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原発再稼働、核燃料サイクル維持、新増設も含み――「エネルギー計画」が大転換

2014年4月28日6:49PM

国の中長期的なエネルギー政策の指針を示す「エネルギー基本計画」が4月11日、閣議決定された。民主党政権下で掲げられた「原発ゼロ」の方向性と決別し、原発推進路線へと180度転換した。

再稼働のほか核燃料サイクルの推進も明記し、原発の新増設にも含みを持たせるなど、経済界の意向を重視する安倍政権の姿勢が鮮明になっている内容だ。

閣議決定後の記者会見で、茂木敏充経産相は「(基本計画は)原発の依存度を低下していくということを明確に示している」と言い放った。日本世論調査会の世論調査で7割が脱原発を求める回答を示している中、原発推進路線への転換に対して、不安や反発を抱く人や関係自治体は少なくない。そうした意見に、政府はどう説明していくのか。

会見で、記者の質問に対し茂木経産相ははぐらかしに終始した。記者の「原発推進」という言葉には「原発を活用していくと書いてありますか、これ?」と反論。原発依存度を軽減させる具体的な道筋について問うと「読めばわかることは、わざわざ繰り返す必要がない」と、傲慢な態度を崩さなかった。ちなみに、会見の時点で基本計画の全文は経産省から配布されておらず、茂木経産相の「読めばわかる」という答弁は、記者たちを唖然とさせたという。

こうした原発推進への転換という印象を薄めようとする思惑は、政府全体からにじみ出ている。菅義偉官房長官は会見で、基本計画について「原発事故を受けて、被災された方々の心の痛みとしっかりと向き合い、福島の復興再生を全力で成し遂げる」と説明し、政策転換については「震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙に見直す」との言い回しで、原発についての説明は避けた。その上で、再生可能エネルギーの導入を「最大限加速させる」とし、関係閣僚会議を開くなど積極的な取り組みを行なっていることを強調している。だが、この説明を正面から信じるわけにはいかない。

政府が4月3日、自民党と公明党による基本計画の与党協議に示した基本計画の案では、序文に当たる「はじめに」から、2月に決定した政府原案には記載されていた東京電力福島第一原発事故への「深い反省」が削除されていた。これに代わって基本計画の策定経過を説明する内容が加えられていたが、自民党内からも批判が出されて、土壇場で復活するという経緯があった。

政府が強調する太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーについても、公明党が与党協議で具体的な数値目標を入れるよう強く求めたのに対し、経産省が強く抵抗。最終的には、過去の政府目標値を示した上で、これを「さらに上回る」導入を目指すという、実質的な中身のない玉虫色の表現で決着した。経産省の幹部は「再生可能エネルギーだけ数値目標を出すのは原発を動かしていくことへの足かせになりかねなかった」と話し、抵抗の背景に、再稼働を虎視眈々とねらう意図があったことをうかがわせる。

さらに、懸念されるのが原発新増設の可能性だ。安倍晋三首相は11日の衆院本会議で、新増設に関する質問に「現在のところ想定していない」と答弁し、明確な否定を避けている。基本計画も、原発について安定供給やコスト低減などの観点から「確保していく規模を見極める」とし、新増設への解釈をあいまいにした。一方で、次世代原子炉である高温ガス炉の研究開発を進めるという一文を明記。「研究開発と新増設に関連はない」(資源エネルギー庁)としているが、原発を今後も手放したくないという意図が色濃くにじむ。

政府の方針転換を見据えるかのように、衆議院は4日、トルコやアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出を可能にする原子力協定締結の承認案件を賛成多数で可決した。福島の経験を忘れ去ったかのように、原発推進の路線へばく進する安倍政権。基本計画には、その前のめりさと、ちぐはぐさが凝縮されている。

(北方農夫人・ジャーナリスト、4月18日)

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