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民進党代表選で圧勝も野党共闘には慎重――切れ味鈍い蓮舫新代表の船出

2016年10月4日11:33AM

岡田克也氏(右)から民進党代表を引き継ぐ蓮舫氏だが、野党共闘は継承するのか?(撮影/横田一)

岡田克也氏(右)から民進党代表を引き継ぐ蓮舫氏だが、野党共闘は継承するのか?(撮影/横田一)

9月15日、民進党は東京都内で臨時党大会を開き、新代表に蓮舫代表代行を選出、初の女性代表が誕生した。直後の挨拶で「私たちが向かうべきは巨大与党だ。批判ではなく提案力をもって戦い、選択してもらえる政党にしたい」と抱負を語ったが、衆院補選や新潟県知事選での野党共闘については曖昧なままだった。

新代表初の記者会見で蓮舫氏は、東京10区と福岡6区の衆院補選(10月23日投開票)について「我々は(東京10区の)鈴木庸介候補予定者、(福岡6区の)新井富美子候補予定者という素晴らしい候補予定者を立てています。しっかりと勝っていける、議員全員で応援していく体制を早々に整えたい」と意気込んだものの、すでに出馬表明をした候補者の取下げを示唆する共産党との選挙協力については、全く触れることはなかった。

「福島原発事故の検証と総括なき再稼働はありえない」が持論の泉田裕彦知事が出馬撤回をした新潟県知事選についても、蓮舫氏から野党共闘(野党統一候補擁立)への意欲は伝わってこなかった。民進党新潟県連が候補者擁立を断念したことが報道されたのにもかかわらず、党本部主導で積極的に動く姿勢は感じられなかったのだ。

蓮舫氏の“売り”は、国会審議などでの切れ味鋭い弁舌(発信力)、攻めの強さだ。当然、「新潟県知事選で野党統一候補を擁して原発再稼働に突き進む自民党(安倍政権)と対決する」という好戦的な回答が返ってくると予測したのだが、実際は慎重な言い回しに終始した。

【新潟県知事選も消極姿勢】

代表選終盤の11日、蓮舫氏を含む3候補に「新代表になった場合、新潟県知事選にどう取り組むのか」と質問した。「原子力防災、避難計画のズサンさを指摘して再稼働に慎重な泉田知事が『新潟日報』の一方的報道を理由に出馬を撤回して、東電の株価が上がった」「このままだと自民党推薦内定の森民夫さん(前・長岡市長)が当選してしまう」と指摘した上で、野党共闘への意気込みについて聞いたのだが、3人とも「新潟県連の意向が第一」と回答した(本誌9月16日号)。ちなみに蓮舫氏は「どの組長選挙もそうなのですが、党中央主導ではなくて、地元の県連が考え方をまず決めて候補者を選定していくという作業がありますので、今回もそこを重んじたいと思います」と答えていた。

その3日後の14日、『朝日新聞』に「新潟知事選、民進が擁立断念」と銘打った次のような記事が出た。「民進党新潟県連は13日、新潟市内で会合を開き、29日告示の知事選に独自候補を擁立しないことを決めた。(中略)関係者によると、県連と党本部は現職官僚らに立候補を要請していたが、固辞されたという」。

この「新潟県連の擁立断念」という状況の変化を受けて、蓮舫氏から踏み込んだ発言が出るのではないかと予測、新代表就任直後の会見で再質問をした。「昨日(14日)の『朝日新聞』の記事に『民進党県連と党本部が候補擁立を断念した』とあった」と紹介した上で、「泉田知事路線を引き継ぐ再稼働に慎重な候補を擁立する考えはないのか」と再び聞いたのだが、蓮舫氏の言い回しは代表選中と変わりはなかった。「まず岡田(克也)前代表から経緯を聞いて、話をしっかり引き継ぎます。さらに新潟県連から話を聞いてから、考えを決めさせてください」。

新潟県知事選の結果は、東京電力の柏崎刈羽原発再稼働に直結する。ここで事故が起きれば、関東圏が住めなくなる恐れも出てくるため、大きな注目を集めるのは確実だ。民進党が「関東圏を含めた“被害地元”に住む国民の安全を守る」を旗印に掲げて野党共闘を呼び掛け、原発再稼働ありきの自民党(安倍政権)との与野党激突の構図を作ることができる。この絶好のチャンスを活かさないようでは「(森氏支持を決定した)連合新潟に気がねしている」「威勢のいいのは口先だけ」「国籍問題で守りの姿勢に入った」と批判されても仕方がない。

(横田一・ジャーナリスト、9月23日号)

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