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厚労省通達は再稼働担当業務を規制適用除外に――関電過労自殺者に労災認定

2016年11月17日1:59PM

過労自殺した男性が運転延長審査への業務を担当していた福井県高浜原発。(撮影/粟野仁雄)

過労自殺した男性が運転延長審査への業務を担当していた福井県高浜原発。(撮影/粟野仁雄)

国と電力会社の強引な原発政策が痛ましい犠牲者を生んでしまった。関西電力高浜原子力発電所(福井県高浜町)の40代の男性課長が自殺したのは「長時間労働の過労が原因」として、敦賀労働基準監督署は労災を認定した。

技術畑の男性は、運転開始から40年以上経過した高浜原発1号機と2号機の運転延長に関わる原子力規制委員会の審査への対応を担当していたが、今年4月20日、出張中に都内のホテルで自殺した。

この月も19日間で150時間程残業している。審査の期限は7月7日だったが、男性は規制委員との折衝や報告書の作成、手直しなどで寝る時間もなく、今年からは月に100~200時間の残業が続いた。労働基準法36条による告示で残業時間の上限はひと月最大で45時間だが「管理監督者」の立場の課長職だった男性の労働時間に上限はないが、上司など周囲が健康などに配慮する義務があった。

一方、労基署を統括する厚生労働省は、再稼働目的での原子力規制委員会の審査に向けた電力会社の仕事について「月45時間、3カ月120時間の残業時間上限の適用を除外し、年間360時間の上限だけ適用」という趣旨の通達を2013年、密かに出していたことが、10月12日の衆院予算委員会で判明。安倍首相は理由を「公益上の必要性。集中作業が必要」と説明する。申請が通達の後だった高浜原発には適用されないが、民意も問わぬ再稼働を「公益」として事実上、過労を黙認しており、再稼働目的の労働規制適用除外の是非も改めて問われよう。

社員の労災死について関西電力は「遺族の感情に配慮して、当社の社員かどうかコメントを差し控えたい」とするが、遺族が「関西電力の社員だったことを伏せてほしい」とでも要求したのだろうか。課長になるまで尽力した人を「わが社の社員かどうか言えない」とは。これ以上の冷淡はなかろう。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、11月4日号)

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