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本当に安全ですか? 必要ですか? 新型タバコ

岡田幹治|2017年4月21日4:06PM

多くの人々を苦しめている「香害」。筆者はその実態を発売中の『香害 そのニオイから身を守るには』にまとめたが、その後も問題は絶えない。「香害」の最前線でどんな問題が起きているか、不定期の連載で報告します。

※このシリーズは問答形式にしました

――『読売新聞』『朝日新聞』など大手5紙の2016年12月27日づけ朝刊に掲載された見開き2面の全面広告には驚きました。
フィリップ モリス ジャパン(PMJ)が出した「新型タバコ」の広告ですね。「たばことは、ながく上手に付き合いたい。そんなあなたへ。」「たばことは、できるだけ距離を置きたい。そんなあなたへ。」とあったので、何の広告か、にわかにはわからなかった人もいたのではないでしょうか。

――新型タバコって何ですか?
PMJ、日本たばこ産業(JT)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)という世界の三大タバコメーカーが、日本で販売を始めた「非燃焼・電気加熱式タバコ(加熱式タバコ)」のことです(注1)。
3社の用具(本体)と製品(タバコ)はそれぞれ独自の工夫がされていますが、基本は同じです(表)。充電式電池を備えた用具に、葉タバコと添加物の成分から成る製品を挿入して加熱し、いぶり出されてくる「ニコチンを含む(煙ではない)湯気のようなもの」(注2)を吸いこんで、タバコの味を味わいます。

――よくわかりません。
先行しているアイコスで説明しましょう。紙巻きタバコと似た形の製品(ヒートスティック)には、細かく裁断した葉タバコが詰め込んであります。これを用具(アイコスキットのホルダー)に差し込み、ボタンを長押しして点火すると、10~20秒後に内部が摂氏300度になり、「湯気のようなもの」が出てくるのです。
12回または5分半ほど吸うと赤く点灯し、終了が近いことを知らせます。消えたら終了です。スティックを引き抜いて、燃えるゴミとして処分します。
味は紙巻きタバコとかなり似ているそうですが、スティック20本ごとに充電とクリーニングが必要なのが面倒なようです。しかも本体のリチウム電池の寿命が1年半ほどで尽きるので、そのたびに買い替えなければなりません。

――アイコスの売れゆきは好調で、PMJは販売中の紙巻きタバコをすべて新型タバコに切り替えてしまう戦略だと伝えられています。
たしかに売れゆきは好調で、紙巻きと新型を合わせたタバコ販売に占めるアイコスのシェアは昨年末には7%に達したとか。この業界で新製品が短期間にこれだけシェアを拡大するのは前例がないそうです。
路上禁煙にしている自治体や室内禁煙にしている事務所・飲食店でも、加熱式タバコは対象外にしているところがあります(注3)。販売急増の背景には、こうした事情もあるのでしょう。
ほかの2社も追随し、JTは2017年6月から東京で、2018年には全国で展開する予定。昨年12月に仙台での販売をはじめたBATも、全国展開の準備を急いでいます。

――ところで加熱式タバコは安全なのですか? 煙が出ず、灰が出ず、タバコの煙のニオイもなく、屋内環境に悪影響を及ぼさないと、PMJは発表しています。
国立保健医療科学院の欅田尚樹部長らがアイコスの主流煙(肺に吸入される煙)を測定したところ、ニコチン濃度はスティック1本(1立方メートル=㎥当たり)0・77ミリグラム(㎎)でした(注4)。
0・8㎎のメビウス(マイルドセブン)などとほぼ同じで、0・7㎎のメビウスライトよりは多量のニコチンを含んでいるわけです(だから愛煙者は満足する)。
葉タバコの燃焼で生じるタール(注5)はほとんど生成されませんから、アイコスは「低タール・高ニコチン」。即効性の非常に強い神経毒性をもち、依存症を発症させやすいニコチンはしっかり含まれています。
また欅田部長らの測定では、アイコスの主流煙には紙巻きタバコと同じように、発がん性の強い「ベンゾピレン」や「ニトロソアミン類」「アルデヒド類」も含まれていました。

