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自民・公明、安保法制の方針に実質合意――「憲法」骨抜き、戦争への道

自民、公明両党は3月20日、集団的自衛権の行使を含む安全保障法制の方向性を示した共同文書に合意した。この日は文面の確認だけで終わり、協議らしい協議は6回しかなかった。毎回、政府案を公明党が押し返す形で議論が行なわれたが、憲法で禁じた「海外における武力行使」に歯止めがかかったようにはとてもみえない。

法案をめぐる与党協議は4月13日の週から再開されるが、安倍晋三首相の意向を反映した法案となるのは確実で、一強多弱の国会では、憲法違反が強く疑われる法律が成立する見通しとなった。

首相官邸と自民党は与党協議の前に毎回、打ち合わせており、官邸の指示通り、「高めのボール」を投げて、公明党に譲歩する余地を残した。共同文書には、自衛隊の活動について、公明党の主張した通りに(1)国際法上の正当性、(2)国民の理解と民主的統制、(3)自衛隊員の安全確保、が盛り込まれたが、本来は最初から政府案に盛り込まれるべき内容であり、出来レースと批判されても仕方ない。

前回も同じだった。昨年5月から11回の与党協議でその回数を超える15事例を議論し、公明党の問題提起でいずれも生煮えになったにもかかわらず、予定通り6月に協議を終えて7月1日の閣議決定を迎えた。与党協議の裏で自民党の高村正彦副総裁と公明党の北側一雄副代表との間で手打ちが行なわれたからである。

その後、安倍首相は閣議決定にはなかった集団安全保障措置、すなわち国連の多国籍軍への参加まで言い出し、2月に再開された与党協議は「米軍以外の他国軍の防護」など閣議決定にはなかった事例まで踏み込んだ。

大風呂敷を広げた結果、自衛隊の活動はとめどなく広がり、武力行使のハードルは極端に下がった。周辺事態法で「含まないものとする」と明記される他国軍への弾薬提供や、発進準備中の航空機への給油も認めることになった。

政府は、この2点について「大いに憲法上の適否について慎重に検討を要する問題」(1997年11月20日衆院安保委員会、大森政輔内閣法制局長官 !当時@)との見解を表明している。一転して認める理由を政府は「米国からニーズがあったため」と説明するが、それで憲法解釈の変更が許されるのだろうか。国会で議論になるのは間違いない。

【いずれ国民の生活も圧迫】

理解困難なまま法案化される内容もある。他国の戦争を支援する後方支援について、共同文書は「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」を周辺事態法の改正で対応し、「国際社会の平和と安全」を目的にした後方支援は新たに定める恒久法(新法)にする2本立てとした。

周辺事態法で支援できる範囲を日本周辺から世界へと拡大し、しかも米軍以外の軍隊も支援できるというのだ。そうなると、世界中どこでも、どんな軍隊にも後方支援できるという新たな恒久法による対応と変わりないことになる。

これは法律を2本立てとすることにより、いかなる場合でも自衛隊の後方支援を可能にする狙いと考えられる。どちらの法律を根拠にするかは時の政権のさじ加減ひとつというわけだ。

「時の政権の判断次第」がより明確にわかるのは、集団的自衛権の行使、他国軍への後方支援など、いずれの事態においても「原則国会の事前承認を要する」とした点にある。国会開会中であっても、時の政権が「急を要する」と判断すれば、事後承認が認められる。特定秘密保護法が施行された現在、事後承認で国会の判断に必要な情報が提供される保障はない。

安倍首相の思い通りの法律をつくり、その法律に従って思い通り自衛隊に武力行使させる。一連の安保法制とは、憲法改正を抜きにして日本を「戦争ができる国」につくり変える壮大な仕掛けである。いずれ自衛官の戦死に向き合い、防衛費は数兆円規模で膨れ上がって国民生活を圧迫することになる。政治家に、そして私たちにその覚悟があるだろうか。

(半田滋・『東京新聞』論説兼編集委員、3月27日号)