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やさしさがない安倍外交(西谷玲)

2017年3月25日2:45PM

国会では森友学園問題が火を噴いている。野党は徹底的に追及すべきだ。外交に目を転じれば、トランプ米大統領と安倍晋三首相は先月の訪米で蜜月関係を築けたという。トランプの無茶苦茶にはまるで意見せず、「Trumpabe」(トランペイブ、トランプ=安倍)の様相である。

さて、外交のもう一つの懸案、安倍政権の行き当たりばったり、戦略のないさまがよく表れているもの……それは、日韓関係である。

「慰安婦」問題で象徴として建てられた少女像をどうするのか、解決が見えていない。昨年末に釜山の日本総領事館前にも少女像が設置された。日本はそれに抗議して、この1月に駐韓大使と釜山総領事を一時帰国させた。

その後どうなっているかと言えば、韓国外相が、少女像撤去を要請する文書を釜山市や同東区に送っている。が、何の効果もないどころか、今月1日の、日本統治下での大規模な独立運動の記念日である「3・1節」には、各地で新たな少女像の設置、除幕式が続々と行なわれた。さらに、今計画中のものもあるという。こんな状況で大使と総領事をまた派遣させるわけにもいかず、日本政府はまさに振り上げたこぶしのやり場に困ってしまっている状況である。

ご存知の通り、朴槿恵大統領はスキャンダルで弾劾訴追され、4月にも退陣、6月にも新たな大統領を選ぶ選挙が行なわれそうである。つまり、国政の混乱状況がずっと続いており、それまで現政権は当事者能力をとても持ちえない状態なのだ。しかも、次の大統領選では文在寅氏をはじめとして、野党の候補が勝つであろう可能性が高い。文氏は「慰安婦」問題に関する日韓合意を批判しており、少女像問題に対しても撤去の必要はないという意見である。

このような情勢のなか、大使と総領事を帰国させてしまったら、その後の落としどころに困ると予測するのは容易だっただろう。それなのに確固たる戦略もなく、行き当たりばったりで対応するからこんなことになるのである。

ある元外交官が言った。「安倍外交にはやさしさがない」。

こんな状況を生んだのは、まさにこのことに起因するのではないだろうか。毅然たる、決然たる、断固たる……そんな勇ましい言葉ばかりが躍る安倍外交。しかし、外交とは何枚腰、そして硬軟両様の使い分けが必要。さらに、人の心の重さをどう考えるか、どう見えるかがとても大切だ。外交だけでなく、政治全般がそうなのだが。

元「慰安婦」の人たちが何に怒っていて、何が赦せないかといえば、突き詰めていけば、やはり心の問題ではないだろうか。やさしさ、思いやり、心の底から悪かったと思う気持ち……。それが安倍首相に見えないというのである。

「慰安婦」問題について、歴代の首相はずっとお詫びの手紙を書いてきた。確かに一昨年末の日韓合意で日本は政府から10億円を拠出することに合意した。それは画期的には違いない。いつまで謝ればすむんだ、という声もわからないでもない。首相には「嫌韓」な人々の支持が多い以上(森友学園を見よ)、あそこまで譲歩したのも画期的であるともいわれる。それも理解したうえで、でも、心が必要なのだ。これは政治家でなければできないし、一流の政治家だったらできることだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト。3月10日号)

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