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「クビになるよ」と津波対策を封殺──福島原発告訴団、旧保安院職員ら9人を告訴・告発(明石昇二郎)

1月13日、告訴・告発状の提出後、東京・霞が関で記者会見する同告訴団の武藤類子団長。(中央。撮影/明石昇二郎)

1月13日、告訴・告発状の提出後、東京・霞が関で記者会見する同告訴団の武藤類子団長。(中央。撮影/明石昇二郎)

1月13日、福島原発告訴団は東京地検に対し、「東京電力と旧原子力安全・保安院は想定を超える津波を予見し、対策の必要性を認識していた」として、業務上過失致死傷容疑で関係者らを刑事告訴・告発した。福島第一原発事故の刑事責任をめぐり、検察審査会から「起訴相当」との議決を受けたにもかかわらず、東京地検公安部の不甲斐ない再捜査が続く中、事故を起こした責任を追及する手が、ついに経済産業省の官僚たちにも及んだのだ。

同告訴団の弁護団によると、告訴・告発された東電関係者は、福島第一原発の津波・活断層対策を担う「耐震バックチェック」担当だった酒井俊朗・元土木グループ・グループマネージャー、高尾誠・元原子力耐震技術センター土木調査グループ・グループマネージャー、西村某(役職不明)の3人。うち酒井、高尾の2人は、東電の津波対策先送りに手を貸していた土木学会の津波評価部会にも関わっていた。

旧保安院関係者は、森山善範・元原子力発電安全審査課長(現・日本原子力研究開発機構理事)、名倉繁樹・元原子力発電安全審査課審査官(現・原子力規制庁「地震・津波安全対策」安全審査官)、野口哲男・元原子力発電安全審査課長、原昭吾・元原子力安全広報課長の4人。このほか、氏名不詳の原子力安全委員会と電気事業連合会の津波対策担当者各1人の9人。

再稼働の審査者までいる

事故発生前年の2010年、福島第一原発3号機では、初めて「ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料」を装荷するプルサーマル発電が計画されていた。

告訴・告発状によると、森山氏と名倉氏は、09年9月に東電から、試算した津波高が8~9メートルになるとの報告を受けていながら、対策を講じるよう指示しなかった。さらに森山氏は、10年に名倉氏らに送った電子メールの中で、

「福島(第一原発)は、敷地があまり高くなく、もともと津波に対して注意が必要な地点だが、(869年の)貞観の地震(による津波)は敷地高を大きく超える恐れがある」

と、津波対策の必要性を認識していながら、

「(旧保安院が実施していた「耐震バックチェック」で)津波の問題に議論が発展すると、厳しい結果が予想され(中略)対策が必要になる可能性も十二分にある」

と指摘。耐震バックチェックが終了すれば東電に津波対策を指示せざるをえず、その煽りでプルサーマル発電の開始時期が遅れるのは必至の情勢だったため、プルサーマル開始を優先し、「耐震バックチェックの終了」を先延ばしにしているうちに大震災に遭い、大事故に至っていた。

野口氏は、大臣官房参事官としてプルサーマルを推進する仕事をした後、原子力発電安全審査課長の職に就いた。津波対策をとるべきだと主張する部下の官僚に対し、

「保安院と原子力安全委員会の上層部が手を握っているのだから、余計なことはするな」

などと叱責。実質的な人事権者でもあった原氏は、

「余計なことをするとクビになるよ」

などと脅し、津波対策を主張する旧保安院内の声を封殺していた。

こうした実態は本来、先の告訴・告発を受理し、不起訴にしていた東京地検公安部の捜査によって明らかにされるべきものだろう。だが、政府事故調査委員会の調書が公開されたことで明らかになった。

告訴・告発状の提出後、記者会見で同告訴団の弁護団は、今回告訴・告発した者の中には「自分で事故を引き起こしていながら、事故後、現地対策本部の統括をやっていた人(原氏)」や、「現在、原発再稼働の審査をしている者(名倉氏)」までいることを明らかにし、「過去の問題ではなく、今の問題」と訴えた。

告訴・告発状は1月16日、正式に受理され、同地検公安部が引き続き担当することになった。

(あかし しょうじろう・ルポライター。1月23日号)

「戦争」危惧する女性たち、国会周辺を包囲――防衛予算は過去最大の規模に

「安倍政権に女性たちからレッドカード」とのメッセージも。17日、永田町。(撮影/宮本有紀)

「安倍政権に女性たちからレッドカード」とのメッセージも。17日、永田町。(撮影/宮本有紀)

国会周辺は1月17日、オーバーや帽子、マフラーなど赤い衣類を身につけた約7000人の女性たちによって取り囲まれた。

今年最初の国会での大規模な抗議行動となったこの取り組みは、「『女の平和』ヒューマンチェーン(人間の鎖)」と銘打ち、「集団的自衛権の行使容認反対!戦争のできる国にしない!」をスローガンにして、安倍晋三首相にレッドカードを突き付けようという趣旨だ。

幼少の頃、静岡県沼津市で空襲を体験し、焼け跡をさまよった経験を持つ横湯園子元中央大学教授は、「米国と一緒になって戦争し、殺したり殺されたりするのは絶対にいやです。今こそ人口の半分を占める女性が先頭に立って、平和憲法を守ろう」と呼びかけた。

だが安倍政権は、「戦争のできる国」にする姿勢を露骨に強化している。13日に明らかになった新年度防衛予算の総額は、前年度比2%増の4兆9801億円と、過去最大の規模。その内容も、垂直離着陸輸送機V22(オスプレイ)5機を始め、水陸両用車AAV7が30両など、自衛隊の海外戦闘も念頭に置く「海兵隊」化を目指した兵器の大盤振る舞いが目立つ。

こうした装備面の変化は、昨年7月の「集団的自衛権行使容認」の閣議決定強行と連動している。安倍政権は、日本が直接攻撃されなくとも、米国等の同盟諸国が攻撃されることで「わが国の存立や安全が脅かされる」と解釈される「存立事態」の対処を重視。地理的な限定や、「非戦闘地域」という活動領域の制限も外して自衛隊の海外での武力行使を可能にする「安全保障法制の大枠」を、この3月にも提示する予定だ。

同時に自衛隊の海外派兵を、これまでのような国会の時限立法による「特別措置」ではなく、政府の一存でいつでも可能にする「恒久法」も、すでに検討に入った。戦後70年の今年、平和憲法の命運がかかる闘いが山場を迎える。

(成澤宗男・編集部、1月23日号)