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朝鮮帰還者の人権救済申し立て――自由往来の実現を

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への帰還事業で同国に渡った9万3400人(うち日本国籍保持者約6800人)の調査と自由往来の実現などを求めて、日本に住む脱北者の川崎栄子さん(72歳)ら12人が1月15日、日本弁護士連合会人権擁護委員会に「人権救済申立書」を提出した。

申立書によると、1959年から84年まで続いた帰還事業で北朝鮮に渡った人たちは、事前に宣伝された「地上の楽園」とはかけ離れた境涯に置かれた。思想・信条・表現の自由はなく、国内の移動や居住・出国の自由も許されず、日本から来たという理由で監視・差別されるなど人権を侵害されたほか、強制労働や暴力、強かんなどが蔓延する政治犯収容所や一般収容所に送られる人も多くいたという。これらは「人道に対する罪」にも当たるとし、北朝鮮へ渡航したことで侵害された人権の救済を求めるのが申し立ての趣旨だ。

申し立ての相手方は日本と北朝鮮政府、それに帰還事業に協力した在日本朝鮮人総聯合会、日本赤十字社と北朝鮮赤十字会、赤十字国際委員会の6者。とくに日本政府には北朝鮮への働きかけと協力要請を行なうとともに、「帰還事業の調査委員会」を設立して同事業の検証と被害者への補償に向けた調査などを行なうよう求めている。

帰還事業からはかなりの時が経過しているが、2013年に設置された国連北朝鮮人権調査委員会は昨年2月、拉致被害者と同様、帰還事業を「人道に対する罪」と認定。申立人らはそれを踏まえ、関与した日本赤十字社や赤十字国際委員会にも協力を要請した。

昨年5月に日朝で合意した「拉致被害者など全ての日本人調査」が行き詰まりを見せる中、川崎さんは「拉致問題と帰還事業で人権を侵害された人たちの救出は同時に解決すべき問題。今回の救済申し立てで日本の世論が高まってくれれば」と話す。川崎さんは昨年11月に設立された脱北者支援のNGO「モドゥモイジャ」(みんな集まろう、の意)の代表を務める。

申し立てに関わった白木敦士弁護士は「帰還事業に関与した当事者の責任と被害回復措置について、日本弁護士連合会による意見表明を求めた点で意義がある」とし、問題解決へ向け多方面からのアプローチを目指すとしている。

(片岡伸行・編集部、1月23日号)