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身分差別に苦しめられてきたアイヌを傷つける――府警「土人」発言の根深さ

「日本人には、沖縄や北海道を“外”とみなす意識があるのではないでしょうか」と話す差間正樹さん。10月21日、札幌市内で。(撮影/平田剛士)

「日本人には、沖縄や北海道を“外”とみなす意識があるのではないでしょうか」と話す差間正樹さん。10月21日、札幌市内で。(撮影/平田剛士)

「動画を見てゾッとしました。子どもの時からこの言葉でひどい目に遭ってきたから……。記憶って、時間が経てば薄れると思っていたけど、違うんですね」

北海道・浦幌アイヌ協会会長の差間正樹さん(65歳)は、こう話した。沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設予定地で、公務中の大阪府警機動隊員が抵抗運動の市民に投げつけたナイフのような言葉は、列島の反対側で先住民族アイヌをも深く傷つけずにおかなかった。蔑視意識あふれる「土人」のワードは、長くアイヌを苦しめ続けてきたからだ。

1869(明治2)年に蝦夷地(北海道島など)を内国化した明治政府は、その初期の公達(政府からの達し)で先住民族を「土人」と呼称した。またアイヌに戸籍登録を強いるに当たって、「平民」の中にわざわざ「舊(旧)土人」のカテゴリーを新設して公然と差別した。

最初から差別語だったわけではない。歴史学者の榎森進・東北学院大学名誉教授によれば、江戸期の武士の出張報告文書などには、地元民を指して「土人いわく……」の定型表現が見られるという。上から目線ではあるものの、まだ暴力性は希薄だった。

だが明治戸籍法が採用したこの公称は、アイヌに対してその後の“身分差別”を決定的にした。役土人、舊土人教育、舊土人部落……。明治期の行政文書はドジンだらけだ。きわめつけがその名も北海道舊土人保護法(1899年制定)で、1997年に廃止されるまで、アイヌを公式に土人よばわりし続けた。差間さんの脳裏によみがえったのはその記憶だ。

とはいえ、若い世代の大半には現在すでに死語だろう。それを今回、20歳代の警官が口走った点は見逃せない。榎森さんは「警察学校などの教育過程でこの言葉が温存・伝承されている可能性がある」と指摘する。事件の根は深い。

(平田剛士・フリーランス記者、10月28日号)