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住民らは最高裁で争う方針――携帯電波で不調訴え

2015年1月22日7:13PM

健康被害を多発させている小林市内のドコモ基地局。電磁波の影響が疑われる。(撮影/加藤やすこ)

健康被害を多発させている小林市内のドコモ基地局。電磁波の影響が疑われる。(撮影/加藤やすこ)

福岡高等裁判所宮崎支部は昨年12月5日、KDDI株式会社(田中孝司社長)が設置する基地局の操業停止を求めていた住民の控訴を、棄却する判決を下した。

宮崎県延岡市内で2006年に同基地局が建ってから、周辺の住民には耳鳴りや頭痛、睡眠障害などの健康被害が発生。住民30人は09年に提訴したが、稼働後に健康被害が多発したことは認められたものの、電磁波との因果関係は認められなかった。

控訴審で原告側は、九州大学の吉富邦明教授(環境電磁工学)に測定を依頼し、被曝によって耳鳴りが起きると世界保健機関も認めた「マイクロ波ヒアリング効果」が発生しうるレベルだと主張した。

住民の症状は同効果と酷似するが、裁判所は、基地局の電波で同じ効果が起きるという公的見解がなく、影響が発生していると認めるのは困難と判断。原告側が複数の科学的・医学的な証拠を示したにもかかわらず、詳細に検討しないまま控訴人らの「立証は不十分」と結論づけた。原告住民は12月19日、最高裁に上告した。

一方、同県の小林市では「携帯電話等中継基地局の設置又は改造に係る紛争の予防と調整に関わる条例」が昨年12月に市議会で可決された。基地局を新設・改造する際は住民への事前説明や、予定地周辺に計画概要を記した標識を設置することなどを求めるもので、今年4月から施行される。

同市では、基地局に近い保育園で鼻血を出す園児が増え、健康面への不安が高まっていた(本誌14年9月19日号で既報)。住民は「電磁波問題を考える小林市民の会」を結成し、昨年3月、約2400筆の署名とともに市へ条例制定を陳情した。同会の住民は「条例が制定され安心。健康被害を解決する第一歩を踏み出せた」と喜んでいる。

(加藤やすこ・環境ジャーナリスト、1月9日号)

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