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国家総動員体制を想起させる異常さ――『琉球新報』に防衛省が訂正要求

2014年3月24日6:32PM

 防衛省が、『琉球新報』の記事に関し、新聞業界団体である日本新聞協会にまで“防衛省事務次官名”での申し入れ文書を送りつけ、波紋を呼んでいる。

 発端は2014年2月23日付『琉球新報』(1面)「陸自、石垣に2候補地/八島新港地区、宮良サッカー場/防衛省が来月決定」と題された記事。陸上自衛隊で新設される警備部隊の配備候補地について、独自取材で入手したニュースだった。機先を制されたかたちの防衛省は、発行元の琉球新報社に抗議し、訂正を求めた。同時に業界団体の日本新聞協会に対しても、「適正な報道を求める」などとする申し入れを行なっていたのだ。

 当該報道について『琉球新報』は、「十分な取材に基づいた報道」とし、訂正要求にも応じていない。また、『琉球新報』が報じた翌日、ライバル紙の『沖縄タイムス』が、「陸自配備、石垣に候補地/大崎牧場周辺など」と伝えた。防衛省は、これには抗議はしていない。どうも一貫性に欠ける。一方、沖縄県2区選出の照屋寛徳・衆議院議員は、自身のブログで「琉球新報社への抗議は報道統制だ!」と断じた。そして「石垣市の3か所を含む場所を選定し、陸上自衛隊の施設整備を計画していることは間違いない」と書いている。

 日本新聞労働組合連合会は、「安倍政権と防衛省は報道に対する弾圧行為を撤回し謝罪せよ」との声明を発表。「(政府が)自らの意に沿わない報道に対して被害者面することは犯罪的ですらある」「新聞協会と各新聞社の関係に上下関係はない。政府が業界団体に申し入れれば、そこに参加している会社は言うことを聞くという発想の裏には、戦前のように政府が新聞業界を管理しようとする意図が読み取れる」などと、手厳しく指弾した。

 特定秘密保護法を成立させ、憲法改悪を志向する安倍政権だけに、報道機関も組み込まれた国家総動員体制の悪夢を想起させる防衛省の異常な申し入れだった。

(丸山昇・ジャーナリスト、3月14日号)

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