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規制委に「原子力ムラ」重鎮――原発再稼働の布石

原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理と大島健三委員が9月に任期満了を迎えるにあたり、政府は5月27日、二人を交代させる人事案を国会に提示した。原発直下の活断層を厳しく指摘してきたことで自民党など政財界の原発推進派から批判されていた島崎氏の再任はなくなった。

安倍政権が示した人事案は、田中知東京大学大学院教授と石渡明東北大学教授の二人。田中氏は元日本原子力学会会長で、東京大学「原子力教育研究イニシアチブ」の拠点リーダーをつとめるなど、推進派の重鎮であった。

超党派の議員連盟「原発ゼロの会」は30日、田中氏の起用は「原子力ムラとの決別」をうたった原子力規制委員会設置法の趣旨に反するという談話を発表。2012年に民主党政権が規制委を発足させた際にさだめた人選基準に抵触するとした。この基準は、就任前直近3年間に「原子力事業者等及びその団体の役員、従業者等であった者」または「個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者」を欠格要件としている。

田中氏は11年~12年、日本原子力産業協会の役員をつとめ、東電記念財団から11年度に50万円以上の報酬を得ていた。日立GEニュークリア・エナジー、太平洋コンサルタントなどから100万円以上の寄付も受けている(11年度)。

井上信治環境副大臣は28日の参議院原子力問題特別委員会で、民主党政権時代の基準を適用せずに人選したことを明らかにした。「ゼロの会」は田中氏の人事案の撤回と再検討をもとめているが、政府はおし通すかまえだ。

30日には九州電力・川内原発の稼働停止を求める訴訟の原告の一部が、稼働差し止めを九電に求める仮処分を鹿児島地裁に申し立てた。規制委は同原発の審査を全国でもっとも早く進めており、田中氏の規制委就任は、再稼働への大きな布石となる。

(野中大樹・編集部、6月6日号)

『週刊金曜日』を批判する天木直人氏への反論

外交評論家、天木直人氏の「集団的自衛権行使容認で血迷った週刊金曜日」と題する記事が2014年6月18日9時5分、ヤフーニュースに掲載された。小誌記事の部分引用で誤った印象を読者に与える内容である。天木氏こそ“血迷って”いるのではないか。

小誌は一貫して集団的自衛権に反対しており、天木氏が批判する6月13日号の特集タイトルは「集団的自衛権の詭弁」。天木氏が問題視する岡田克也氏の取材記事もこの特集に含まれ、当該記事にはこの見出し「集団的自衛権の詭弁」も刷り込まれている。

天木氏は記事でこう書く。少し長いが正確に引用する。
〈憲法9条を守ることを最大の売りにしてきたはずの週刊金曜日が、この一番重要な局面で血迷った。
発売中の6月13日号に、宮崎信行という元日経新聞政治部記者の岡田克也民主党元外相へのインタビュー記事が掲載されている。
そこで岡田克也は堂々と次のように語っている。
「私の基本的考え方は、集団的自衛権として整理されている事例をすべて頭から排除するものでは必ずしもないんです」と。
「個別的自衛権、警察権で対応できなければ、憲法改正も含めて認めるというのが私のスタンスです」と。
こう、岡田氏に言わせるだけ言わせておいて、宮崎氏は次のようにそのインタビュー記事をしめくくっている。
「野党一の安全保障の論客として、総選挙に向けて、集団的自衛権の国会審議では中心に居続けそうだ」と。〉
(注)この小誌引用には2カ所ほど細かなミスがあるが、ここではおいておく。

岡田氏は確かに取材に対して〈具体的な事例で検証していく中で、個別的自衛権、警察権で対応できなければ、憲法改正も含めて認めるというのが私のスタンスです。〉と述べている。

しかし、この文言に続けて岡田氏はこう述べる。〈ただ、現時点で具体的なものは思い浮かばないです。おそらくあるとしても非常に限定されたものだと思いますが、議論をやってみないと分からないです。〉と続けている。岡田氏の主張の眼目が、議論をしてもよいが必要な事例は思いつかない、という点にあるのは明らかだ。

議論をすることで、安倍晋三首相が唱える集団的自衛権のおかしさが浮き彫りにもなろう。記事はこのあとこう続く。

〈「憲法解釈の見直し」については、自民党内で、今国会の会期中に閣議決定すべきだとの日程感が出ている、これについて、岡田氏は「法解釈の変更の閣議決定を今の会期中にするというのは論外です」とピシャリ。「国会で濃密な議論をやって、国民がこの問題の本質を理解すると。半分以上の国民がやむを得ない、というところまで持っていってから閣議決定すべきです。国民を置き去りにして一内閣が決めることはあってはならない」と国会審議を求めた。〉

残念ながらいまの国会情勢では憲法9条を守るのに、共産党・社民党など護憲政党だけでは困難なことは論をまたない。その場合、民主党で影響力をもつ最高顧問の一人がどのような考え方を持っているのかについて情報を読者に提供するのも小誌の役割だと、私は考えている。

小誌に登場する人物がすべて小誌と同一な思想信条をもっていないといけないわけではないし、小誌に登場した人物の主張に小誌がすべて賛同しているわけでもない。そんなことは当たり前ではないか。

そもそもこの記事の眼目は、集団的自衛権の行使容認に安倍首相が猛進している背景に米国の圧力があるとの見方に対し、岡田氏が外相時代の経験を語った部分である。

〈米国から集団的自衛権を行使してほしいと外相時代に言われたことはあるかとの筆者の問いには「外相時代に米国から言われたことは一度もありません。日本がやると言えば、米国はどうぞ、どうぞと言うでしょうが」と語り、米側の要求ではないとの認識を示した。〉

記事のタイトルもリードも、この部分を強調している。岡田氏が言うとおり、米側の圧力でなければ安倍首相の異様さがさらに浮き彫りになるではないか。

天木氏は記事でこう批判する。
〈笑わせるではないか。
大変な持ち上げようである。
こんな自民党の改憲論者と同じような事を言うやつを、このタイミングで登場させる週刊金曜日は血迷ったか。
いまこそ憲法9条を守らねばならないと願う者たちへの、驚くべき背信である〉

天木氏は悪意に基づいて小誌を批判しているのか。それとも、当たり前の読解力すら失ってしまったのか。天木氏は小誌になんども登場いただいているだけに、前者であろうが後者であろうが、極めて残念である。

(伊田浩之・『週刊金曜日』副編集長)