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名古屋・佃さん訴訟で東京高裁が判決――実名報道原則見直しを提言

2016年3月30日10:08AM

新聞3社提訴で会見する佃さん(右から2番目)、弁護団、筆者(一番右)。2013年8月2日、東京・司法記者クラブで。(提供/浅野健一)

新聞3社提訴で会見する佃さん(右から2番目)、弁護団、筆者(一番右)。2013年8月2日、東京・司法記者クラブで。(提供/浅野健一)

2010年2月、愛知県警に偽造有印私文書行使容疑で逮捕され、名古屋地検で不起訴処分となった佃治彦さんが「実名報道で名誉を毀損された」として朝日新聞、毎日新聞、中日新聞の3社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月9日、東京高裁(水野邦夫裁判長)であった。

判決は「容疑内容や容疑者の地位、属性によっては、捜査段階の実名報道がプライバシー侵害に当たる場合がある」(『東京新聞』)、「犯罪報道のあり方には様々な議論があり、実名報道する場合には正確性について十分に慎重な吟味をすることが求められている」(『朝日』)と指摘。逮捕=実名を否定する判示で、報道現場に一石を投じた。

判決は、『毎日』記事の「取材過程に慎重な吟味の形跡」はないとして、賠償額を東京地裁の2倍の110万円に増額する一方、『朝日』『中日』両社への請求については控訴を棄却した。佃さんは上告する。

一審は昨年9月30日、『朝日』『中日』記事に違法性はないと判断、逮捕容疑を誤記した『毎日』について、記事はネットでも流れ世界中に伝達され、「重要な部分が真実でない」として55万円の支払いを命じていた。

水野裁判長は、『朝日』の「偽造見破ったり!」「契約書 鑑定でダメ」という見出しについて、一審が「犯罪者であるとして原告を揶揄するニュアンスを含む」などと認定していた部分を取り消した。

木下渉弁護士は「逮捕時の実名報道を問う裁判で新聞社相手に勝つのは難しいと思っていたが、『毎日』に勝訴できた上、賠償額も100万円を超えたのは評価できる。だが、『毎日』だけを違法とし、2社は免責するのか(理由)が理解できない。実名報道がネットにまで及ぶ被害などを細かく検討していないなどの問題もあるので最高裁で判断してもらう」と話している。

(浅野健一・ジャーナリスト、3月18日号)

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