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「脱原発」訴え都内で5500人規模の集会――「川内原発を再稼働させるな!」

2014年7月16日10:50AM

デモ行進で「脱原発」を呼びかける俳優の木内みどり氏(右から3人目)ら。(撮影/斉藤円華)

デモ行進で「脱原発」を呼びかける俳優の木内みどり氏(右から3人目)ら。(撮影/斉藤円華)

首都圏反原発連合、さようなら原発1000万人アクション、原発をなくす全国連絡会が主催する脱原発集会(「さようなら原発★首都大行進」)が6月28日、東京・明治公園で開催された。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)で再稼働に向けた国の適合審査が優先的に進んでいることを踏まえたもので、当日、会場には約5500人(主催者発表)が集まった。

鎌田慧氏(ルポライター)は冒頭、「川内原発が秋にも稼働されようとしている。しかし今夏は原発稼働ゼロ。これは脱原発を求める市民の力の成果だ」と挨拶。

次いで、伊東達也氏(原発をなくす全国連絡会)は東電原発事故の影響に喘ぐ福島の窮状について、「川内原発の再稼働を巡る状況が緊迫しているが、その一方で福島は今も苦しみの中にある」と訴えた。「避難生活を送る人の6割が心身の不調を訴え、自殺者は54人、仮設住宅で孤独死した人は34人。ある町では職員の内15%がうつと診断されている。震災関連死は1729人に達した。原発から流れ出る汚染水は際限がなく、収束作業に当たる原発労働者には危険手当も出ない」(伊東氏)。

ミサオ・レッドウルフ氏(首都圏反原発連合)は、「東電原発事故を『福島』という言葉で括ることが風評被害を生んでいる」とした上で、「汚染には地域差があり、関東にも及んでいることを踏まえれば、事故に対して一人ひとりが当事者性を持つ必要がある」と提起。

内橋克人氏(経済評論家)は「集団的自衛権の閣議決定が目前に迫っている。支配層が自衛を口実に核武装を求めているのは明らか。原発は電力需要のためではなく、プルトニウムを作るために動かされる」と警鐘を鳴らした。

安倍内閣が原発維持に向けた政策の地ならしを矢継ぎ早に進める中、関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、政府の原発推進姿勢に対する楔となった。海渡雄一弁護士は「判決文では、原発の危険性は東電原発事故で明らかとなったとし、この判断を回避することは裁判所の責務を放棄することだ、としている」と切り出し、「原発はすでに5回も基準地震動を上回る地震の揺れに見舞われており、そうした現実を無視してきたことが東電原発事故を招いた。テクニカルな科学論争に分け入らず、国の判断の誤りを指摘した今回の判決は論理的かつ科学的だ」と、意義を強調した。

「人格権よりも経済活動が劣位にあることを明記し、国民が暮らす豊かな国土が失われたことこそが国富の喪失だとしたこの判決を、今後の裁判でも守りたい。福井地裁判決を、日本の司法の揺るがぬ立脚点にしたい」(海渡氏)

【避難計画も未整備】

野呂正和氏(川内原発増設反対鹿児島県共闘会議)は、「避難計画には実効性があるのか」と疑問を投げ、「県知事と県議会議員に公開質問状で質したら、自民党と公明党が会派ぐるみで『わからない』と答えた。原発から半径30キロメートル圏内には避難場所しか用意されず、食料の準備やスクリーニング検査、避難用のバスの手配などすべてが県任せ」と述べ、避難計画が整っていないことを暴露した。

「原発事故から3年余りが過ぎ、健康被害は風評に言い換えられた。しかし現実には90人の子どもに甲状腺がんの疑いやがんが生じている。被曝の放置こそ福島への差別。政府は避難と保養の取り組みを進めてほしい」と訴えたのは、「原発いらない福島の女たち」の人見やよい氏。「国や東電は、口では福島に寄り添うと言うけれども、本当に寄り添ってくれたのは福井地裁判決。何度も読み返して涙があふれた」と語る。

参加者は集会後、代々木公園に向けてデモ行進を行なった。横浜市から来たパート従業員の女性(40歳)は「デモに対して冷ややかな風潮があるのは知っている。しかし原発はなくても大丈夫であり、核廃棄物処分のコストまで含めれば原発の費用は決して安くないという認識が、もっと世の中に浸透すればいいと思う」と話した。

(斉藤円華・ジャーナリスト、7月4日号)

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