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袴田事件、また違法捜査発覚――弁護士との接見盗聴

2015年5月14日5:52PM

1966年に静岡県で起きた「袴田事件」で、元プロボクサー袴田巖さん(79歳)が強盗殺人容疑で逮捕された後に弁護士と接見した際のやりとりを、県警が録音していたことがわかった。袴田さんの再審弁護団は「県警が盗聴していた」とみており、捜査機関に接見の内容を知られない「秘密交通権」(刑事訴訟法)の侵害だと強く非難している。

「憲法34条に由来し、刑事手続き上、最も重要な権利の一つ。ここまであからさまな違法は前代未聞で、言語道断だ」。4月13日に東京都内で記者会見した弁護団の戸舘圭之弁護士は語気を強めた。

袴田さんの捜査段階での取り調べを録音したテープ23本(約48時間分)が昨秋になって県警の倉庫で見つかり、その音声を東京高検が1月に開示したのがきっかけ。弁護団が再生・分析したところ接見の場面が5分ほど入っていた。

外箱には「8月22日午後4時40分~45分 岡村弁ゴ士」との記載があった。公判での証言や留置場の記録とも一致することから、弁護団は、逮捕から5日目に清水警察署で担当弁護士(故人)が初めて接見した時の録音と判断した。

雑音が多く袴田さんの声はよく聞き取れないが、「パジャマに血が付いていると言われても、わからないんですよ」と無実を訴えようとしている様子が確認できるという。接見した弁護士は「家族に言われて来た」「担当検事に会った」などと話している。

袴田事件では、袴田さんの再審を認めた昨年3月の静岡地裁決定が、犯行着衣とされた「5点の衣類」を県警が捏造した疑いに言及した。また、起訴前の一日平均12時間にも及ぶ苛酷な取り調べは、死刑を言い渡した静岡地裁判決(68年)でさえ「強制的」と厳しく批判している。戸舘弁護士は「違法に違法を重ねたうえでこの事件は成り立っている。一刻も早い再審無罪を」と強調した。

(小石勝朗・ジャーナリスト、4月24日号)

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