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突出する京都府警外事の捜索、昨年末も――総聯中央本部解体が狙いか

京都府警本部。(撮影/成田俊一)

京都府警本部。(撮影/成田俊一)

日本政府の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)制裁がますます強化されている。昨年、12月19日と20日の2日間、京都府警警備部外事課を中心とした神奈川県警、山口県警、島根県警、新潟県警の合同捜査本部は、新潟市内のM社ほか約16カ所を外国為替及び外国貿易法違反(以下、外為法違反)容疑で一斉に家宅捜索に入った。マスコミに伏せてまで密かに行なわれた大がかりな捜索だったが、突然の捜索に踏み込まれて被疑者扱いされた複数の証言から、今回の捜索の狙いが、在日本朝鮮人総聯合会中央本部を標的にした捜索だったことが浮上してきた。

京都府警は今回の捜索を経て近々、数人逮捕するものと思われる。その数人が関わっているとされている容疑は、どうやら、日本の日用品などをシンガポール→大連(中国)→北朝鮮への不正輸出疑惑。すでに京都府警外事はその不正輸出の証拠を押さえているとも言われているだけに間違いなく逮捕は必至だろう。

日本政府が北朝鮮との貿易を全面的に禁止したのが2009年。以後、在日朝鮮商工人が関係した外為法違反事件が多発した。その事件化の中で、なぜか警視庁公安外事を尻目に、京都府警外事の摘発だけが突出している。

14年5月にはマツタケ不正輸入と日用品不正輸出を摘発。15年3月にはマツタケ不正輸入事件に絡んだ貿易会社「東方」の社長と役員を逮捕。同時に、朝鮮総聯中央本部の許宗萬議長と南昇祐副議長の自宅を捜索。その2カ月後の5月には、許宗萬議長の二男と貿易会社「朝鮮特産物販売」の社長らを逮捕。16年2月には、日本の日用品等を北朝鮮に不正輸出したとして貿易会社「聖亮商事」の社長逮捕と朝鮮商工会館を捜索した。

ある県警公安担当は、「われわれの中では『京都方式』といって有名ですよ。ガサで資料を集めるだけ集めて、組み合わせて、次々と事件化する。エンドレスなやり方をしますよ」と答えているが、京都府警が次々と摘発を続けられる理由はもう一つある。ある弁護士によれば「東京や大阪などでは違法捜査や冤罪捜査を厳しく批判する弁護士が多いが京都はそうした弁護士が少ないからだろう」というのだ。

【近々、数人を逮捕か】

そうした指摘からもわかるように、京都府警外事の捜索と摘発が本当に合法的かどうかはきちんと検証しなければならないだろう。捜査権の濫用は常にあるからだ。12月19日と20日の捜索にしても、捜査員から「総聯中央本部とのかかわりをしつこく聞かれた……」という。今回の捜索は、昨年2月の「聖亮商事」捜索で押収された資料の中に、日本→シンガポール→大連→北朝鮮の貿易ルートを示す記録が判明したからとも言われている。

近く、京都府警外事は外為法違反容疑で数人の逮捕に赴くだろうが、すでに一部のマスコミは当局からリークされた情報をそのまま「北朝鮮工作員が日本から長期不正輸出」(「産経ニュース」1月4日付)とかなり刺激的な記事を流している。逮捕が現実になれば、いつものように、総聯中央本部と在日朝鮮人を侮蔑的に扱い、北朝鮮批判を大々的に繰り返すに違いない。捜索を受けた関係者の話では「総聯中央本部の関与」をしつこく質されたという。京都府警外事は、在日朝鮮人同士の人間関係のつながりと不正貿易行為当事者とを区別することなく、捜索先の個人すべてを共謀関係者としてみている危険性がある。

都内のある弁護士は「憲法35条1項に定める令状主義に違反している可能性がある」と指摘する。令状があれば対象者を裸にすらできる警察権力だが、今回の家宅捜索の実態は後日の検証記事で明らかにする。朝鮮総聯中央本部の捜索ないし捜査を狙う今回の動きは、言うまでもなく安倍官邸がひたすら願う“総聯中央本部解体”の意に沿う、北朝鮮制裁の“日本国内版”である在日朝鮮人弾圧の現実を見せつける。京都府警外事が恣意的な事件化に及ぶのかどうか注視する必要がある。

(成田俊一・ジャーナリスト、1月13日号)