――加熱式タバコには副流煙(火のついた先端から立ち上がる煙)はないでしょうが、呼出煙(喫煙者が吐き出した煙)に当たるものはあるはずです。
大和浩産業医科大学教授がアイコスについて「微小粒子状物質(PM2・5)」を測定したところ、吐き出された瞬間に口先30センチメートル(㎝)の位置で(1㎥当たり)2000マイクログラム(㎍=μは100万分の1)になりました(注6)。
吐き出された物質は部屋中に広がり、焦げたようなニオイが部屋中に広がりました。さらに空調を通して隣の部屋にも拡散し、仕事中だった同僚が「先生、焦げ臭いです。火事かもしれません」と飛び込んできたそうです(注7)。
以上の事実から大和教授は「屋内環境に悪影響を与え、周囲の人たちに不快な思いをさせるのは間違いない」とみています。

――JTのプルームテックはニオイがしないと聞きますが。
タクシー車内で吸われても、ニオイはしなかったと元運転手の井上順一さんは言っています(20ページ参照)。メンソール配合の銘柄を吸った場合、ミントのにおいが漂う程度のようです。
でも、これはある意味で恐ろしいことです。プルームテックを吸われても、周囲にいる人は(ニコチンに敏感な人以外は)わからないまま呼出される成分を吸い続ける可能性があるわけですから。都市ガスは漏れてもすぐわかるように、ニオイがつけてあります。有害物質が臭わないのは危険なことです。

――加熱式タバコは煙が出ないので、健康リスクが少なく、受動喫煙の危険もないと考える人が少なくないようですが、誤りですね。
その通り。加熱式タバコも紙巻きタバコと同じように、肺がん・脳卒中・心筋梗塞などの原因になる可能性があります。化学物質過敏症(CS)の発症・悪化の原因になります(注8)。
大和教授は「事務所や飲食店でも、住まいや車でも、閉鎖的な空間での使用は厳禁。吸うことが許されるのは、屋外の喫煙所だけにすべきだ」と主張しています。

――タバコはストレス解消に役立つので必要だと、多くの喫煙者は言っています。
喫煙によって解消するストレスは、体内のニコチン切れのストレスだけです。その他のストレスも解消されません。ニコチン依存は病気ですから、きちんとした治療を受けて治すことが肝心です。

(注1)新型タバコには、ニコチンなどを含む液体を電気で加熱し、気化した成分を吸う「電子タバコ」もある。日本では医薬品医療機器等法に触れるため製造できないが、個人輸入され、販売もされている。

(注2)「湯気のようなもの」をタバコ会社は「ベイパー(蒸気)」と呼んでいるが、科学的には「蒸気」ではなく「エアロゾル」(気体中の固体または液体の微粒子が分散し浮遊しているもの)である。

(注3)路上喫煙禁止条例を定めている自治体のうち、東京都千代田区などは新型タバコを禁止対象にしているが、千葉市などは対象外にしており、現状では対象外にしている方が多い。

(注4)欅田尚樹ら「非燃焼・電気加熱式たばこから発生する化学物質の分析」(『第75回日本公衆衛生学会総会抄録』)。

(注5)タールは有機物を燃焼した際に生成される黒褐色の油のような液体(混合物)で、数多くの発がん物質を含んでいる。ニコチン・一酸化炭素とともに、タバコの煙の三大有害物質とされている。

(注6)環境省が定めた大気中のPM2・5の「暫定指針値」は「1日平均値70μg(1㎥当たり)」で、これを超すと予想されるときは「不要不急の外出などをできるだけ避けるよう」呼びかけられる。

(注7)大和浩「新型タバコも屋内では使用してはならない」(『世論時報』2017年3月号)。

(注8)職場の受動喫煙によってCSが発症・悪化し、休職や退職を強いられた事例は少なくない。

 

(2017年4月21日号掲載)

 

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