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戦後70年の沖縄「慰霊の日」参列者5400人前に――県民と安倍政権の深い溝

2015年7月14日11:00AM

追悼式後、会場で焼香する稲嶺進名護市長(左手前奥)ら。(撮影/本誌取材班)

追悼式後、会場で焼香する稲嶺進名護市長(左手前奥)ら。(撮影/本誌取材班)

戦後70年の6月23日、沖縄県は日本軍の組織的戦闘が終決したとされる「慰霊の日」を迎えた。沖縄県糸満市摩文仁の平和祈念公園では「沖縄全戦没者追悼式」(主催=沖縄県・県議会)が執り行なわれ、追悼式には主催者発表で約5400人が参列し沖縄各地が不戦を誓う鎮魂の祈りに包まれた。今年「平和の礎」は建立から20年が経ち刻銘者は総勢24万1336人となった。

翁長雄志沖縄県知事は平和宣言で「特に、普天間飛行場の辺野古移設については、昨年の選挙で反対の民意が示されており、辺野古に新基地を建設することは困難であります。(中略)政府においては、固定観念に縛られず、普天間基地を辺野古へ移設する作業の中止を決断され(中略)見直されることを強く求めます」と述べた。歴代県知事のなかで、最も新辺野古基地阻止を訴えた異例の平和宣言文を読み上げると、会場からは拍手や指笛がなり響いた。

追悼式で、自作の詩を朗読した沖縄県立与勝高校3年の知念捷さんは「平和に対する思いをあらためて考えてほしい」との願いを込めて琉歌を交えながら「平和でしょうか」を意味する沖縄の方言で「みるく世がやゆら」の問いを繰り返した。戦後再婚をせず生き抜いた祖父の姉と戦死したその夫を描いた詩は、沖縄戦を風化させてはならないという願いが込められている。

一方、「戦争屋は帰れ!」「嘘つき」という怒号とやじが飛び交い、追悼式から退場させられる参列者も出る事態となった安倍晋三首相の来賓あいさつ。安倍首相は「私が先頭に立って沖縄の振興をさらに前に進めていく。沖縄の人々には米軍基地の集中など、永きにわたり安全保障上の大きな負担を担っていただいている。(中略)今後も引き続き、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしていく」と語り具体的な負担県軽減には触れず沖縄振興を強調した。また、来賓あいさつで「万国津梁」を堂々と「ばんこくつりょう」と読み違えた大島理森衆議院議長。会場からは「ちゃんと勉強しろ!」と批判の声が相次いだ。

沖縄県民が全世界へ問いかける「今は平和でしょうか」。政府の姿勢は“百田発言”が象徴する。“沖縄の声はつぶさないと”――この構図が続く限り「国民の自由、平等、人権、民主主義が等しく保障されずして、平和の礎を築くことはできないのです」(翁長知事平和宣言より)。

(本誌取材班)

【埼玉で沖縄の“今”を伝える】

「人の哀しみと苦しみをわが身の痛みに」――埼玉県内では「慰霊の日」を控えた6月20日、「伝えたい! 沖縄の今 辺野古チムグリ結歌の集い」が開催された。

藤本幸久・影山あさ子監督の『圧殺の海――沖縄・辺野古』(森の映画社)上映で新基地建設に抗う人々を政府側職員が排除する場面に、集会に参加した自由の森学園の竹内遼さん(17歳)は「沖縄戦だけでなく現在も暴力が続く。人々の抵抗に圧倒された」と語った。

島洋子氏(『琉球新報』東京支所報道部長)は講演で、「沖縄は基地で食っている」「海兵隊は抑止力」との言説を“神話”として紹介し、実態との乖離を指摘。主催者「月桃忌の会」共同代表でジャーナリストの森口豁氏は、「現地との中継や琉球舞踊なども織り交ぜて濃い内容になった」と話す。「人の痛みを感じる心」の意味を含む「チムグリ結歌」の集会には、約350人(主催者発表)が参加した。

(内原英聡・編集部、7月3日号)

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