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コンゴ日本大使館放火事件で疑惑浮上――地デジめぐる裏金隠しか!?

2014年1月20日5:43PM

 アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)の首都キンシャサで昨年6月に起きた日本大使館の放火事件をめぐり、さまざまな憶測が飛び交っている。警視庁は同12月、現住建造物等放火の疑いで、当時大使館の会計業務を担当していた3等書記官の外務省職員(30歳)を逮捕。公金横領目的の放火として調べを進めているが、背景には大使館のずさんな公金管理の実態とともに、裏金を隠蔽するための工作だったとの疑念も浮かび上がる。

 火災は、キンシャサにある民間ビル3~4階に入った日本大使館の4階部分から出火し、約220平方メートルを焼いた。4階には職員の政務室があり、中央部分が特に激しく燃えていたとされる。さらに、焼け跡から見つかった金庫は空の状態で、現地職員の給料など日本円で2200万円相当の現金がなくなっていた。報道によると、逮捕された職員は警視庁の調べに対し「現金を使い込み、証拠を隠すために放火した」と供述しているという。

 この事件について外務省は、金庫の鍵は主に逮捕された職員が管理していたとした上で、この職員が複数の同僚から借金をしていたほか、現地のカジノに出入りしていたといった情報を日本のメディアに流している。そこからは、事件が職員の個人的な動機による犯行であると印象づけたい、外務省の思惑が強く感じられる。

 だが、コンゴの日本大使館では、この事件の前から日本政府のプロジェクトをめぐる関係者の不可解な動きがあった。これには相当の裏金も使用されたとみられており、

これを隠蔽するために放火事件が起きたとの説が、関係者の間でささやかれている。

 そのプロジェクトとは、コンゴで進められていた地デジ(地上デジタル)システムの導入をめぐって、日本方式を採用させようというものだ。コンゴはアフリカの中心に位置し、人口も多いため、日本政府は日本方式売り込みでの重要地域と位置づけていた。

 現地ではヨーロッパ方式がライバルとして火花を散らせていたが、ここで日本政府は「顧問」としてあるコンゴ人男性を採用する。このコンゴ人男性は、日本で国会議員の秘書として活動し、テレビにも出演したことのある人物。自らが持つ部族などの裏ルートを使い、日本方式採用に有利になるよう工作をすると持ちかけ、日本政府がこれに乗る形となった。

 だが、実際には地デジを司る省庁との交渉や、日本政府とコンゴ政府との仲介といった役割はほとんど果たさないまま。結果としてヨーロッパ方式が採用となり、男性に交渉をほぼ丸投げにしていた大使館は本国から責任を問われる事態になった。

 ここで問題となったのが、交渉に使われた多額の裏金だ。そうした痕跡を消すのに、放火事件は手っ取り早く、かつ確実な手段といえる。現地の事情に詳しい関係者は「火災で燃えたのは公文書の倉庫とパソコン。使い込みの証拠を隠すには大げさで、不自然です。コンゴ政府の情報機関も『何か隠したいことがあったのだろう』といった見方を示していました」と話す。放火の動機についても「使い込みの事実をつかまれて利用されたのでは」と、懐疑的だ。火災当時、大使館の監視カメラは作動しておらず、公用車が炎を避けるように所定の位置から離れて駐車していたという説も、こうした見方を補強する材料となっている。

 こうした疑念について、外務省関係者は「考えにくいこと」としながらも「日本から遠く離れた国の公館(大使館)では、公金のチェックが甘く、いわば『利権の宝庫』となりやすい」と指摘。「税金という感覚ではなく、湯水のように使えるカネという状態にあったことが背景にあったのは間違いない。事件の温床は、世界中に散らばっている」と話した。

 外務省は全ての在外公館に公金管理徹底を求める訓令を出し、抜き打ち検査を実施するなどの再発防止策も発表した。だが、第三者の目が入らないままでの「再発防止策」からは、事件の深層を隠そうとする思惑すら感じられる。

(北方農夫人・ジャーナリスト、1月10日号)

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