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原発事故めぐり東電元会長ら3人を強制起訴へ――真相究明の邪魔をした検察

7月31日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見する福島原発告訴団団長の武藤類子さん(中央)ら。(撮影/伊田浩之)

7月31日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見する福島原発告訴団団長の武藤類子さん(中央)ら。(撮影/伊田浩之)

福島第一原発事故の刑事責任が、ついに裁判の場で問われることになった。7月31日に東京第五検察審査会(検審)が公表した「強制起訴」議決は、福島原発告訴団が、検察当局との長い闘いの末に勝ち取ったものと言える。

当初、同告訴団が検察に期待していたのは、政府や国会の事故調査委員会でも解明できなかった事故原因の究明であり、加害企業である東電への強制捜査だった。各事故調による真相究明作業が中途半端に終わったのは、強制力を伴う調査ができなかったからだ。

だが検察は、東電や規制官庁への家宅捜索などの強制捜査を一度も行なわないまま、2013年9月9日、被告訴人ら全員を不起訴処分とした。14年7月の検審「起訴相当」議決を受けた捜査でも、検察は強制捜査をしなかった。

それでも検察は、不起訴のたびに「すべき捜査は尽くした」と弁解した。「強制起訴」議決が出た後に至っても、マスコミに向けて同じ説明を繰り返していた。

しかし、その説明を真に受けることは、とてもできない。なぜなら、原発事故に伴う刑事告発や告訴が行なわれた後に検察が取った行動には、二つの不可解な「謎」があるからだ。

【検察官がヒアリング担当】

同告訴団は12年6月11日、刑事告訴の受付窓口である福島地検の検事正に、告訴・告発状を提出していた。にもかかわらず、同告訴団の告訴を同年8月1日に受理したのは、全く畑違いの「公安部」だった。その理由は、今もって明らかにされていない。東京地検特捜部に対する同様の刑事告発も、受理したのは「公安部」である。なぜ特捜部で受理しなかったのか。

あまり知られていないことだが、政府事故調で関係者らのヒアリングをしたのは、検察官である。そして、その政府事故調は「原因究明を優先し、責任追及を目的としない」(畑村洋太郎・政府事故調委員長)組織とされた。

本来、刑事責任の追及をすべき立場の検察官が、なぜそのような組織にかかわることになったのか。真っ先に浮かぶ疑問は、

「特捜部で受理しなかったのは、ヒアリングを担当した検察官の多くが特捜部からの出向だったからではないのか」

というものだ。事実、検察による告訴・告発の受理は、政府事故調の「最終報告書」が出るのをわざわざ待って行なわれていた。

「責任追及を目的としない」ことを条件にヒアリングを検察官にやらせた結果、精鋭集団の特捜部が原発事故捜査から外されたのだとすれば、これほど軽率な話はない。さらには、政府事故調の主目的であるはずの「原因究明」さえ、検察官の彼らは満足に果たせていないのである。

【被害者に“敵意”剥き出し】

同告訴団の告訴・告発は福島地検で受理されたので、たとえ不起訴になっても、それに対する異議申し立ては、福島県民で構成される福島の検審で審査されるはずだった。だが、その思惑を、検察当局は総力を挙げて阻止していた。

不起訴処分公表当日、福島地検は同告訴団の告訴・告発を東京地検へと移送し、東京地検はその日のうちに間髪入れず、ほかの告発とまとめて電撃一括不起訴としたのである。オリンピックの東京招致決定(日本時間の13年9月8日)の翌日のことだ。同告訴団に対する、大人げない嫌がらせにほかならない。

検察当局は、原発事故被害者である同告訴団に対し、なぜここまで敵意を剥き出しにしたのか。そんなことをするくらいなら、そもそも告訴を受理しなければよかったのである。

ところで、こうした検察の姿勢は、かえって同告訴団側の闘志をかきたててしまい、ついでに検審の心証まで悪くしたようだ。

これから始まる裁判で裁かれるべきは、「東電の不作為」ばかりではない。原発事故の真相究明の邪魔にしかならなかった「検察の不作為」も、同時に俎上に載せるべきだ。検察を取り巻く「謎」の解明を期待したい。

(明石昇二郎・ルポライター、8月7日号)