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特捜チーム編成で、本腰捜査となるか――福島県警、告発状を正式受理

2013年10月28日4:56PM

記者会見で告発状の受理を報告する、福島原発告訴団の佐藤和良副団長(中央)。(撮影/明石昇二郎)

記者会見で告発状の受理を報告する、福島原発告訴団の佐藤和良副団長(中央)。(撮影/明石昇二郎)

 福島第一原発から高濃度の放射能汚染水を垂れ流し続ける東京電力と同社幹部らを公害犯罪処罰法(公害罪法)違反容疑で市民が訴えていた告発状を、福島県警察本部が一〇月一一日、正式に受理した。

 同日に受理されたのは、福島第一原発事故の刑事責任を問い続ける「福島原発告訴団」の武藤類子団長ら三人が、九月三日に刑事告発していたものだ。汚染水対策の責任は東京電力に課せられているが、東電は汚染水管理のために必要な注意義務を怠り、汚染水タンクから高濃度の放射能汚染水を漏洩させる一方、地下水や海洋にまで汚染を拡大させていた。

 告発人の一人で、同告訴団の佐藤和良副団長は、告発受理を受けて東京の司法記者クラブで開かれた会見で、怒りをあらわにしながらこう述べた。

「国と東電は、太平洋を放射能の最終処分場だと考えているのではないか」

【強制捜査も視野】

 今回の「告発受理」で着目すべき点は、公害罪法を所管する同県警の生活安全部を中心に、関係部署を横断した「特別捜査チーム」が編成され、事件の捜査に当たることだろう。中でも、特捜チームに「刑事部」が加わっているのがポイントだ。

 特殊事件捜査を担当する「特殊班」を抱える刑事部も捜査に当たるということは、東電幹部らに対する業務上過失致死傷罪容疑の刑事告訴を受理していながら九月九日に不起訴処分とした東京・福島の両地検が最後まで着手することのなかった「現場検証」や「強制捜査」までも、県警本部が視野に入れていることを意味する。県警本部の“やる気”のほどがうかがえる。

 県警本部が告発を受理し、特捜チームまで編成する背景には、検察の「不起訴処分」に対する世間の評判がすこぶる悪いという現実がある。新聞各紙の「社説」でさえ、次のような論調だ。

「誰一人として、未曽有の大事故を招いた責任を問われない。被災地・福島の悲痛な告発は黙殺された。不条理極まりない結論だ」(『琉球新報』九月一一日社説)

「家宅捜索など強制捜査をしなかったのも疑問だ。任意では限界がある。捜査を尽くしたとは言い難い」(『北海道新聞』九月一二日社説)

 そもそも、放射能汚染水垂れ流し事件の捜査にしても、今回の告発を待たずに検察主導でやることもできたはずなのである。しかし検察は、汚染水垂れ流しを放置し、不問に付していた。

【検察審査会での審査に“追い風”】

 かつて環境基本法の第一三条では、放射性物質による大気汚染や水質汚濁、土壌汚染については原子力基本法体系によって規制することとし、環境基本法の範囲外であると定めていた。

 ところが、原子炉等規制法をはじめとする原子力基本法体系には、原子炉等の運転上の過失によって公共の危険を惹起したことを罰する規定が何もない。

 環境法体系に属する公害罪法が、放射性物質による環境汚染には適用されないとなると、他の有毒物による汚染は処罰される一方で、放射性物質による環境汚染だけが刑事的に不処罰という、きわめてバランスを欠いた話になる。

 そこで、福島原発事故後の環境汚染に対処するため、昨年六月の「原子力規制委員会設置法」成立とともに、環境基本法の一三条は削除された。

 つまり、東電の放射能汚染水垂れ流し問題に公害罪法が適用される素地は、十二分なまでに整っていることになる。でなければ、県警本部が今回の告発を受理することもありえなかった。

 同告訴団では一〇月一六日に、検察当局の不起訴処分を不服として、東京検察審査会に審査申し立てをする予定。その直前に刑事告発が受理され、県警が捜査に着手したことは、検察審査会での審査においても相当な“追い風”となりそうだ。

(明石昇二郎・ルポライター、10月18日号)

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