとは思いもよらなかった。動画撮影もしながらの質問だったが、インターネット放送「Our PlanetTV」で、すぐに編集してもらいネット配信したところ、「今村復興相発言の撤回と原発事故被害者への謝罪」そして「大臣辞任」を要求する署名活動がただちに開始され、わずか1日で2万8000筆を超える署名が集まった。

翌5日夕方には復興庁前で今村復興相の辞任を求める緊急行動が行なわれ、6日には首相官邸前での抗議行動や復興庁への署名提出を実施。避難指示が解除された浪江町からの避難者や区域外避難者も参加し、大臣か副大臣への直接面会を求めたが実現しなかった。

その後も連日のように復興庁前での抗議行動や緊急記者会見等が続き、今村復興相や菅義偉官房長官、安倍晋三首相も、国会内や福島県訪問時に、形だけは謝罪した。しかし「感情的になり、多くの避難者を傷つけたこと」は認めたものの、今村復興相の罷免は勿論、「自主避難者」に対する国の責任や、住宅無償提供打ち切りの撤回などは一切認めていない。「誠心誠意、福島復興のために寄り添っていく」というこの6年間繰り返してきた空疎な言葉を並べただけだ。今村復興相の辞任を求める声は日に日に大きくなっている。

今週中にも衆参両院で復興特別委員会が開催される。両院で区域外避難者を参考人として招致し、逼迫した避難生活の実情を国会内外で明らかにし、国の責任で、福島県内外での避難者用住宅の無償提供打ち切りを直ちに撤回し、「災害救助法」の運用を抜本的に見直すことが緊急に求められている。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、4月14日号)

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