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国立競技場解体で騒音や粉塵――住民放置の工事進む

2015年3月5日3:52PM

2020年東京五輪などに向けて新設される国立競技場。JSC(日本スポーツ振興センター)を施主に昨年7月より行なわれる予定だった解体工事は、二度の入札やり直しの末、三度目の入札で業者が決まった。二度目の入札では、入札を取り消された業者から、官製談合が疑われる経緯について内閣府に異議申し立てがあり、その報を受けた下村博文文科相は「談合が疑われたため警察庁に通報した」と国会答弁で明らかにしたが、以降の進展は明らかにされぬまま、同年12月末から工事は開始。異議申し立てをした(株)フジムラが北工区を、談合を疑われた関東建設興業(株)が南工区を請け負うことになった結果も解せない。

騒音や粉塵を懸念する地域住民が置き去りにされたままの着工だ。昨年9月に行なわれた住民説明会では、現競技場に使用されているアスベスト(石綿)について心配する声が上がったが、「まだ業者が決まっていないので」と具体的な説明を避けた。業者が決定してから初となる説明会(1月7日)では、翌週からアスベストの除去工事が行なわれることが告知され、「資料にあるように発じん性(=飛散のしやすさ)の高いものはありません」と最低限の説明に留めた。が、この資料自体、9月時点での資料とほぼ同様のもの。

アスベストの発じん性はレベルが高い順にレベル1→3に分類されるが、今回はレベル2、3のみでレベル1の吹付け材は使用していないと説明が繰り返された。

中皮腫・じん肺・アスベストセンター事務局長の永倉冬史氏は「これでは説明不足。住民とのリスク・コミュニケーションが図られているとは言い難い。各レベルのアスベストが競技場のどこにあるのか、そして飛散レベルを決める事前調査を誰がどのように行なったのかを最低限明らかにするべき」と言う。アスベスト除去は2月末に終了する。巨大事業に押さえつけられるように、地域住民の声が届かぬまま、急ピッチで解体工事が進む。

(武田砂鉄・ライター、2月20日号)

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