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消えた民進党の「2030年原発ゼロ」(高橋伸彰)

報道によれば、2月27日に民進党の蓮舫代表は今春の党大会における「2030年原発ゼロ」方針の表明を断念した。背景には同党の支持母体である連合の猛反発があったという。

実際、連合の神津里季生会長は本誌2月24日号のインタビューで〈最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざしていく必要がある〉と述べたうえで、〈そこに至る道筋で雇用や国民生活に与える影響を最小化していく努力は不可欠で、その間の再稼働はありうる〉という。原発ゼロの具体的時期には触れず、旧民主党時代に定めた2030年代(2030年ではない!)でさえ連合の方針よりも「踏み込んで」いると評するのだ。

民進党のエネルギー・環境調査会が、党大会に向け策定中の「原発ゼロ基本法案(仮称)」に「2030年ゼロ」を明記する考えを示したのは2月2日。そこから連合傘下の産業別労組へ理解を求める蓮舫代表の説明行脚が始まる。だが結局、合意は得られなかった。これに対し冒頭の断念が報じられた2月28日付『朝日新聞』(名古屋本社版)には「国民や労働者の生命、健康を守らずして何が労働組合か。労組のナショナルセンターとして失格と言わざるを得ない」という読者の声が掲載された。

この声を聞き改めて思うのは、かつての公害闘争で被害住民よりも企業側に立ち、公害の実態を隠そうとした大企業労組の姿勢だ。 公害研究者の宮本憲一は、公害が発生しても企業擁護にまわった労組を批判したうえで「水俣病の初期にチッソの労働組合が患者と対立し、四日市公害裁判を四日市労働組合評議会が提起すると三菱系企業労働組合が脱退したことなどは典型である」(『戦後日本公害史論』)と述べている。

前出の神津会長が原発再稼働の理由に挙げる「雇用や国民生活への影響」も、その主語は誰かと問えば、今回の福島第一原発事故で生業や生活を奪われた被災者よりも、傘下の電力総連を中心とする大企業労組を優先しているのは明らかではないか。

確かに、経営者と一体になって生産性を高め、そこで得られた付加価値の分配と組合員の雇用確保に専念してきた大企業労組にとっては、公害や原発事故の被災者、下請けや未組織労働者、地域住民は自分たちの雇用や生活に無関係な外部者かもしれない。しかし、そうした排除の思想が市民との間に分断を生み、労働組合の組織率や発言力の低下につながってきたことを忘れてはならない。

福島第一原発事故後も再稼働を容認する連合の方針が、いかに時代遅れかは先の新潟知事選挙や世論調査の結果を見れば一目瞭然である。そんな連合の方針に抗せない民進党に政権復帰の資格はないし、また、ともに働き、ともに生きるすべての労働者と市民のために企業や職域を超えて「身体を張り身銭を切った」(熊沢誠『労働組合運動とはなにか』)運動を展開できない連合にも明日があるとは思えない。

市民の生命と健康を危険に晒してまで考慮すべきような「雇用や国民生活への影響」など、私たちが暮らす社会には存在しない。そう考えれば、原発ゼロは2030年でも遅すぎるのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。3月3日号)

森友学園の異様さに(雨宮処凛)

国会では安倍晋三首相への追及が続き、「第二の森友学園」疑惑が浮上するなど「アッキード事件」は広がっていくばかりだ。

そんな森友学園が運営する塚本幼稚園の映像が連日テレビに映し出されている。

教育勅語の暗唱、運動会で「安倍首相、頑張れ!」「安保法制国会通過、良かったです」などと言わされる園児たち。

塚本幼稚園の映像を見て思い出したのは、今まで5回訪れた北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)だ。

