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越冬救援キャンプを渋谷区が“襲撃”――重傷者も問答無用で強制排除

2014年1月28日6:05PM

「強制排除」に集まった警官隊=2013年12月29日午後10時半。(撮影/楡原民佳)

「強制排除」に集まった警官隊=2013年12月29日午後10時半。(撮影/楡原民佳)

 福祉のまち――東京・渋谷区(桑原敏武区長)の庁舎前の碑に刻まれた区民憲章を空々しく感じさせるような事件が起きた。昨年12月29日深夜、同区宮下公園に開設中だった生活困窮者のための越冬救援キャンプに対し、渋谷区土木清掃部(黒柳貴史部長)職員と警察官ら総勢約100人が“襲撃”をかけ、ボランティアと避難者あわせて数十人を追い出したのだ。

 キャンプには頭骨にヒビが入った重傷者ら数人の路上生活者が避難中だったが、職員や警官隊は問答無用で追い出し、周囲にめぐらされたフェンスの門に施錠した。「暴力をやめろ」「人殺し」などの怒号で騒然となった。

 毛布や食料などの救援資材が公園内に残されたが、当夜の回収を認めなかった。深夜厳寒の路上で行き場を失った避難者らはどうすればいいのか――ボランティアらは黒柳部長に迫った。しかし何ら策をとることもなく立ち去った。

 実は年末年始の福祉施策として、簡易宿泊所1床を用意する、24時間体制で生活保護申請を受け付けるなどの態勢をとっていたという。だが担当する生活福祉課との連携はなされていなかった。

 警官隊を先頭に力ずくで公園から追い出したことはVJU(ビデオジャーナリストユニオン)の記者が記録した映像にも映っている。 

そしてこの「強制排除」の法的根拠は疑わしい。渋谷区の説明も歯切れが悪い。

「公園の管理権に基づいて退去命令を出した。自主的に出て行っていただいたと理解している。不退去罪などではなく、警察や職員が実力で出したことはない。警察を要請したのは不測の事態を避けるため、警備のためだった」(吉武成寛公園課長) 

 矛盾する説明をしながら吉武課長は、「今回の件は『福祉のまち』とは関係ない」と言った。非人道的都市として「シブヤ」は世界に名を知られつつある。

(三宅勝久・ジャーナリスト、1月17日号)

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