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日本政府が朝鮮民主主義人民共和国への独自制裁を強化――さらに被害受ける在日朝鮮人

2016年3月2日10:16AM

朝鮮・元山(ウォンサン)港に係留されたままの「万景峰92号」。(2012年9月、撮影/伊藤孝司)

朝鮮・元山(ウォンサン)港に係留されたままの「万景峰92号」。(2012年9月、撮影/伊藤孝司)

日本政府は2月10日、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対する独自制裁措置の強化を決定した。

そして韓国政府は同日、南北協力事業である「開城工業団地」の操業を全面中断すると発表。それに対して朝鮮は同団地を「軍事統制区域」とし、韓国企業124社の資産を凍結。残っていた韓国人関係者約280人を追放した。また米国は、制裁法案を10日に上院、12日に下院で可決している。「核・ミサイル」だけでなくサイバー攻撃や人権侵害などに関わった個人・企業の資産凍結といった厳しい内容である。これら日米韓の独自制裁は、国連安全保障理事会決議にもとづく制裁が中国・ロシアの慎重姿勢によって決まらないため、連携して踏み切ったものだ。

米国・韓国の制裁は朝鮮そのものへダメージを与えるのが目的だが、日本のものには大きな違いがある。日本による独自制裁は、拉致問題での朝鮮への圧力として2004年6月の「特定船舶入港禁止法」成立から始まった。06年7月の朝鮮によるロケット発射でそれが実施され、次第に項目を増やした。「ヒト」への制限としては、朝鮮当局者の日本入国禁止、朝鮮総聯幹部の日本への再入国禁止、航空機チャーター便の乗り入れ禁止、そして朝鮮への渡航の自粛要請。「モノ」については「万景峰92号」を含む朝鮮籍船舶の入港禁止と輸出入の全面禁止。「カネ」では朝鮮への10万円を超える現金の持ち出しと300万円を超える送金の届け出義務という内容だった。

とりわけ輸出入の禁止は、米国・韓国でも実施しなかった厳しい措置だ。日本の朝鮮からの輸入は06年11月から、輸出は09年7月からまったくなくなった。平壌市内の商店で輸入品を探すと、日本製ばかりだったのが、今では中国やEU諸国のものが取って代わっている。制裁で深刻な被害を受けたのは、朝鮮との貿易や朝鮮で事業をしていた在日朝鮮人らの企業で、その多くが廃業せざるを得なくなった。また税関検査が厳しくなり、朝鮮から戻った乗客への空港での朝鮮製品の没収が相次いだ。1月に筆者へ届いた朝鮮からの郵便物は、税関によって開封されていた。

朝鮮へ親族・祖国訪問をした在日朝鮮人は、制裁前の05年は4000人近くいたが、制裁後はその約半分にまで減少。その最大の理由は「万景峰92号」での往来ができなくなったからだ。航空便は中国かロシアを経由するため、費用は船での2倍近くの約25万円かかり、高齢者は乗り換えでの肉体的負担が大きい。朝鮮へ直接的に制裁する方法がない日本は、代わりに在日朝鮮人いじめをしてきたのである。

14年5月29日の「日朝ストックホルム合意」で、人的往来・送金についての報告の規制と人道目的の朝鮮籍船舶の入港禁止が解除。しかしそれから現在までに、送金や人道目的での入港が1件もなかったことからわかるように、重要ではないものばかりの解除だった。

【制裁の破綻は明らか】

今回の制裁強化策では、一昨年の解除項目を復活させ、人道目的かつ10万円以下を除く送金と朝鮮へ寄港した第三国籍船舶の入港の禁止、再入国禁止対象を拡大して在日外国人の「核・ミサイル」技術者への適用などを追加。これは、昨年6月に自民党が作成した制裁案にほぼ沿った内容である。すでに、訪朝を予定していた朝鮮総聯副議長の再入国許可が取り消された。

朝鮮はこの日本の制裁強化に対して12日、拉致被害者を含む日本人調査の中止と同委員会の解体を表明。日朝関係は、過去最悪の危険な状況に陥った。

制裁開始からの10年間を振り返れば、制裁強化で朝鮮が屈することは考えられない。もはや圧力路線が破綻したのは明白だ。日本は米国と異なり、朝鮮との間で解決すべき多くの重要課題を抱える。政府は戦略的視点に立って「核・ミサイル」問題を切り離した独自の対話路線へ転換するとともに、米国に対して朝鮮戦争の休戦協定を平和条約にするよう働きかけるべきだ。

(伊藤孝司・フォトジャーナリスト、2月19日号)

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