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教員らが保健副教材の問題指摘――「高校生にウソを教えるな」

2015年10月15日5:40PM

「女性の妊娠のしやすさ」のグラフは改竄ともいえる間違いだと指摘され、文科省が訂正を発表した高校の保健体育副教材。9月28日にはさらに「子供とはどのような存在か」の意識調査グラフの訂正も公表された。厚労省が出典の同グラフは「未婚・既婚を問わず」の結果として「生きがい・喜び・希望」が78・9%とされているが、これは既婚で有子家庭の平均であり、独身と無子家庭の平均は62・1%だ。この誤りを指摘していたのは「高校の保健・副教材の使用中止・回収を求める会」の大学教員ら。11日には東京都内で「高校生にウソを教えるな!」と緊急集会を開いていた。

高橋さきの・お茶の水女子大学講師は「妊娠しやすさ」グラフの出典論文を探し「台湾と米国の半世紀以上前のデータ。しかも社会経済文化の入ったもので生物学的データではない」とし、訂正後のものも誤りだと批判。柘植あづみ・明治学院大学教授は、周産期死亡率は35歳時よりも20歳以下のほうが高く、高校生相手なら若年出産のリスクの説明のほうが大事なのに言及がないこと、「不妊で悩む人が増加している」と説明されるグラフは、1年間に体外受精をした件数であり「人数」ではないことなどを指摘した。

このように説明が正しくない部分も多く「20代で産まないといけない」「子どもをほしがらないのはおかしい」というミスリードを招く。性的マイノリティや多様性への配慮がない点も問題だ。西山千恵子・慶應義塾大学講師は「戦争法案審議中に副教材が配られた。産めよ殖やせよの戦争時代とリンクする」と危機感を表明した。

教員らは内閣府と文科省に副教材使用中止・回収を申し入れ、多数の誤りを指摘。28日午前には「誤りは妊娠しやすさのグラフのみ」としていたが、午後、意識調査グラフの訂正を文科省が決定した。教員らは今後も使用中止に向け、問題の指摘を続ける予定だ。

(宮本有紀・編集部、10月2日号)

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