初めて北朝鮮に行った時、連れて行かれたのは幼稚園だった。

そこには、幼稚園なのになぜかファンデーションをがっちり塗り、唇を真っ赤に塗るなどしたフルメイクの子どもたちがきらびやかなチョゴリに身を包まれていた。

私たち外国人が教室を訪れると、「うちのお父さんは主席から勲章をもらった」という歌を朗々と歌い上げたり、集団で一糸乱れぬダンスを披露してくれたりしたのだった。

また、幼稚園の先生が「この日はなんの日ですか?」と聞くと、「大元帥様のお生まれになった日です!」と全員が大きな声で唱和。子どもたちは可愛かったものの、歌ったり踊ったりするときの子どもらしさのまったくない作り込まれた表情に、なんとも言えない違和感が残った。

それから数年後、また北朝鮮を訪れた際、今度は小学生が芸術活動をする場所に連れていかれた。

やっぱり綺麗にメイクをして、琴のような楽器を弾いたりバレエをする子どもたちの表情は作り込まれていて、演奏やダンスはもちろん完璧だった。

そんな子どもたちを次々と見せられているうちに、一緒に行った男性の1人が突然泣き出した。混乱して、動揺して、とにかく何もかもが異様で、耐えられなかったのだという。彼が泣く姿を見て、「ああ、やっぱりこれって泣くくらいのことなんだよな」と、妙に冷静に思った。が、北朝鮮のガイドは、終始「わが国の子どもはこんなに素晴らしい教育を受けている」と自慢げだった。

そんな北朝鮮を彷彿とさせる森友学園が新設する「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に、首相の妻である安倍昭恵氏が就任していたのだ(現在は辞任)。しかも、教育方針に感銘を受けたことを語っている。

森友学園の問題が発覚する数日前、あるヴィジュアル系バンドのコンサート会場で昭恵氏を見た。終演後、出口に向かう昭恵氏は満面の笑顔だった。布袋寅泰氏もそうだが、彼女は随分とミュージシャンが好きなようである。彼女には公費で5人の秘書がついているというが、あの時、秘書は同行していたのだろうか。

なんだかとても、気になる。

(あまみや かりん・『週刊金曜日』編集委員。3月10日号)

入管が強制送還者を”水増し”――3分の2が対象外の「帰国希望者」

法務省入国管理局は2月20日から21日にかけて、日本に非正規滞在するタイ、ベトナム、アフガニスタンの男女43人をチャーター機でタイに強制送還した。タイ人以外はタイから本国に送還された。本来、チャーター機での送還は帰国拒否者が対象だが、今回は約3分の2に当たる26人の帰国希望者が含まれていた。“対象外”の帰国希望者を人数に加える形で“水増し”した背景には、チャーター機での送還が思うような成果を上げていないことがある。

チャーター機での送還は「大量に、確実に、安価に」を名目にして2013年からスタート。入管は当初、年間3000万円で200人の送還を予定していた。これは1人当たり15万円の計算だが、実際は14年は1人当たり約125万円、15年は159万円、昨年は約123万円と高額で推移。今回の男女43人の送還費用は約2700万円で、1人当たり約63万円に下がったものの、帰国希望者を抜くと1人当たり約159万円に跳ね上がる。

入管は本誌の取材に対し、帰国希望者もチャーター機に乗せることは「今までも通常やっている」としたが、「仮放免者の会」の宮廻満さんは、「14年にも10人ほどの帰国希望者を乗せたが、その時は人数に入れなかった。昨年は人数に入れたけれども、帰国希望者は30人のうち1人だけだった」と指摘する。だが入管は今回、帰国希望者が大量に含まれているということは当初発表していなかった。宮廻さんは「大量に安価にという部分が実現されていないとの批判を避けるために、帰国希望者も人数に“水増し”したのでしょう」とした。

入管はまた、費用を自分で賄えない帰国希望者もチャーター機に乗せれば、「(送還を)達成できる」と“成果”を強調。これに対し同会の永野潤さんは「入管からの“圧力”により、帰国希望に転じる人も多い」と言う。そして、「今回、日本に25年以上暮らす人や、日本に家族がいる人も強制送還された。明確な人権侵害だ」と訴えた。

(本誌取材班、3月10日号)