衆院通過の難病新法に反対の声――呼吸するのも有料に!?
2014年6月6日7:29PM
「息をするだけで、お金を取らないでください」――。
体中の筋力が徐々に低下する筋ジストロフィーの患者や家族らが、悲痛な思いを訴えた。5月16日に東京・永田町で開かれた「人工呼吸器使用者の患者負担ゼロを求める国会内集会」である。
難病の範囲や患者の自己負担を改める「難病新法」(難病の患者に対する医療等に関する法律)案には、「人工呼吸器等装着者の負担限度額は、所得区分にかかわらず月額1000円とする」と盛り込まれている。現在は自己負担ゼロで人工呼吸器を使用できるが、法案は全会一致で衆議院を通過しており、このままだと来年1月から「空気も有料」となってしまう。
主催した青森県保険医協会の大竹進会長は「月1000円くらいなら負担すべきだと思うかもしれないが、人工呼吸器を使う人の収入は障害年金と家族の支援しかない」と指摘した。大竹氏によると、かりに月1000円の自己負担をゼロにしても、公費で賄う金額は年間約2億3550万円にとどまるそうだ。「公費負担の抑制というより、応益負担にすることが目的では」という見方もある。
また同法案は、同じ人工呼吸器でも、気管切開ではなく鼻マスクなど取り外し可能なタイプは所得に応じて負担額が決まるとしている。最高で月額3万円にもなる。
鼻マスクは、言葉を発しやすくなるなど、多くのメリットがある。筋ジストロフィー患者で、鼻マスクによる人工呼吸器を24時間使用している保田広輝さん(23歳=神戸市)は「呼吸器を使っていなかったら、私は19歳で死んでいました。気管切開だけでなく、鼻マスクの患者も人工呼吸器で延命しています。呼吸器使用者を区別しないで」と訴えた。
保田さんたちは、自己負担ゼロの継続を求めて署名活動をしている。すでに1800筆超が集まり、今国会が終わるまで続ける予定だ。
(越膳綾子・フリーライター、5月23日号)