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甘利前大臣の口利き疑惑、中央公聴会で郷原元検事――「捜査を躊躇する理由はない」

2016年3月14日12:24PM

疑惑追及チームの会見で語る郷原信郎弁護士(中央)と大西健介(左)、山井和則(右)両議員(2月24日、撮影/横田一)

疑惑追及チームの会見で語る郷原信郎弁護士(中央)と大西健介(左)、山井和則(右)両議員(2月24日、撮影/横田一)

2月24日の衆院予算委員会中央公聴会で、甘利明前大臣事件の真相解明を主張した元検事の郷原信郎弁護士に対し、東京地検特捜部出身の山下貴司衆院議員が質疑応答で“批判演説”をした。

郷原氏が公述で浮き彫りにしたのは、検察の消極的姿勢(職務怠慢)だ。まず郷原氏は、「あっせん利得処罰法」(2000年に議員立法で成立)が、予算執行段階での契約や行政処分に対象を限定、しかも「権限に基づく影響力を行使して行なわれ、報酬を受けた場合」を要件にしていると解説。その上で、今回の事件が「ストライクゾーンが狭く設定された『あっせん利得処罰法』の処罰の対象の、まさにど真ん中のストライクに近い事案」「検察が捜査着手を躊躇する理由はない」と断言したのだ。

しかし、事件発覚から一カ月以上経っても、捜査当局は元秘書の身柄拘束も強制捜査もしていない。郷原氏が「あっせん利得処罰法制定の意味がなくなり、国会議員の政治活動への倫理観の弛緩を招きかねない」「検察当局が捜査にすら着手しないのなら、国会が甘利氏や秘書の証人喚問などで事実解明に乗り出す以外に方法はない」と強調したのはこのためだ。

これに異論を唱えたのが、山下氏。「国会が法制度や予算に対する建設的議論を脇に置いて、個別の事件追及に汲々とするのは、捜査機関や司法権に対する国会の介入になりかねない」「個別事件の法解釈について、国会の、特にこの予算委員会で取り上げることについては疑問」と自論を述べたのだ。

公述を終えた郷原氏は、民主党・維新の党合同の疑惑追及チームの会合で会見。強制捜査の気配すらない検察の消極的姿勢を問題視、「法務大臣が指揮権発動をするべき」と指摘した。

「『疑惑を放置したままでは国民の信頼が回復できない』として、(岩城光英)法務大臣が検察に対して『積極的な捜査で犯罪が成立するのか白黒をつけてほしい』と検察庁法に基づいて要請することがあってもおかしくない」

また山下氏の疑問に関連して、郷原氏はこう説明した。

「住のセーフティネットの確保を担うUR(独立行政法人・都市再生機構)は、財政投融資による12兆円の資産を有する巨大な公益法人。こんな薄汚い口利きで介入されるようでは、その社会的な要請に応えられるのか」

確かに薄汚い口利きだった。与党大物議員の影響力によって、道路整備費から不法占拠業者に2億円以上の補償金が支払われたからだ。こんな“税金泥棒”に等しい口利きが横行すれば、道路工事費が膨れ上がってしまう。郷原氏を批判した山下氏は「公金(道路整備費)横領」という実態を理解していないのだろう。

【甘利氏の影響力行使】

同日の疑惑追及チームのヒアリングでは、甘利氏の影響力行使を物語る面談内容が紹介された。不法占拠業者の総務担当者の一色武氏と、URの山本直・ニュータウン業務部販売業務チームリーダーのやりとりで一色氏はこう迫っていたのだ。

「(補償金を支払わないと)大変なことになるよ。それこそ、何人かが犠牲になると思うよ。何人か、何十人か分からないけど犠牲が出るよ。URさんは(民営化や解体で)ないと思うよ。責任問題ですよ。犠牲者が出てくるから、すぐやればいいのに、先送りすることではないと思う。それこそ、大変なことになるよ。そんな(こと)言ったために火がついて、後で謝りに来ても許さないよ。国会議員の中の大臣だよ、ましてや甘利さんなんて、(TPP交渉で)諸外国と喧嘩するじゃない」

疑惑追及チームの大西健介衆院議員と山井和則衆院議員が共にこの議事録の核心部分を読み上げ「圧力を感じたのか」「甘利前大臣の権限をバックにして補償金の引上げ要求をしたと理解できる」と山本氏を問い質したが、「否定も肯定もできない」と回答を拒否した。真相解明が進むにつれ、あっせん利得処罰法が成立する可能性は高まるばかりだ。

(横田一・ジャーナリスト、3月4日号)

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