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安倍首相“イエスマン”の杉山外務審議官は「スリーアウト」!?――外務省トップ人事に異変あり

外務省(齋木昭隆事務次官)の人事をめぐって一波乱起きそうだ。熾烈な出世競争に勝ち残り、この夏にも省トップの事務次官に就くことが確実視されていた杉山晋輔外務審議官(政務)が「三つのポカで脱落の可能性がでてきた」(関係者)というのだ。いったい何が起きたのか。

6月21日、NHKニュースのなかでも視聴率の高い「ニュース7」に、杉山氏が東京・銀座の高級料理店でビールで乾杯するシーンが映された。相手は朴槿恵韓国大統領の対日政策ブレーンの一人で、世宗研究所の陳昌洙所長。険悪ムードがつづく日韓関係の改善の糸口となるようセッティングされた会合だったが、外務省内では「高級料理店での乾杯の場面をNHKに撮らせるなど、あってはならないことだ」と衝撃が走ったという。

ポカはつづく。6月29日、上智大学(東京都)で行なわれた講演(演題は「世界を話そう」、コーディネーターは藤崎一郎日米協会会長、前駐米大使)で、杉山氏は学生らを前に「初秋に日中韓首脳会談が実現するか、朴大統領が国連に行けば韓日首脳会談が実現するかもしれない」と明かしたのだ。外交は相手のあること。首脳会談実現に向けて各国の高官が調整に奔走している最中、まだ固まっていない内容を学生らに向けて話すなど、やはり「あってはならないこと」(外務省関係者)なのだ。

杉山氏最大の“失態”となったのは、世界遺産登録が決まった「明治日本の産業革命遺産」で働かされた朝鮮半島出身者の「解釈」をめぐる両国の衝突だ。6月21、22両日にわたる日韓外相会談では、7月5日の世界遺産委員会での日本の説明は「forced to work」(働かされた)となることで両国合意していたとされる。この文言は国際労働機関(ILO)が条約で禁止する「強制労働」とは明確に区別される概念だ。

一方韓国は、遺産の一部で計5万7900人が「強制労働させられた」との立場で、当初「forced labour」(強制労働)の表現にこだわった。両国の溝は埋まらなかったが、国交正常化50周年に友好ムードを演出したい両国の思惑は一致し、見解の相違を残したまま韓国が同遺産の世界遺産登録に協力することで合意する。水面下で調整したのが杉山氏だった。

ところが登録決定直後、韓国メディアに「日本が強制労役の事実を国際社会で初めて認定した」と大きく報道されてしまった。岸田文雄外相、菅義偉官房長官らはすぐに否定したものの、歴史問題の根の深さを杉山氏が甘くみていた節は否めない。

外務省内からは「杉山はこれでスリーアウト。チェンジだ」という声が大きくなりはじめている。

【霞ヶ関の安倍人事】

杉山氏は早稲田大学の在学中に外交官試験にパスし、大学は翌年に中退している。総合外交政策局国連政策課長、条約局条約課長、在韓国大使館公使、アジア大洋州局長など省内エリートコースを歩み、2013年6月から現職。国立大学なかんずく東京大学出身者が就くことが多い事務次官ポストに、私立大学出身者が筆頭候補にのぼりつめていることについて、「安倍首相の壮大なるイエスマンだから」と見る向きは強い。

外務省関係者によれば、元外相の岡田克也議員が民主党代表に就任した際、杉山氏は岡田氏に挨拶に行きたがったという。しかし安倍首相の顔色をうかがい、結局行けずじまいだったというのだ。

財務省では先日、安倍首相のゴルフ仲間である田中一穂氏が事務次官に就いた。先々代の木下康司氏、先代の香川俊介氏と同じ79年入省組の一人だが、3代続けて同期が事務次官に就くのは異例中の異例。安倍首相の意向なしに、この人事は成立しただろうか。

杉山氏が「アウト」となれば、田中氏と同様、昨年暮れに安倍夫妻との食事会に夫妻で招かれた林肇欧州局長が筆頭にあがるだろうか。他には、平松賢司総合外交政策局長、伊原純一アジア大洋州局長らの名があがっている。

(野中大樹・編集部、7月24日号)