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「スーパー堤防」事業差し止めと慰謝料求めた裁判――あきれたコピペで却下・棄却

2017年2月17日1:09PM

裁判所前で「不当判決」へのコメントを出す原告弁護団の大江京子弁護士(右端)。(撮影/樫田秀樹)

1月25日、東京都江戸川区北小岩1丁目の93世帯が国の「スーパー堤防」事業で立ち退いたことで、地権者ら4名が、国に対しては「スーパー堤防事業の差し止め」を、江戸川区に対しては、精神的苦痛への賠償として「1人100万円の慰謝料」を求めた裁判の判決が言い渡された。

東京地方裁判所の岸田日出夫裁判長は、前者は「却下する」、後者は「棄却する」と述べただけでものの10秒で退廷した。

スーパー堤防とは、概ね200メートル前後もの幅を有する巨大堤防で、洪水が越水しても堤防が崩れないのをウリにしている。そのためには河川沿いの住民の立ち退きが必須で、「事業実施前に、住民の移転承諾を得て盛り土工事を行わねばならない」と定められている。だが本件では、誰一人国から承諾を求められておらず、区の区画整理事業との名目で立ち退きを迫られ、更地になったところでスーパー堤防事業が始まった。この事実に住民は、「国に盛り土工事の権限がない」と訴えていたのだ。

判決後、弁護団は入手した判決文に肩透かしを食らった。

スーパー堤防では、造成後に元住民が戻ってくるのは可能だが、二度の移転は特に高齢者には無理だ。つまり、コミュニティ崩壊もはらむ事業なのに、岸田裁判長は「限度を超える権利侵害とは言えない。二度の移転を回避したければ、区の先行買収(土地を売り払うこと)に応じればよかったはず」と判示したのだ。

問題は、この判決文が、住民がこの件で区を訴えた「江戸川区スーパー堤防取り消し訴訟」の2013年12月の判決文の、いわゆるコピペであったことだ。

原告の1人、宮坂健司さんは最後まで立ち退きを拒んだ1人だが、「判決は想定内。だが、裁判所が深い考慮をしていないことが分かった。それでも私は声をあげ続け世論に訴える」と語った。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、2月3日号)

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