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『四国新聞』、西日本放送と自民・平井たくや議員の癒着――6200万円もの資金還流

2015年9月11日12:31PM

西日本放送サービス本社玄関の平井たくや衆議院議員のポスター。平井氏は2014年10月まで同社の取締役で、現在も1800株を持つ大株主。(撮影/三宅勝久)

西日本放送サービス本社玄関の平井たくや衆議院議員のポスター。平井氏は2014年10月まで同社の取締役で、現在も1800株を持つ大株主。(撮影/三宅勝久)

平井たくや衆議院議員(自民・香川1区)が、自身が代表を務める自民党支部を通じて、身内企業である西日本放送と『四国新聞』の関連会社(高松市など)に対して5年間で6200万円を超す政治・選挙資金の支出をしていることが政治資金収支報告書などから判明した。6200万円のうち3400万円は政党交付金などの公金で、平井氏はこれらの支出がされた企業から「役員報酬」「顧問報酬」として多額の金銭を受領していた。メディアと政治家の間で政治資金を還流させ、報道の公正さがゆがめられている疑いは濃厚だ。

『四国新聞』の社主は平井氏の母・温子氏。西日本放送は平井氏がかつて社長を務め、現在は弟の龍司氏が取締役に就いている。どちらも平井氏の一族経営で、平井議員も大株主である。そして自民党や平井氏に好意的な報道をすることで有名だ。「平井新聞」「平井放送局」とささやかれている。

その「香川のメディア王」平井議員が代表を務める「自民党香川県支部連合会」と「自民党香川県第一選挙区支部」が香川県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書の支出欄をみると、『四国新聞』や西日本放送のほか、両社の関連会社が続々と登場する。

西日本放送サービス、モトリス、アド・サービス・センター(以下、アド社)、アール・シー・エス、ネクサス、シコク・サービス、アクシス。これらの会社に対して「新聞広告掲載代」「政治資金パーティ運営費」などの費目で、1件数万円から数百万円の支出を多数行なっている。選管に記録がある2011年から13年の3年間だけで、総額4972万円もの金額だ。西日本放送サービスの2776万円を筆頭に、ネクサス1270万円、モトリス611万円と続く。

西日本放送サービスとモトリスは平井氏が14年後半まで取締役をしていた。モトリスについては現在も顧問だ。4972万円のうち2300万円は政党交付金から払われている。

09年と10年については、政治資金収支報告書はすでに廃棄されているものの、政党交付金の記録は残っている。自民党香川県支部連合会と自民党香川県第一選挙区支部の政党支部交付金収支報告書によれば、西日本放送サービスやアール・シー・エス、アクシス、アド社に計922万円が「ポスター印刷代」などとして政党交付金から払われている。アール・シー・エスは、平井議員が14年4月まで取締役をしていた。アド社は弟・龍司氏が会長だ。

14年12月の衆議院選での選挙資金も平井氏の身内企業に流れ込んでいる。西日本放送サービスとアド社に対して公選はがきや選挙ポスター代など316万円。うち256万円が公費だ。

以上、確認し得たものだけを合計すると、平井氏の身内企業への資金流入は6210万円で、うち公費が3479万円と、約6割を占めた。

一方、衆議院議長に提出された資産報告書類によれば、13 年末現在で平井氏は西日本放送サービスをはじめとする7社の役員と私立高松中央高校の理事をしており、これらの企業などから年間約3000万円の報酬を受け取っている。

【メディアを政治家が支配】

与党の代議士が、税金を含む政治資金を身内企業に流し、自分自身もその利益にあずかる。結果、自民党と平井氏に好意的な報道がなされ、選挙を有利に運ぶ。けじめなき光景を前に、ドイツやアメリカなどのメディアで仕事をした経験を持つジャーナリスト・神林毅彦氏は驚く。

「権力をチェックするはずのメディアが、政治家に支配され、税金まで入れている。先進国ではありえない。そんな新聞・テレビは信用を失う。地元の記者や野党は何をしていたのか」

平井事務所に見解を質すと「親族が経営する会社だからと言って、法的にも倫理的にも問題があるとは思えない。『四国新聞』や西日本放送が報道の内容を変えたとかもない」との回答だった。

問題は政治家を選ぶ側にもある。

(三宅勝久・ジャーナリスト、8月28日号)

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