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日韓両政府の「合意」に一石投じるドキュメンタリー――「慰安婦」テーマの映画『沈黙』

2016年10月5日11:36AM

朴壽南監督(右)の上映合間のトークショー。今回製作を担った娘の麻衣氏と。(撮影/西村仁美)

朴壽南監督(右)の上映合間のトークショー。今回製作を担った娘の麻衣氏と。(撮影/西村仁美)

日韓両政府による「従軍『慰安婦』問題」の解決に向けた合意がなされたのは昨年12月末のこと。当事者不在の「合意」には元従軍「慰安婦」らの反発が強い。こうした中で9月10日、日韓合作のドキュメンタリー『沈黙』(朴壽南監督)の特別先行試写会が横浜市で行なわれた。「日韓両政府の『合意』から当事者であるハルモニたちがおいてきぼりにされている。そんな今だからこそ、彼女たちの肉声を直接、みなさんに聞いてほしいのです」と朴監督(81歳)は言う。

映画は、存命する元従軍「慰安婦」のイ・オクソンさん(90歳)を主人公とする。約20年前、自ら重い沈黙を破り、14人の仲間らと共に来日したイさん。彼女たちが日本政府に謝罪と補償を求めていく、その闘いぶりを中心に描く。

日韓両国による「当事者不在」でなされる当時の補償や支援の実態も炙り出し、現在の「合意」のあり方にも一石を投じる。民間募金で「見舞金」(当初)を集める「国民基金(女性のためのアジア平和国民基金)」に激しく抗議するイさん。募金とは別の政府拠出金による「慰安婦」対象の医療・福祉支援事業は、同基金解散後、民間団体が受け皿となり「フォローアップ事業」として続いている。

「『国民基金』の推進メンバーの女性が、そのまま民間団体に移行し、この約20年間、彼女らの家を訪ね歩き、20万ウォン(約2万円)ほどの小銭を配り歩いているのです。オクソンさんはお金の出所を知らなかった。『日本の市民たちが集めたお金だから気にするな』と言われ受け取っていた。今年20年ぶりの韓国で事実を初めて知り驚愕しました。私は、この『フォローアップ事業』が、今回の『合意』を形作るための日本政府の工作だと思っています」と朴監督。

韓国では6月、「ソウル国際女性映画祭」へ正式招請され上映。現在、日本公開に向けクラウドファンディングで資金を募っている。
URL https://motion-gallery.net/projects/silence

(西村仁美・ルポライター、9月23日号)

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