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医療措置を約束、ハンスト解除──牛久入管側が収容者に回答書(片岡伸行)

抗議のハンストが収束した牛久収容所(茨城県牛久市)。(撮影/片岡伸行)

抗議のハンストが収束した牛久収容所(茨城県牛久市)。(撮影/片岡伸行)

3月末から収容者の抗議行動が続いていた法務省管轄の外国人収容施設、東日本入国管理センター(茨城県牛久市、通称・牛久収容所、佐藤政文所長)で、収容者の「上申書」(3月30日提出)に対してセンター側が異例の「回答書」を提示したことから、収容者側は4月7日にハンガーストライキを解除した。

一時的に収容を停止し、身柄の拘束を仮に解く「仮放免」の申請に対する審査が長期間かかることや不許可の理由が明確ではないことなどに疑問や不満をもった同センター「7Aブロック」の収容者数十人が座り込みやハンストを実施し、法務大臣や同センター所長宛の「上申書」を提出していた。3月27日には、センター側が収容者の座り込みを強制排除した際、日系ブラジル人男性一人が右腕にケガをし「全治3週間」と診断され、「上申書」ではその「謝罪と治療」も求めていた。

センター側は4月6日になって「回答書」を壁に貼り出すとともに、同日夜には処遇責任者が収容者との話し合いの場を持ったという。ハンストをしていた収容者に面会をした「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表によると、回答書には、(1)この施設は帰国するための施設であなたたちは帰国しなければならない(2)仮放免審査を短期間にという要望については個々人の事情を審査しなければならないのでどうしても一定期間かかる(3)ケガをした方には必要な治療はしており、今後も申請があれば外部の病院で受診させる――などと書かれていたという。

収容者たちは、回答書の内容には不満はあるものの、センター側が話し合いの場を持ち、医療措置を約束したことから、ハンストを解除する決断を下したという。

問題は未解決のまま

今回の抗議行動は収束したものの、収容者たちが提起した問題、すなわち、(1)申請(難民申請、仮放免申請)後の審査に要する期間が長いこと(2)したがって長期収容となり心身に多大な負担をかけること(3)認定・許可の件数の少なさや不認定・不許可の理由が明確ではないこと――などは未解決のままだ。これら日本の難民行政の問題点については国連人権機関からも再三の是正勧告を受けている。

外国人収容施設はこの牛久(東日本入国管理センター、収容定員約700人)のほか、西日本入国管理センター(大阪府茨木市、同約300人)、大村入国管理センター(長崎県大村市、同約800人)の計3カ所があり、そのほか昨年11月22日にスリランカ人が死亡した東京入国管理局をはじめ、大阪、名古屋などに入国管理局の行政事務を扱う地方部局がある。

牛久では今回の抗議行動で、高血圧の持病のあるイラン人男性がハンスト中の4月2日に倒れ、緊急搬送される事態も発生した。入管施設での最近の死亡事件としては、後述する4件(うち2件が牛久収容所)があるが、このほか表面に出ない緊急搬送などが多数あると思われる。入管・難民行政のあり方を抜本的に変えない限り、今後も最悪の事態が続く可能性がある。

◇最近の入管施設での死亡事件
▼ ロヒンギャ難民Hさん死亡(2013年10月・東京入国管理局)
▼イラン人Sさん死亡、カメルーン人Wさん死亡(2014年3月・東日本入国管理センター)
▼スリランカ人Nさん死亡(同年11月・東京入国管理局)

(かたおか のぶゆき・編集部)

人種差別の実態を報告――目そむける日本政府

日本における差別の実態について生の声を聞く外国大使館関係者ら。(撮影/片岡伸行)

日本における差別の実態について生の声を聞く外国大使館関係者ら。(撮影/片岡伸行)

国連から何度も勧告を受けながら日本政府が放置し続けている人種差別の実態について、駐日外国大使館関係者らに生の声を聞いてもらおうという「2015年国際人種差別撤廃デー記念集会」が3月18日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。85団体、30個人の加盟する人種差別撤廃NGOネットワークが主催した。

「ストップ レイシズム! ストップ ヘイト・スピーチ!」と題する集会では、▽部落差別による結婚の破談▽土地・文化・言葉を奪われたアイヌ民族の現状▽日本による武力併合後は米軍基地が作られ自己決定権を奪われている琉球・沖縄▽フィリピンからの移住女性への暴力と在留資格問題▽日系ブラジル人の子どもの教育問題▽高校無償化から除外された朝鮮学校差別と在日コリアンへの悪質なヘイトスピーチ――などの事例が当事者の口から語られた。

世界177カ国が締約国となっている人種差別撤廃条約に、日本は1995年に加盟。条約締約国は国内で条約を完全実施するという義務を負う。だが日本は、人種差別や憎悪の扇動を禁止し処罰を求める同条約4条について、表現の自由を理由に「留保」している。国連での過去3回の審査でも「人種差別禁止法制定」などの勧告や懸念の指摘を受けてきたが、解決に向けた措置を講じていない。

当事者からの報告を受け、主催者側から師岡康子弁護士が「人種差別問題は歴史的、構造的な問題で、植民地支配と切り離せない」とし、「一番の問題は日本政府が差別の実態に目をそむけ、自ら差別的政策を行ない、これを認めないこと」と指摘。「小手先の運用改善ではなく、人種差別撤廃基本法の制定を」と提言した。会場にはアジア、欧米、中東、アフリカなど28カ国の大使館関係者をはじめ、9人の国会議員も参加。当事者の声を表情を曇らせながら聴いていた。

(片岡伸行・編集部、3月27日号)